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2023/03/31

【復刻版】Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』⇒《Waltz For Debby / 1961》 Bill Evans Trio

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十数年前に作っていたホームページ“Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』”のブログ版復刻です。
取り上げているのは、ビル・エヴァンス・トリオのアルバム、「ワルツ・フォー・デビー」です。
今回、再度聴き直して一部文言等を追加・修正いたしました。

Bill Evans/p
Scott Lafaro/b
Paul Motian/ds

①My Foolish Heart
②Waltz For Debby
③Detour Ahead
④My Romance
⑤Some Other Time
⑥Milestones

ジャズを聴く人で、このアルバムを知らない人はひとりもいないであろう超有名盤であり、本当の名盤でもあります。

逆にジャズを知らない人が、知ったかぶりをするときにもよく使われるアルバムであり、ジャズを聴いたことのない人が、「これがジャズだ」と言われて、こういうものばかりがジャズだとだまされるアルバムでもあります。

良くできているが、耳に心地よいだけあって、その奥深さに気づかずに終わってしまうことが往々にしてあるのではないか、ということが言いたかったのですが・・・。

それにしても、一曲目からビクター・ヤングのポップ・チューン「マイ・フーリッシュ・ハート」を取り上げたにもかかわらず、リリカルでいて、幻想的な世界にいざなってくれます。
ここから、二曲目の「ワルツ・フォー・デビー」、三曲目の「デトゥー・アヘッド」までは、それこそうっとりしている間に、“あっという間”に過ぎ去ります。
三曲目のちょっと“けだるい午後”な感じの演奏には、身も心もエバンスの音楽に捧げてしまいます。

ライブ会場である、ヴィレッジ・ヴァンガードのお客さんは、ジャズの歴史の中でも最高のひとときを過ごしていたわけです。うらやましい話です。
曲の合間にグラスのぶつかる音が聞こえたりしますが、まるでそれはこの曲の一部でもあるかのように、おあつらえ向きにグッド・タイミングで効果音となっています。まさに奇跡の一日だったのではないでしょうか。

このコンサートの10日後、ベースのスコット・ラファロは自動車事故で亡くなり、最高のパートナーをエバンスは失ってしまうのですが、そのことも余計にこの日のこのライブが特別な一瞬だったのではないか、と思わせるのです。

四曲目の「マイ・ロマンス」で演奏がスインギーになり、こちらも思わず体が動いてしまうような感じになります。きっとお客さんもそんな気分だったのではないでしょうか。ベースとの絡みも絶妙です。

五曲目は、バーンスタイン作曲のミュージカル曲「サム・アザー・タイム」をやはりリリカルにそして何か物語りまでを感じさせる美しい出来です。素晴らしい!

最後は、マイルス・コンボにわずか一年ばかり在籍したことのあるエバンスですが、そのときにとりあげていたマイルスのナンバー「マイルストーンズ」を演奏していますが、これもピアノによるテーマの演奏がスピード感はありますが、やはり幻想的です。
トリオがそれこそ一体となって、この有名な曲をさらにグレード・アップさせたかのような演奏で疾走して行きます。

ジャズの一番純粋なところを、純粋なまま聞くことができる珠玉のアルバムと言えます。


〈追記〉2023/03/31

あらためてCDをオーディオ装置にセットして聞き直してみると、やはり音がいいし、曲はいいし、演奏もいいし、ライブを行っているヴィレッジ・ヴァンガードの雰囲気もよく伝わってきます。
ドラムのポール・モチアンのブラシの音なんかすごい臨場感で身体が痺れるくらい素晴らしい。
スコット・ラファロのベースも存在感が凄く、グイグイとリスナーをこのトリオの世界に連れて行ってくれます。名演中の名演だと、あらためて思いました。

そしてピアノのビル・エヴァンスも名演ですが、もう“神がかって”います。
いつも思うが、「いいもの聞かせてもらった」という感じです。

ずっと以前に職場の後輩が「最近、ジャズを聞き始めたんですが、おすすめのアルバムはありますか?」と聞かれ、このアルバムをすすめるのは“いかにも”って感じがしてためらったのですが、結局「心地よい音楽だけど、それだけじゃない、いいアルバムだよ」とすすめました。

クラッシックのアマチュア・オーケストラに所属していた彼は、聞いたあとに感想をくれました。
「素晴らしいアルバムでした。〇〇さんを見直しました!」・・だって(^_^;)
今まで俺をどう見ていたのかなぁ~と思いつつ、「それはよかった」と応えました。

 

2023/02/16

【復刻版】Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』⇒《Midnight Blue /1963》 Kenny Burrell

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十数年前に作っていたホームページ“Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』”のブログ版復刻です。
取り上げているのは、ケニー・バレルのアルバム、「ミッドナイト・ブルー」です。
今回、再度聴き直して一部文言等を追加・修正いたしました。

Kenny Burrell/g
Stanley Turrentine/ts
Major Holley Jr./b
Bill English/ds
Ray Barretto/conga

①Chittlins Con Carne
②Mule
③Soul Lament
④Midnight Blue
⑤Wavy Gravy
⑥Gee Baby Ain't I Good To You
⑦Saturday Night Blues

コンガで始まる一曲目から、もうソウルフルな展開でキメまくりです。ギターの音色も甘く、渋く、まろやかで、艶やかです。バレルのオリジナル曲ですが、速いフレーズも悠々と弾き、タレンタインのムーディーなテナーに繋いでいます。まさに、見事な展開です。
最後のテーマに戻ってくるところが“おとな”な感じでとてもいい。

二曲目は、ベースのメジャー・ホリー・ジュニアの曲で、ベースの「ズボーン」という間延びしたフレーズにギターが絡んでいきます。ゆっくりと密かに進行していく感じがまたたまりません。
ギターの音色もたっぷり楽しめます。

三曲目は、完全なギターソロで、ギターの息づかいが聞こえてくるような感じで、間近で演奏が展開されているようです。
ささやくような、ため息をつくようなギターフレーズが魅力です。

四曲目は、このアルバムのテーマソングですが、とてもかっこいいギターフレーズが印象的で、コンガがばっちりハマっています。
シンバル・レガートの冷ややかな音もたまりません。
最高の見せ場になっています。

五曲目は、ケニーとスタンリーの絡みが見事で、緊張感いっぱいの出来です。
呼べば応えるような展開から、二人が同じフレーズを弾いたり、“阿吽の呼吸”とでも言えばいいのでしょうか。濃密な曲になっています。
コンガが両者のあいだを“取り持つ”ような形になっているのもカッコいいです。

六曲目は、静かな1930年代のスタンダードです。
バラードのような感じが少しするブルースといった印象です。雰囲気満点の曲ですね。
ワンフレーズ、ワンフレーズをじっくりと味わいながら聞くといった感じの曲で、「オトナになったなぁ」(^^;)なんて思わず感じてしまったのでした。

ラストは、エレクトリックなギターサウンドが前面に出てくる印象です。それにタレンタインがぐぐっと絡んできます。
スインギンなビートが味わえます。
ドラム、コンガのリズム隊はゆっくりと曲を蠢かしているのでした。

 

2023/01/24

【復刻版】Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』⇒《Bags' Groove / 1954》 Miles Davis And The Modern Jazz Giants

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十数年前に作っていたホームページ“Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』”のブログ版復刻です。
取り上げているのは、マイルス・デイビス&モダン・ジャズ・ジャイアンツのアルバム、「バグズ・グルーブ」です。
今回、再度聴き直して一部文言等を追加・修正いたしました。

Miles Davis/tp
Milt Jackson/Vibes
Sonny Rollins/ts
Thelonious Monk/p
Horace Silver/p
Percy Heath/b
Kenny Clarke/ds

①Bags' Groove(take1)
②Bags' Groove(take2)
③Airegin
④Oleo
⑤But Not For Me(take2)
⑥Doxy
⑦But Not For Me(take1)

①と②は、有名なマイルスとジャズ・ジャイアンツとのクリスマス・セッション時のもので、「マイルス&モダン・ジャズ・ジャイアンツ」という、このアルバムの兄弟的なアルバムで、あのモンクが途中で演奏を止めてしまう名?演を聞くことができます。

このアルバムでは、いきなりバグズ・グルーブのテイク・ワンとツーを聞くことができます。
“バグ”というのは、ビブラホンのミルト・ジャクソンのあだ名で、目の下の袋状の“くま”を指していたものらしいです。
ただ、いつもこのアルバムを聞くと、バグズ・グルーブって、他のマイルスの“びっちり”と精緻に作り込まれたアルバムに比べ“ダサい”ようなやぼったさを感じるのですが、いかがでしょうか。
後のマイルスのクールでスマートな演奏とはちょっと異なるものだと思うんですけど。
モンクやその他ジャズ・ジャイアンツに遠慮しているわけではないのでしょうが、イマイチすっきりしないように、私には感じます。

それに当時は、他のミュージシャンのアルバムでもよく見かけますが、同じ曲の「テイク違い」が並んでいるのって・・私にはなんだか“ダレる”ような感じがあります。
「何言ってんだ、両方入っているからこその、このアルバムじゃないか」というご意見も当然あるかとは思いますが、こういうのってロックなどのアルバムではCDが出始めた頃の追加ボーナス・トラック以外あまり無いよなぁ、と思うのです。

とは言え、名演は名演、並のアルバムでないことは確かです。他のマイルス作品の完璧さと比べてしまうから色々言ってしまうわけで、バグズ・グルーブ以外の6月に録った曲も素晴らしいものです。ロリンズの曲を何曲か取り上げていますが、どれも味わい深いものがあります。

どなたかが言っていたのですが、4曲目の「Oleo」でサックスのソニー・ロリンズがソロに入ると“イマイチ”な感じなので、ピアノのホレス・シルバーが「しっかりしろ」みたいなピアノを入れているというので、あらためて私もそこに注意して聞いてみました。

たしかに、ロリンズのソロはモタモタ、ノコノコというか、今ひとつな感じで、私にはそこでホレス・シルバーが「もういいよ、オレが入る」という感じでいったんピアノをちょっと入れているように感じました。
あわててロリンズが“それなり”のソロを吹き直すと、「やればできるじゃん!」とホレス・シルバーがそのあとソロに入る・・という感じに聞こえました(#^.^#)

マイルスの作品は、襟元を正して聞かなければいけないようなものが多い中で、このアルバムについては、割りとリラックスして楽しめるような気がします。
気分をゆったりして、マイルス他のジャズ・ジャイアンツの演奏を楽しむのには持ってこいのアルバムかもしれません。

 

2023/01/04

【復刻版】Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』⇒《Saxophone Colossus / 1956》 Sonny Rollins

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十数年前に作っていたホームページ“Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』”のブログ版復刻です。
取り上げているのは、ソニー・ロリンズのアルバム、「サキソフォン・コロッサス」です。
今回、再度聴き直して一部文言等を追加・修正いたしました。

Sonny Rollins/ts
Tommy Flanagan/p
Doug Watkins/b
Max Roach/ds

①St. Thomas
②You Don't Know What Love Is
③Strode Rode
④Moritat
⑤Blue Seven

初めてこのアルバムを聴いたときのことは忘れません。
こんなに胸躍るような気分でジャズを聴くことができるなんて素晴らしいと素直に思ったことを思い出します。
あっという間にアルバムが終わってしまって、もう一度聴きたい・・と即座に思いました。

俗に“サキコロ”などとジャズ好きの人たちが呼んでいる名盤中の“大名盤”です。
一曲目の「セント・トーマス」を聞いて、嫌いだなどと言う人はまずいないと思います。
ちょっとカリプソのようなマックス・ローチのリズムで弾むように始まるこの曲一曲だけで、大満足してしまうほどのいい曲です。
ロリンズの太く、人間味あふれるサックスは最高です。

二曲目のバラードも朗々と吹ききるロリンズの豊かなサックスはジャズの深みや人間の心の奥まで表現しているように感じます。フラナガンの繊細なピアノもこの曲に深みを与えています。

三曲目の“ストロード・ロード”では、ロリンズが豪快にソロを決めています。ローチとの掛け合いもあって楽しめる曲です。

四曲目は言わずと知れた名曲「マック・ザ・ナイフ(モリタート)」です。
ケニー・ドーハムも同一曲を演奏していますが、どちらも素晴らしい演奏で甲乙つけがたいものがあります。
こちらはロリンズの人気曲でもあり、もう自由に吹きまくり、聞いている私も心を解放して完全に身をゆだねてうっとりと聴いてしまいます。
ローチやワトキンスのソロもいいです。ジャズのいいところばかりが目立つ、うれしい限りの演奏ですね。

ラストはロリンズのオリジナルですが、一転してスリリングな展開です。
4人の緊張感あふれる関係の中での『押さば引け、引かば押せ』というような、かけひきのある演奏です。
この曲でぐっとアルバムがラストで締まったように感じます。

 

2022/11/17

【復刻版】Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』⇒《Undercurrent / 1960》 Kenny Drew

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十数年前に作っていたホームページ“Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』”のブログ版復刻です。
取り上げているのは、ケニー・ドリューのアルバム、「アンダーカレント」です。
今回、再度聴き直して一部文言等を追加・修正いたしました。

Kenny Drew/p
Freddie Hubbard/tp
Hank Mobley/ts
Sam Jones/b
Louis Hayes/ds

①Undercurrent
②Funk-Cosity
③Lion's Den
④The Pot's On
⑤Groovin' The Blues
⑥Ballade

この1960年のアルバムには、新しい“風”を感じさせる勢いと溌剌さがあります。
ブルーノートのレコーディングは、ピアノ奏者のリーダーアルバムについて、トリオ編成でなく、管楽器を含むものが多いように感じますが、それは逆にリーダたるピアノ奏者の作曲・編曲能力が試されることになります。
まさに、その能力を発揮したアルバムと言えると思います。

“勢い”だけでなく、知的でセンスあふれるフレーズも随所でみられ、なかなかの作品に仕上がっています。

さらに、このアルバムの作品6曲は、すべてドリューの作曲からなっています。彼の作曲能力も非凡で、そして清新なものがあります。

このアルバムにダイナミックな心地良さを加えているのが、ハバードのトランペットとルイ・ヘイズのアクセントが効いたドラムです。
この両者の演奏も聴きどころだと思います。

全体に軽快感と、センスあふれる快作になっていると思います。


〈追記〉2022/11/17

このケニー・ドリューのアルバムについてブログでホームページを復刻するにあたり、再度聞き直しました。
上記、当初掲載の記事にあるように軽快感もあるし、とても“カッコいい”作品ばかりです。
そして管楽器が入ってくるタイミングも抜群だし、それぞれのフレーズも心地よいものがありました。
まさに「ジャズを聞いている」って感じがします。
いいアルバムでした。

 

2022/11/08

【復刻版】Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』⇒《Joni Sings / ※1950年代》 Joni James

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十数年前に作っていたホームページ“Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』”のブログ版復刻です。
取り上げているのは、ジョニ・ジェイムスのアルバム、「ジョニ・シングス」です。
今回、再度聴き直して一部文言等を追加・修正いたしました。

Joni James/vo

①My Foolish Heart
②I Don't Stand A Ghost Of A Chance With You
③Stella By Starlight
④A Hundred Years From Today
⑤Song Of Surrender
⑥Everything I Do
⑦If I Were A Bell
⑧My Darling,My Darling
⑨On A Slow Boat To China
⑩I'll Know
⑪Spring Will Be A Little Late This Year
⑫Anywhere I Wander

ジョニ・ジェイムスは、1930年代シカゴ生まれのシンガーです。1950年代に二十歳そこそこの彼女は200万枚以上のセールスを記録するヒットなどを立て続けに飛ばしていたようです。

このアルバムは、ビクター・ヤングとフランク・フレッサーという当時のポピュラー・ミュージックきってのメロディ・メーカーの作品を歌ったものです。いや、実に美しい歌声です。私が生まれる前の、このシンガーに恋してしまうほどの美しく、慎ましやかで、清楚な、そして艶っぽい歌唱です。

 

 

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決して原曲の良さをこわさない、ストレートに歌っているにもかかわらず、個性的で魅力的な、究極の歌い方ではないかと持ち上げてしまいます。

有名な「マイ・フーリッシュ・ハート」や「星影のステラ」「ソング・オブ・サレンダー」などなど、どの名曲も丁寧に、美しく、のびやかに歌い上げています。

1950年代に胸をときめかせて聴いていた野郎ども・・いや、殿方はいまや70代の老人となっているわけですが(※ホームページ作成時)、今現在の私でも胸ときめかせてしまうのです。

 

 

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何年か前にラジオ日本の番組「オトナのJazz Time」で、このジョニ・ジェイムスの歌が掛かり、ジョニのエピソードを当時の司会、島崎保彦さん(故人)が話していたのを思い出します。

ジョニと結婚した男性は、事業家でお金持ちだったらしく、旅先などでもレコード店に寄り、ジョニのレコードがあったら全部買ってしまったんだそうです。
店はジョニのレコードが品不足になり、ジョニの自宅には同じレコードがいっぱい!!

ようするに、だんなさんは奥さんの「ジョニの美しい歌声をほかの男に聞かせてなるものか」と嫉妬して次から次へとお店で見つけた奥さんのレコードを買い占めていたんだそう・・(^-^;・・ものすごい“やきもち焼き”だったんでしょうね。

それほどジョニ・ジェイムスは美人で歌声も美しく、素敵な人だったのでしょう。

今回このブログでホームページを復刻するにあたり聞き直してみたのですが、どこまでも“澄んだ”歌声に私もうっとりいたしました。
ジャズのボーカルというと、どこか“ひとくせ”ある歌い方をするのが魅力だったりするのですが、それとは対極にあるものです。

たまにはこういう“裏の無い”純粋で真っすぐな曲と歌声というものも良いものです。

 

2022/10/28

【復刻版】Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』⇒《Off To The Races / 1958》 Donald Byrd

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十数年前に作っていたホームページ“Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』”のブログ版復刻です。
取り上げているのは、ドナルド・バードのアルバム、「オフ・トゥ・ザ・レイシズ」です。
今回、再度聴き直して一部文言等を追加・修正いたしました。


Donald Byrd/tp
Jackie Mclean/as
Pepper Adams/bs
Wynton Kelly/p
Sam Jones/b
Art Taylor/ds

①Love Come Back To Me
②When Your Lover Has Gone
③Sudwest Funk
④Paul's Pal
⑤Off To The Races
⑥Down Tempo

一曲目から軽快に飛ばします。快速状態で飛ばすドナルド・パードに続いて、バリトン・サックスのペッパー・アダムスが“バリバリ”と割り込んで、もうジャケット写真のクルマにでも乗っているかのように爽快感満点です。
テーマのメロディーもいいっ!

いつも思うのですが、この1950年代後半くらいのレコーディングされた音は素晴らしい。プレイヤーの勢いがこちらまで伝わってきます。
アルト・サックスのジャッキー・マクリーンも余裕の吹きっぷりです。

二曲目は打って変わってスローな曲調。
バードはこうしたスロー・ナンバーも哀調豊かに奏でるのです。好きになっちゃうよなぁ。
トランペットの音色も素晴らしい。

次はウィントン・ケリーのピアノから入り、印象的なテーマが始まるカッコイイ曲。
こうして高らかに鳴るトランペットがバードのいいところです。マイルスのくぐもったような演奏とは好対照ですが、ジャズの魅力はさまざまですからね。
サム・ジョーンズのベースもこの曲にぴったりなフレーズを弾き、曲の展開をぐいぐいと引っ張っている感じがします。

四曲目はソニー・ロリンズの曲。つま先立ちで入ってくるような不思議な入り方のこの曲、テーマに移るときにグッとくるメロディー展開が聞きものです。その後のジャッキーのアルトが大人のジャズを浪々と聞かせてくれます。
この曲もいいです。

五曲目はアルバムタイトルと同名曲。
参加メンバー全員が代わる代わる“いいところ”を聞かせてくれるサービス曲的な感じ。
ウィントン・ケリーのファンである私にはウィントンの冷静だけど“グイグイ”進んでくる感じが好きなのです。
アート・テイラーのドラムで最後は締めてくれます。

ラストは、ダウン・テンポという曲ですが、テンポは快調(^_^;)
トランペットとサックスが二重に奏でるテーマが小粋な小曲です。
ベースのサム・ジョーンズのソロも有り、なんかジャズ喫茶にいるような雰囲気。
バリトン・サックスの艶やかさもこの曲をいっそう魅力的に仕立てています。
ラストまでいい曲ばっかり!(^_^)

[当時のホームページ更新日:2011_06_11  今回追記日:2022_10_28]

 

2022/10/07

【復刻版】Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』⇒《New Soil / 1959》 Jackie Mclean

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十数年前に作っていたホームページ“Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』”のブログ版復刻です。
取り上げているのは、ジャッキー・マクリーンのアルバム、「ニュー・ソイル」です。
今回、再度聴き直して一部文言等を追加・修正いたしました。


Jackie Mclean/as
Donald Byrd/tp
Walter Davis Jr./p
Paul Chambers/b
Pete La Roca/ds

①Hip Strut
②Minor Apprehension
③Greasy
④Sweet Cakes
⑤Davis Cup

いきなり、一曲目から緊張感満点で始まります。
ジャッキーのアルトの音色に私はいつもしびれます。

サックス奏者の中村誠一さんが割と最近ラジオでおっしゃっていたのですが、私も感じていたこと。ジャッキー・マクリーンのアルト・サックスの音は他のアルト・サックス奏者とはまったく異なるものです。
似たような音色で演奏するミュージシャンには出会ったことがありません。
この独特な音色がジャッキーの魅力のひとつでもあると思います。

時間をかけてリハーサルをさせてくれたブルーノートの扱いにたいへん満足していたジャッキーは心ゆくまで自分の音楽を追究し、この一曲目からかっこよさ爆発です。
ドナルド・バードのトランペットも次から次へとかっこいいフレーズを紡ぎ出します。
ピート・ラ・ロカのドラムも実にクール。リズムを刻むシンバルの音もピーンと張り詰めたような音で身が引き締まります。

二曲目も最初から飛ばしまくります。
トランペットとアルト・サックスで始まるこの曲は、いきなりガツンとくるようなテーマで、聞いているこちらも目を覚まして( ̄O ̄;)身を乗り出すように聞く事になります。
大人のジャズ・タイムです!二人の息もぴったりです。
Pete La Roca のリムショット叩きまくりの不思議なドラム・ソロも光ります。ちょっと和太鼓のソロみたいな雰囲気もある。

三・四・五曲目とピアノに起用した Walter Davis Jr. の曲が続きます。
R&Bとモダンジャズがミックスされたような Greasy,ジャッキーは作曲家としてのウォルターDavis Jr.をかっていたようです。
しかも人間としても気に入っていたようで、感じがよくてユーモラスな人間と評しているようです。そして、その人柄のような曲だとも発言しています。

四曲目はこのアルバムで私が一番好きな曲 Sweet Cakes ,ジャッキーとドナルド・バードの印象的な導入部と、とてもいい音で録音されているライド・シンバルにのって吹きまくるジャッキーのアルトは最高です。

最後の五曲目は全員が一体となってラストに突っ走る感じです。
一流どころが集まったこのアルバム、さすがの演奏です。文句の付けようがない疾走感あるプレイに気持ち良くなりました。

このアルバムは私の大のお気に入りで、ドライブにはよくこのCDを持って出かけます。(※ホームページ作成時はCDを持ち出しましたが、今は iPhone に入れてBluetoothで聞いています。時は流れた)
ジャッキーの音を聞いているだけで幸せになれる一枚です。

 

2022/09/25

【復刻版】Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』⇒《Us Three / 1960》 Horace Parlan

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十数年前に作っていたホームページ“Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』”のブログ版復刻です。
取り上げているのは、ホレス・パーランのアルバム、「アス・スリー」です。
今回、再度聴き直して一部文言等を追加・修正いたしました。


Horace Parlan/p
George Tucker/b
Al Harewood/ds

①Us Three
②I Want To Be Loved
③Come Rain Or Come Shine
④Wadin'
⑤The Lady Is A Tramp
⑥Walkin'
⑦Return Engagement

幼い頃に小児麻痺を患ったせいで、右手の薬指と小指が全く動かなくなってしまったホレス・パーランの有名な作品です。彼のプレイはその事実を知る前から私の心をとらえて離しませんでした。同じフレーズが延々と続き、どこがそのループの始めかわからなくなる、幼い頃一人でくるくる回って目が回ったような感覚が呼び覚まされました。

一曲目のドラム(アル・ヘアウッド)のブラシから息をもつかせぬ展開で、ベース(ジョージ・タッカー)のかっこよすぎる絡みが入って来て、パーランのピアノ独特の“くるくる”もいきなり爆発します。
この曲は、パーランのオリジナルなんですね、なのでパーランの世界がこの一曲目からぐいぐいと展開されていきます。

二曲目はしっとりとした味わいのあるピアノです。訥々としたパーランのつぶやきのような曲です。
パーランは、前曲のようなぐいぐい走るような曲もいいのですが、叙情的な曲もとてもよいのです。
うったえかけ、ささやきかけてくるのです。

三曲目はスタンダード曲ですが、バラードとしてのメロディを大切にしつつ、ちょっと黒っぽい、しかも土の香りがするようなリラックスしたプレイを聞かせてくれます。
最後まで続く三人の渋いプレーがとても味わい深い。

四曲目はパーランのオリジナル曲。ベースで始まり、シンバルが入り、ピアノがあたりをうかがうように侵入してきます。いやはやかっこいいこと。
このブルースにパーラン自身がどんどんのめり込んでいきます。
その一挙手一投足に神経を張り巡らすように聴くとこたえられない味わいがあります。
この曲でも途中パーランの“くるくる”目がまわるようなプレイを聞くことができます。

五曲目はパーランが空白の生かし方をいろいろ試せると言っていた曲で、たしかに簡潔なメロディで空間を埋めていくような感じです。
ベースの明快で、豊かなサウンドも聴き所です。

六曲目もスタンダード曲です。パーランはこの曲を何百回も弾いているらしく、一番うまくできると自信を持っているようです。
それ故、堂々としたプレイで、次第にテンションも上がっていきます。曲の中に入り込み、突き詰めていく感じがあります。パーランの“つっかかった”ようなフレーズが独特。
ヘアウッドの乾いたドラムの“粋な”ソロ・プレイも聞けます。

ラストはブルーノートのアルフレッド・ライオンと2枚のトリオ・アルバムを作る約束をしたことに因んだタイトルです。
テーマのメロディが魅力的ですが、インプロビゼイションに持ってこいの曲調で、パーランのオリジナル、思う存分自分のプレイを展開します。
パワー感も伝わってくるなかなか“力”のある曲です。

 

2022/09/14

【復刻版】Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』⇒《Full House / 1962》 Wes Montgomery

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十数年前に作っていたホームページ“Modern Jazz喫茶『 頑 固 堂 』”のブログ版復刻です。
取り上げているのは、ウエス・モンゴメリーのアルバム、「フル・ハウス 」です。
今回、再度聴き直して一部文言等を追加・修正いたしました。

Wes Montgomery/g
Johnny Griffin/ts
Wynton Kelly/p
Paul Chambers/b
Jimmy Cobb/ds

①Full House
②I've Grown Accustomed To Her Face
③Blue 'N' Boogie
④Cariba
⑤Come Rain Or Come Shine(take2)
⑥S.O.S.(take3)
⑦Come Rain Or Come Shine(take1)※
⑧S.O.S(take2)※
⑨Born To Be Blue※

※Additional tracks not on original LP

このアルバムはライブ録音。
収録されたライブでは7曲が演奏されたとのこと。
⑦~⑨の3テイクは、オリジナルのLPには入っていないものです。
⑦と⑧はオリジナルLPに入っている曲の別テイクなのですが、⑨の「Born To Be Blue」は、当時6曲でLPのサイズを満たすことができたので、カットされたようです。

一曲目の「Full House」から“ノリ”の良い曲です。オクターブ奏法と呼ばれる“ウエス”のギターが気持ちよくリズムに乗っかっていきます。
クルマの中などでよく聞いていたのですが、あらためて自室の再生装置で聞くと、とても躍動感があります。
ウエスのギターの音質も手に取るように、そこにいるかのようによくわかります。ジミー・コブのリズムを刻むシンバルの音もライブ会場にいるかのように生き生きと聞こえます。いきなりいいライブ盤なのだ、という予感!

以前、「ジャズ喫茶と言えば“ベイシー”」と言われる、全国ジャズ・ファンが俗に言う『ベイシー詣で』をする岩手県一関市のジャズ聖地に行ったことがありますが・・・。
朝から開店を待ち、満を持して入って行ったそこで、最初にかかったのがこのアルバムでした。

気合い入りまくりで席に着いたのがマスターに通じたのか、かけてくれたこのアルバムの音には驚愕しました。
自宅で聞く音とは全く次元の違うアナログ・サウンドが私に「ほらほら、坊や、これが“ほんまもん”の音だぜ」とでも言うように私に正面切って挑んできたのです。

ウエスのギター・アンプの“箱”が共鳴している「ムーン」という音まで聞こえてきたのです。自分の再生装置では、全く一度も耳にしなかった音でした。
ただ、ただ、驚くばかり。音だけでノックアウトされました。
楽曲の良さや、演奏の良し悪し以前にサウンドでぶちのめされました。ギターのサウンドがこんな音で録音されているのだな、というのがわかって、もう一度家に帰って聞くと、あらためて楽曲や、演奏の良さがさらにわかってきたのでした。音なんかどうでもいい、曲が良ければというのは、ある一面では正解かもしれませんが、良い音で聞いたことによって、その曲や演奏の理解度はさらに深まるものだと実感しました。

二曲目は、「I've Grown Accustomed To Her Face」。静かに始まります。
ミュージカル「マイ。フェア・レディ」の挿入歌だそうです。
ほとんどがウエスのギターで演奏されていて、単音で弾かれる優しい曲調と美しさがとても良い。

三曲目は、「Blue 'N' Boogie」。
ウエスのギターもテンポよく、ライブを盛り上げます。いわゆる“オクターブ奏法”の技も見せてくれます。
テナーのジョニー・グリフィンもけっこう強烈に吹きまくります。
ドラムもピアノも全員で盛り上げ、お客さんも大喜び(*゚▽゚)ノ

四曲目は、「Cariba」。
これもウエスのギターがかっこいいフレーズを決めて素晴らしい曲です。ウエスのオリジナル曲です。
お客さんの堪能している様子が伝わってきます。
ピアノのウィントン・ケリーもラテン調な曲に合わせたソロを聞かせ、曲を引っ張ります。
それにつられてグリフィンのテナーも実に軽快に加わってきます。
そして、ウエスがまたオクターブ奏法のギターでシメる!いい曲です。
ラスト部が近づいてくると、お客さんがワァ~っと拍手します。

五曲目は、「Come Rain Or Come Shine(take2)」。
これはミュージカル「セント・ルイス・ウーマン」のために書かれた曲とのことですが、ジャズではすっかりスタンダードとなっている曲です。
けっこうオーソドックスな演奏が展開されます。
ウエスは、さまざまな奏法でギターを弾き、ジャズ・ギターの魅力横溢といった感じ。

六曲目は、「S.O.S.(take3)」。
テーマが印象的な曲で、ウエスのオリジナルらしくギターが冴えます。
グリフィンもいきなりかっこよく吹きまくり、アップテンポなこの曲が勢いを増します。

七曲目は、「Come Rain Or Come Shine(take1)」。五曲目に入っていた同曲の別テイクです。
五曲目に入っていたテイクよりもテンポは遅めで、演奏自体もやや大人しい感じがします。
ちょっと“手探り”しながらの演奏という雰囲気がただよっています。

八曲目は、「S.O.S(take2)」。これも六曲目に入っていた同曲の別テイクです。
こちらは、六曲目に入っていたテイクよりもややテンポが早いか・・。
それにそれぞれの楽器のインパクトがいまいち“軽い”感じがします。オリジナルLPテイクに入っていた方がやはりいい!

九曲目は、「Born To Be Blue」。オリジナルのLPではオミットされましたが、たぶんクインテット全員の演奏ではなかったからでしょう。
ライブの中で聞いたら、やや“箸休め”的な曲に感じると思います。
ちょっとゆったりしてギターの“音色”に酔いしれる・・そんな感じの曲です。

で、このアルバムは、どっぷりとジャズの“演奏”を、身も心も音の洪水の中にゆだねて堪能するものであると言えます。できれば大音量で聞くのが望ましいでしょう。
ジョニー・グリフィンのサックスもいいグルーブしてますよ。そして、ウィントン・ケリーの粋なピアノがジャズ魂をゆさぶってくれます。

 

2023年4月
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