「いまも、君を想う/川本三郎」を読みました。
『いまも、君を想う/川本三郎著(新潮文庫)』という本を読みました。
文学、映画、旅などの評論、エッセイ、翻訳の執筆活動をされている川本三郎さんの奥様、服飾評論をされていた川本恵子さんが亡くなり、「いまも君を想う」というタイトルどおり、奥さんの恵子さんとの馴れ初めから結婚生活の想い出、そして亡くなる間際の出来事、妻への思いなどを綴った本でした。
著者の川本三郎さんは、ほんとうに奥さんが大好きで愛していたのだな、というのがどの頁を読んでみてもわかりました。
恵子さんは夫の川本三郎さんがまだ二十代なのに、ある事件をきっかけに勤めていた新聞社を辞めることになっても、自分がいるから大丈夫、あせらずに今後の方向を探しましょう・・というような感じで支え続け、その後も様々なことについてフォローもすれば背中も叩き、さらに健康にも注意を払い、たくわえができれば、二人の想い出をつくりに旅に出たり、ふたりの数々のエピソードは読んでいて心あたたまるものでした。
それぞれのエピソードは克明に記憶されていて、そのときの奥さんの表情や、仕草、そしてたぶんこういうことを考えてくれて、こんなことを話してくれたのだろう、ということがたくさん書かれていました。
それはもう、驚くばかりの鮮明な表現で・・。
後半になると、奥さんの癌が見つかり、その後のお二人の様子がこれも克明に書かれているのですが、恵子さんが気丈に振舞えば振舞うほど、涙なしには読めないということになってしまいました。
でも、読後感はとても爽やかでした。
夫、三郎さんの「ああすればよかった」「自分のとった行動はあれでよかったのか」という気持ちも書かれていましたが、これだけ奥さんのことを考え、思い、最後の日までのことを書ききったという事実が「爽やか」な印象を残すことになったのだと思います。
心に残る素敵な本でした。
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