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2023/04/01

「いまも、君を想う/川本三郎」を読みました。

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『いまも、君を想う/川本三郎著(新潮文庫)』という本を読みました。

文学、映画、旅などの評論、エッセイ、翻訳の執筆活動をされている川本三郎さんの奥様、服飾評論をされていた川本恵子さんが亡くなり、「いまも君を想う」というタイトルどおり、奥さんの恵子さんとの馴れ初めから結婚生活の想い出、そして亡くなる間際の出来事、妻への思いなどを綴った本でした。

著者の川本三郎さんは、ほんとうに奥さんが大好きで愛していたのだな、というのがどの頁を読んでみてもわかりました。

恵子さんは夫の川本三郎さんがまだ二十代なのに、ある事件をきっかけに勤めていた新聞社を辞めることになっても、自分がいるから大丈夫、あせらずに今後の方向を探しましょう・・というような感じで支え続け、その後も様々なことについてフォローもすれば背中も叩き、さらに健康にも注意を払い、たくわえができれば、二人の想い出をつくりに旅に出たり、ふたりの数々のエピソードは読んでいて心あたたまるものでした。

それぞれのエピソードは克明に記憶されていて、そのときの奥さんの表情や、仕草、そしてたぶんこういうことを考えてくれて、こんなことを話してくれたのだろう、ということがたくさん書かれていました。
それはもう、驚くばかりの鮮明な表現で・・。

後半になると、奥さんの癌が見つかり、その後のお二人の様子がこれも克明に書かれているのですが、恵子さんが気丈に振舞えば振舞うほど、涙なしには読めないということになってしまいました。

でも、読後感はとても爽やかでした。
夫、三郎さんの「ああすればよかった」「自分のとった行動はあれでよかったのか」という気持ちも書かれていましたが、これだけ奥さんのことを考え、思い、最後の日までのことを書ききったという事実が「爽やか」な印象を残すことになったのだと思います。

心に残る素敵な本でした。

 

2023/03/29

佐野洋子さんの「神も仏もありませぬ」を読みました。

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『神も仏もありませぬ/佐野洋子著(筑摩書房)』を読みました。
この本は2003年に刊行されていて、帯には「そして、私は不機嫌なまま六十五歳になった」とあります。
1938年生まれの佐野さんは2010年に亡くなられています。

この本を書かれている時点では、佐野さんは北軽井沢に住まわれていて、冬になると村には佐野さん一人しか生活していなかったと書かれています。
他の住人たちは別荘として住まっていたのでしょう。

佐野さんの文にはまったく気取ったところなどなく、日々の生活、そして佐野さんのようにごくふつうに自然の中で暮らしている人達との遠慮のないお付き合いの様子などが書かれていました。

家の中にブンブン入ってくるスズメバチをそうとは知らずにハエたたきで叩き落としているうちはいいのですが、どうやら天井裏に巣がつくられたらしく、やがて刺されてしまい、でも無医村で、あちこちに助けを求める話や(^-^; 私も行ったことがある「尻焼温泉(大きな川全体が温泉になっている)」目指して出掛け、何を血迷ったか、途中の崖から温泉の川に降りて行き、怪我だらけになって温泉に入る話など、ほとんどの話が豪快かつ“ハチャメチャ”な生活の様子として描かれていました。

読んでいるこっちは、笑いながら読んだり、このひと大丈夫?と心配したり、周りの人達はなんだかんだでいい人ばかりだな、などと感心しつつ読み進みました。

天然の美味しい蜂蜜を食べたり、朝鮮人参農家からなんとか人参を手に入れ、参鶏湯を作ったり、佐野さんの生活を見ているだけで楽しい本でした。
ふだんの服装や化粧などにもまったく頓着しない佐野さんの様子も素敵でした。

ブックオフでわずか200円で手に入れた本ですが、定価の1300円分以上に楽しめた本でした。

 

2023/03/28

春風亭一之輔さんの「人生のBGMはラジオがちょうどいい」を読みました。

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『人生のBGMはラジオがちょうどいい/春風亭一之輔著(双葉社)』を読みました。
2021年に刊行された本で、気になっていたのですが、ブックオフで見つけました。200円は安い。

この本は、要するに中学生の頃から“ラジオっ子”だった一之輔さんが、家で聞いていた時の経験や、友達関係の中でのラジオの存在などを語っているもので、ラジオファンというものがいるならば、その人達は私を含め、かなりの驚きをもって読むことになると思われる本です。

一之輔さんは、若者向けの番組もおじちゃん、おばちゃん向けの番組も、お年寄り向けの番組も実によく聞いていたことがわかります。
とにかく聞きたい番組ばかりの一之輔さんはカセットに録音してでも気になる番組を網羅して聞き倒しています。

やがて一之輔さんはここに書かれているよく聞いていた番組に自分が出ることになります。
そして中高生時代に番組をやっていた人達にも実際に会うことになるのですが、私もラジオ好きな者のひとりなので、そのときの気持ちってどんなんだろうと思いました。うれしいだろうな・・感慨もひとしおだろうな・・と、思わず感情移入してしまいました。

私自身のラジオ体験で強烈だったのは、TBSの番組で、学校から帰ってきてラジオのスイッチを入れると、ほとんど新人だった久米宏さんと平野レミさんがスタジオ外に飛び出してやっていたものがありました。

ハチャメチャというか、もうルールが無いような奇抜なコーナーを二人が受け持っていて、爆発、炸裂するような勢いのあるものでした。

やがて、テレビの「ぴったしカンカン」で初めて久米さんの姿を見たときには、「こんな感じの人だったんだ」とびっくりしたことを思い出します。

一之輔さんは、現在ニッポン放送で「あなたとハッピー」という帯番組の金曜日を担当していますが、実に“緩い”感じでやっていて、しかも一之輔さんがかつて楽しみに聞いていた加藤茶さんの同時間帯の番組でアシスタントをしていた増山さやかアナウンサーと二人でやっています。
一之輔さん、どんな気持ちでやっているんだろう。

ラジオは明らかにテレビとちがって聞いている人は自分に語りかけてくれていると感じる媒体です。
そしてしゃべっている方も、漫然と全国的平均リスナーに向けてしゃべっているわけではなく、特定の人に語りかけているような気がします。

そんな特別な存在感のラジオというものと自分の関係についてじっくりと一之輔さんが書いた本、面白かったです。

 

2023/03/24

「笑って、泣いて、考えて。 -永六輔の尽きない話-」を読みました。

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『笑って、泣いて、考えて。 -永六輔の尽きない話-/永六輔 さだまさし・聴講生(小学館)』という本を読みました。

2016年刊行の本で、これもブックオフで見つけました。
簡単に言うと、永六輔さんの記憶を辿ってもらってのテレビ草創期の貴重な話や、あの人この人誰もが知っているほとんど歴史上の人と言ってもいい人と永さんの関わり(驚くことばかり)、また永さんが見出した今となっては大スターや有名人などの発掘秘話的なものなど、永さんが病の中にあって、それを、さだまさしさんがどんどん聞いていくという本です。

ある意味、もう時間がない、時間が足らない、というような時期で、さださんも永さんの我儘なところなどにも完全に言うことを聞いて、長時間になろうが話が飛ぼうが、聞き倒しています。
それがこの本に形となって現れているというわけです。

でも、聴講半ばにして永さんは亡くなられてしまいました。

この本を読んでいて、永さんがラジオ番組で言っていたことと、ここで語られていたことがかなり食い違っていることも多々ありました。
どちらが本当のことかはもうわかりませんが、永さんは発生した事実はそのままに、その理由や登場人物も大きく変えて話されています。

事実が残ったからそれでいいのかもしれませんが、謎は残るばかりです。

永さんのすごいところは、自分が興味を持ったことや、人、いろいろな土地などにはすぐに動いて、出掛け、接触を図り、いいと思ったものはどんどんラジオその他のメディアを使って広めていくところです。

人との付き合い方もそんな感じで、どんどんその人に迫っていきます。
そして、一定の結果が出ると、スッと引いてしまいます。
まるで“飽きた”かのような素振りを見せるし、ほんとうに興味が無くなったように感じさえもする。

私がよく知っているところでは、あのマラソン解説の増田明美さん。
オリンピックの結果が散々で、帰国したときは“非国民”的な扱いを受け、失意のどん底だった増田さんを「しゃべり」が“いける”ということに活路を見出してあげて、ラジオ番組にどんどん使っていたのを思い出します。
今や、増田さんの「しゃべり」は誰にも真似できない世界を構築しています。
増田さんご自身もことあるごとに永さんへの感謝の気持ちをお話されています。

今回、聞き手となっている「さだまさし」さんも、永さんが早くから関わっていて、さださんは師匠と弟子的な関係でこの本をまとめています。

この本は、聴講半ばにして永さんの“尽きない話”は終わってしまいますが、私もまったく知らなかった敗戦直後の話などがたくさん語られていて、驚いたし、勉強になることもふんだんにありました。

続きを読みたかった・・。

 

2023/03/22

糸井重里さんへのインタビューを中心にした「すいません、ほぼ日の経営。」を読みました。

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『すいません、ほぼ日の経営。/川島蓉子・聞き手 糸井重里・語り手 (日経BP社)』を読みました。ブックオフで見つけた5年ほど前の本です。

この本は、日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つジャーナリスト、川島蓉子さんが、社名を「有限会社東京糸井重里事務所」から「ほぼ日刊イトイ新聞」に変更し、2002年に株式会社化、さらに2017年には東京証券取引所ジャスダックに会社を上場した糸井重里さんにインタビューする形でまとめられたものです。

私が存じ上げているのは、糸井さんがインターネットが一般的になり始めた頃に、「ほぼ日刊イトイ新聞」というサイトを立ち上げ、“ほぼ日刊”どころか毎日書き始めた頃からの「ほぼ日」の活動です。

そして、一番印象に残っているのが「ほぼ日手帳」というヒット作を生み出したこと。
今や、手帳というと、「ほぼ日手帳」というひとつのジャンルみたいなものにまでなっていて、たぶん売り上げもかなりのものだろうな、と想像できるまでのところです。

会社名を「ほぼ日」にしたところまでは、そんなこともあるだろうと思いましたが、まさか株式会社化して東証上場なんて「ほぼ日」には“似合わない”と思ったのですが、この本の中でも多くの人がそう思っていたことが糸井さんへのインタビューの中でわかりました。

でも、そんな組織化をしてもなお、「誰かがこんなものが欲しいな」と思うものを見出して提供するような姿勢、さらに強くはあるがやさしい姿勢、企画書もなく、「こんなのどうでしょう」「いいね、じゃやってみようか」みたいな動き方、人事はピラミッド型でなく、人体模型図型?!、予算も組まない、部署ごとに部屋があるわけでもなく、席替えを度々して経理関係の隣に実働部隊がいたり、総務関係がいたりで、互いの仕事がどういうものかわかっている、さらに専門分野で人が固まるわけではなく、“お手伝い”として部署を飛び越えて仕事をする、・・・などなど、およそ会社組織という観念からは逸脱した形態をしている「ほぼ日」という会社のあり方に驚くのでした。

読んでいて、一般の組織が真似してもいいんじゃないかと思うこともありました。
創業者がトップの会社などによくある“トップダウン型”の命令系統が会社そのものを硬直化させている状況には、もっと“緩くて”下からもアイデアが遠慮なく飛び出すような形へのヒントが「ほぼ日」にはありました。

目標値達成のためには、無理にも無理を重ね、「一日100件、営業回って来い」的な話もよく聞きますが、それって効果があるのかな、と糸井さんも語っていました。

また人事評価のために、困難というか、果たして実際はそれがいいものなのか、会社のためになるのか、という難易度の高い目標を敢えて掲げて、部下にも無理強いしてそれを達成させる人(こういう人が“できる人”と勘違いされ、皆が結局言うことを聞くようになる)を私も自分がいた組織で何人も見ましたが、最終的には人を疲弊させ、組織も硬直化し、何より、達成した新たなシステムが使いずらく、仕事の足枷になっているという事態を生み出していました。

この本を読んでいると、近未来の日本の会社のあり方のヒントになるようなものが少しエッセンスのようにふりまかれていたように感じました。
経営者や、管理職の人が読んだらいいなぁと思いましたが、絶対に読まないだろうな、とも思いました。
以上です。

 

2023/03/17

「成毛眞のスティーブ・ジョブズ超解釈」を読みました。

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『成毛眞のスティーブ・ジョブズ超解釈/成毛眞著(KKベストセラーズ)』という本を読みました。
10年ほど前に刊行されたものです。

著者、成毛眞氏は、株式会社アスキーからマイクロソフトに入り、代表取締役社長に、その後投資コンサルティング会社を設立しています。

この本が出た頃は、ウォルター・アイザックソンの「スティーブ・ジョブズ」の一・二巻がもの凄い勢いで売れ、さらにジョブズ関連の本が目白押し状態で出版され、どれもこれも売れていた、あの頃です。

著者はマイクロソフトの人だったわけで、前半はジョブズに対し、というか上記ジョブズの本を熱心に読んでいるやつに対し、“見込みのないやつ”扱いをしています。

ジョブズのようなクリエイティブな人間になろうとして、そんな本を読んでいる時点でクリエイティブな人間ではないと、一刀両断です。

それに、ジョブズがWindowsに対してMacの“パクリ”だなんて言っていたが、そもそもMacがゼロックスのパロアルト研究所で研究開発されていたアラン・ケイのGUIの“パクリ”なんだと、鼻で笑っています。

Mac好きな人は上記のことについては、すでに知っていることですが、でも具体的に一般ユーザーが使えるようにしたのはジョブズだし、Windowsの“そっくり度”は上下逆さまにしただけで、Macのような“ウキウキ感”“ワクワク感”のないものだったように私は感じたのですが・・。

ま、それはそれとして、iPhoneにしても「現在あるものをただうまく組み合わせただけ」で、発明と言えるようなものではないとも言っています。
でもね、iPhone以降、あるいはiTunes以降の世界は劇的に変わったんじゃないかと思うし、そんなに“ムキ”になってジョブズは実際にはたいしたことない変人だと強調しなくてもいいんじゃないかと思いました。

ようするに著者はスティーブ・ジョブズのようなクリエイティブと言われるような人を目指している段階であんたはダメ・・っていうのが一番言いたいことなのかもしれません。

冒頭の二巻になっていた「スティーブ・ジョブズ」などの本を読んでいる人(私も含め)は、ビジネス本や、啓発本として仕事の参考に読んでいるというよりは、“おとぎ話”として読んでいたんじゃないかと思います。・・たぶん。

後半は、けっこう社会で生きていく上でたいせつなことがたくさん書かれていて参考になったし、興味深く読みました。
前半も面白かったんですよ、ジョブズの見方があらためて新鮮な感じだったし。

 

2023/03/15

太田和彦さんの「書を置いて、街へ出よう」を読みました。

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『書を置いて、街へ出よう/太田和彦著(晶文社)』を読みました。
私にしては珍しく新刊本です(*^^*)

新聞の新刊本紹介に載っていて、読みたくなり、買っちゃいました。

太田さんといえば、“居酒屋”ですが、この本はお酒や酒場の本ではなく、喜寿を迎える太田さんがそんな喜寿間近の人生の時期をどう過ごしたらいいだろうと書かれたものでした。

ご近所歩きから、美術館へ出掛ける、映画を見に行く、芝居を見に行く、コンサートを聞きに行く、銀座をそぞろ歩き、そしてランチ、浪曲を聞きに行ったり、名建築と呼ばれる建物を見に行き、さらに庭園にも行ってみる。
骨董市をめぐり、手頃な値段の蕎麦猪口などを買い求める、レコードを聞く、落語を聞きに寄席へ、アナログ・レコードでジャズなどを聞き、銀座で“おでん三昧”をしたり・・太田さんの毎日は、多様な趣味やご自身が興味を持ったもので埋まっていきます。

何か身に着けようということではなく、色々なところに出掛け、触れ、経験し、それが喜びになっているのだ、ということなのだと思います。

この本のタイトルは「“書を置いて”、街へ出よう」ですが、私も自分の時間を色々なことに興味を持って過ごし、“書”は置かず(^_^.)日々ガンガン読み、映画だ、美術館だ、芝居だなどと色々とやっていたのに“コロナ禍”がやって来て、だいぶやろうとしていたことが出来なくなっておりました。

この本の“生き生き”とした太田さんの様子を読み、再度ギアをシフトして、また色々なことにどんどん飛び込んで行きたいと思いました。

渓流沿いなども歩きに行きたいなぁ。
少し気持ちが上向きになってまいりました(#^.^#)

 

2023/03/09

「人智学・心智学・霊智学/ルドルフ・シュタイナー」を読んだが・・・

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『人智学・心智学・霊智学/ルドルフ・シュタイナー 高橋巖・訳(ちくま学芸文庫)』という本をなんとか手に入れ読んでみました。

なぜ“なんとか手に入れた”のかというと、私、数か月前から首を痛めてなかなか治らず、評判を聞いて家から近いところにある鍼灸院に行って治療を受けたのです。
そのときに、西洋医学だけでは解決しない病や痛みがあるという話になり、先生が今勉強しようとしているものがあるという話を聞き、先生が読み始めたという表題のルドルフ・シュタイナーの本を知ったというわけです。

俄然興味がわいて、手に入れたのです。そして早速読み始めました。
・・・ましたが・・・難しくて手に負えないというか、歯が立たないというか、チンプンカンプンというか、70ページ前後まで読んでギブアップいたしました。

1909年から1911年にかけてベルリンで行われた講義をまとめたものなのですが、如何せん基礎的な知識がないと、もう何を言っているのか皆目わからないのです。難し過ぎる。

なんとなくわかったことは、人というもの、人間という生命体というものは、山頂のような高いところから俯瞰するような神的な位置から見る観点と、もう少し山の中腹程度の高さから見る視点、さらに地面に降りてきてその人と同じ立場からの視線も必要なのだ、というようなこと。
さらに人間の感覚としていろいろなものを感じるのには通常の五感のようなものだけでは全てがわからないし、別の感覚(スピリチュアルなものか)が必要なのだということ。

・・上記のようなことが書かれているのであろう、ということがわかったところまでで力尽きました。
あまりにも講義調、論文調の文は、自分の心の中で噛んで砕いてやさしい言葉に翻訳しつつ読み進んでみてもすぐに限界の壁に突き当り、途中で断念したのでした。

少し“寝かせて”から再度チャレンジしてみたいと思いつつ、今ここに感想を書いているのでした。

 

2023/03/08

角田光代さんの「さがしもの」を読んだ。

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『さがしもの/角田光代著(新潮文庫)』を読みました。
またまたブックオフにて100円で購入。

『この本が、世界に存在することに』として刊行されたものの文庫化に際し『さがしもの』と改題されています。

≪本≫がテーマになって話が展開される短編集となっていました。

その本を持っていると、なぜか次々と不幸が起きてしまう・・と思った本を主人公の女性が自分の彼を奪った友人である女性に「彼に渡して」と託してしまい、その後どうなったのか、という話や、古本屋に売った本と巡り巡って外国の旅先の古本屋で再び出会う話、その他不思議な話や、本自体に関することや、よく通った本屋についての想い出に伴う心打つ話、などが編まれていました。

特に男女関係に「本」が介在してくる話というのも、その視点が面白く、またそれに連れてちょっと哀しく、数奇な運命をたどる男女のエピソードが私の心に沁みてきました。

世の中には本というものを、ほとんどというか、まったく読まない人がいます。
それはそれで幸せなことだと思うけど、私が思うには“自分と向き合う”チャンスを数多く失っているんじゃないか、とか、様々な人生経験や、見知らぬ世界などに連れて行ってくれる本というものを知らずにいるのももったいない、などと思ってしまいます・・老婆心ですが。

本を読んで得ることを自らの体験だけで得ることは、ほぼ不可能です。
本によって色々な疑似体験をしておくことで、絶望したり、自暴自棄になったりして犯罪に及んでしまう・・ということも減少するんじゃないか、などとも思います。
ある意味、犯罪防止策として「本を読む」ということを推し進めても無駄なことはないと、私は思うが世間は思わないんですよね、仕方ないけど。

話が大きくそれましたが、でもこの本を読むと角田さんの本に対する思いがとてもよく伝わってきます。

本が好きな人にはジ~ンと心打つ短編集だと思いました。

 

2023/03/05

壇蜜さんの「結婚してみることにした。」を読んだ。

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『結婚してみることにした。 -壇蜜ダイアリー2-/壇蜜著(文藝春秋)』を読みました。
これもブックオフで見つけたものです。
なんといってもタイトルがいいと思いました。こんなタイトル見たら手に取るよね。

当然ながら結婚に至る相手との付き合いの過程などが日々“したため”られているのかと思って読んだのですが・・。
おどろくべきことに、この二年間に渡る日記の中には、結婚に至る過程についてはたった二日間しか書かれていなかった・・。
びっくりした。

びっくりしたには、しましたが、でも壇蜜さんらしいと思いました。
日記の内容は、カッコつけた嘘っぽいものではなく、ほんとうに毎日起こっていること、感じたこと、体調のこと、仕事で出会った事などが飾らない文章で書かれていました。

壇蜜さんは日記の中で自分をかなり卑下しているのですが(この日記シリーズでは他の巻でもそんな感じ)、でも“あきらめ”というか立ち直りが早いというか、自分はそうなんだからしかたないでしょ、みたいなところもあり、それが壇蜜さんの持ち味となってこの日記の面白さを増しているのだと思いました。

全体には、よく自転車に乗っている(雨の日に出て転倒したことまで書かれていた)、よくサウナに行く、猫などの動物のみでなく、爬虫類にまで愛情を注ぎ、それらが生活に密着している、よく寝ている&居眠りしている、・・そんなシーンが多かった。

で、仕事で付き合う人などにはかなり気をつかっているのも感じました。
気を使っているものの、それが裏目に出てもとことん落ち込んだりはしていないようで、それが芸能界で生きていくコツなのかもしれません。

結局、結婚に至る過程だとか、そのときの心情などについても細々とは書かれていなかったわけですが、結婚という人生上の大きなイベントについても、日常のひとつの出来事として淡々と書かれていて(実はそこだけちょっといつもと違う感じだったけど)、壇蜜さんの日々は流れて、続いていくのでしょう。

また次のこのシリーズ見つけたら買っちゃいそうです、そこにいろいろ結婚生活について書かれているような気がして・・。
きっと書いていないと思うけど。

 

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