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2022/11/25

「さよならの力/伊集院静」を読みました。

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『さよならの力 -大人の流儀7-/伊集院静著(講談社)』を読みました。
2016年から2017年にかけて週刊現代で初出、単行本化に際し修正・書き下ろしを加え2017に刊行されたものです。

この本のテーマはタイトルどおり“さよならした人”、かつて“さよなら”したこと、“亡くなった人とのさよなら”などについて書かれていました。

伊集院さんは、大学生の頃、弟さんを海の事故で亡くし、27歳という若さの奥さん(夏目雅子さん)も亡くし、父を亡くし、そして東日本大震災で仙台に住む伊集院さんは多くの人とお別れすることになりました。

そういう心に遺された痛み、傷のようなものが時を経てどう心の中で変化していくのか、ということが書かれています。
これは他の伊集院さんの著書でも書かれていることがありましたが、特に突然失ってしまった配偶者や自分の家族などについては、さまざま多くの人がそういうことに遭遇することになる・・そんな人にどんな声を掛ければいいのか、自分に対してもどう考えればいいのか、ということが丁寧に静かに書かれていて、涙してしまうことが読んでいて何度かありました。

それから、小さい頃にいろいろ面倒をみてくれた近所のお兄さん的存在だった人。
その人が中学を卒業してから会っていない、さよならしたきりだ・・ということが書かれていましたが、私にも小さい頃に近所にちょっと悪い感じだけど、でも自転車に乗せてくれて、いろいろなところに連れて行ってくれたり、自分が知らなかった遊びなども教えてくれる“トシ坊”というお兄さんがいました。
そして、やはり私が小学校高学年になった頃にはもう我が家にも遊びに来なくなり、さよならしたきりです。
そんな人が誰にもいたんじゃないかなと思いました。

「さよならだけが人生だ」なんて言葉もありましたが、さよならすることよって人間は何かひとつ乗り越えていくような気がします。
そして人に対してやさしくなれるような気もします。

さよならについてしみじみと考えることになる本でした。

 

2022/11/14

「寿司屋のかみさん サヨナラ大将/佐川芳枝」を読みました。

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『寿司屋のかみさん サヨナラ大将/佐川芳枝著(講談社文庫)』を読みました。
このブログでも何度かご紹介している“寿司屋のかみさん”佐川芳枝さんが書かれた「お寿司屋さんエッセイ」です。

・・でも、今回は芳枝さんが長年連れ添った「大将」が亡くなるというお話が中心となっていて、ちょっと読むのがこわくて書棚からなかなか取り出せずにおりました。

意を決して読んでみましたら、さすが“寿司屋のかみさん”芳枝さん!大将が具合が悪くなった頃からの家族やお客さん、周囲の様子なども書かれてはいるものの、悲しさだけではない“温かい”話題をからめて見事に明るい書きぶりになっていました。

思わず私も涙腺が緩み、涙したところもありましたが、“あたたかい気持ち”になる文章で、ほっとしました。

大将とおかみさんの想い出、そして残されたお客さんと大将の様々なエピソード、さらに二代目大将となった息子さん「豊さん」の頼もしい“つけ場”での姿も描かれていました。
いつものように、おいしいお寿司の描写ももちろんたくさん書かれていて、二代目が亡くなられた大将のお寿司にさらに工夫したものを考案するのですが、その描写も見事で、とてもおいしそうに書かれていました。

芳枝さんの文を読むと、心がなごみます。
読みながら「なぜだろう」と考えるのですが、文章があまりにも見事過ぎてそんな考え事ができないくらい美しく、流れるような文体なのです。

真似は出来ませんが、私もこんな心がやさしくなるような文を書きたいと思いました。

まだまだ佐川芳枝さんの書かれた本(児童文学もあるらしい)は、何冊もあるようなので、また探して読んでみます。
そしてここで読後感をご紹介したいと思います。

 

2022/09/17

中島誠之助さんの「骨董掘り出し人生」を読みました。

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『骨董掘り出し人生/中島誠之助著(朝日新書)』を読みました。
2007年発行となっていますので、かれこれ15年前の本です。
著者は、あの「なんでも鑑定団」の焼物を主に鑑定していたあの中島誠之助先生です。

このあいだ、伊集院静さんの本をこのブログでご紹介したときに、そこに掲載されていた短編小説二篇「少年譜 笛の音」、「親方と神様」の感想を書きましたが、中島さんの生涯は、まさに上記二篇の小説のような、幼少期から少年期の両親を失い、養子として伯父や伯母などに育てられるも、戦争の惨禍から大変な苦労をする話が書かれていました。

骨董という道に入る前の学生時代の様々なことへの挑戦と、実際に仕事をするようになってからの挫折や、その中で手を差し伸べてくれた今となっては驚きの有名人達の話、まるで小説を読んでいるかのような数奇で、波乱にとんだ人生が描かれていました。

前回の伊集院さんの小説といい、今回の中島さんの自伝的なお話も、私の今後の生き方にとって大きなものを得たように思います。

世の中は自分の思うようには出来ておらず、次から次へと困難に見舞われ、あたたかく手を差し伸べてくれる人もいれば、多くは悪い人がいて様々な苦境に陥れられ、自らの信ずるところに向かってひたすら信念を通して生きていくことがいかに大変なことか・・ということがこの中島さんの実体験的自伝をとおして描かれていました。

中島先生には、二十年も前だったでしょうか、私の職場が企画した「出張・なんでも鑑定団」においでいただき、私と妻の新婚時代に買ったお宝「野々村仁清の香盒」を鑑定していただき、見事8千円の鑑定をいただき、妻は泣き出し、そのおかけでMVPをいただいてしまい、石坂浩二さんの絵を賞品として受け取るという、悲しいんだか、嬉しいんだかわからない結果になったことがありました。

事前に、先生方との握手やサインは出場者は「厳禁」との説明を受けていましたが、泣き出した妻を見て、あとで中島先生ファンだった妻は握手をしていただき、持参した中島先生のご著書二冊に丁寧なサインまでいただいてしまいました。

今となっては、たいへんいい思い出です。
それに、京都のみやげ物という鑑定をいただいた香盒は、逆に私達夫婦の“お宝”になりました(*^_^*)

この中島先生の「骨董掘り出し人生」は、自分を勇気づけるために、今後も読み返すことになると思います。

 

2022/08/28

「毎日が日曜日/城山三郎」を読みました。

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『毎日が日曜日/城山三郎著(新潮文庫)』を読みました。
ブックオフで見つけた城山三郎さんの長篇小説です。実に652ページ。
昭和51年に新潮社から刊行されたものの文庫化で、この本自体が平成19年のものなのですが、既に五十刷を重ねています。つまり大ベストセラーだったのですね。

日本の総合商社に勤める妻子ある男が主人公ですが、巨大な組織とそのダイナミックな機能、日本的な体質と活動が主人公と家族の日常生活とともに描かれています。

描かれている舞台は商社ですが、商社という特殊な企業活動ではあるものの、男なら誰もが何度も通る仕事の厳しさ、人事の厳しさ、家族との生活・人生の中で何度も遭遇する困難は人皆共通なのだ・・と“ひしひし”と感じる物語でした。

人事異動で与えられた職場がどんなところでも、多くの人は必死で働き、頑張り、それでも次から次へと問題が発生し、全力でぶつかっていく。そんな最中でも家族の間では様々な問題・事件は容赦なく襲ってきます。
それを仕事の細部に渡り、さらに関わってくる登場人物についても実に克明に、まるで現実であるかのように書かれている城山さん。
この人の描く小説世界は限りなく広大で、しかも身近に迫ってくるのです。

私も今まで仕事をしてきた各部署でのあまりにも厳しい環境を思い出して身震いしました。
しかも、そんなときにも家族の問題は“待ったなし”でやって来るのですから、人が、家族が生きて行くっていうことがどんなに大変なことなのかというのをあらためて突きつけられた感じです。

私がこの本を読み始め、テーブルに置いておいたら、妻が見つけ「あっ、この本お父さんが読んでいた本だ」とつぶやきました。

妻の父は、63歳で若くして亡くなりました。仕事での役職も上の方にいって、部下に対して厳しくも過酷なことを言わねばならなかったようで苦悩していたということを聞いたことがありました。

きっと、この本をお義父さんも読みながら、自分の仕事での置かれた環境と、家族とのいろいろな問題を考えていたのでしょう。
私が何十年後にその同じ本を読んだというのも何かの因縁かもしれません。

とにかく圧倒的な、仕事と家族を描いた「人生の本」でした。
とてもいい本に出会えたと、今、深く感じているところです。

 

2022/08/09

「父の縁側、私の書斎/檀ふみ」を読みました。

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『父の縁側、私の書斎/檀ふみ著(新潮文庫)』を読みました。
私同様、本好きの妻とブックオフでいろいと物色しているときに、私が阿川佐和子さんの本をよく読んでいるので、妻から「檀ふみさんの本はどうだ?」と手渡されたので買ってみたものです。これまた格安にて。

2004年に刊行されたものの文庫化ですから、檀さん五十代に入った頃の本です。

この本は、檀ふみさんが父の檀一雄さんの思い出と共に、一家が暮らしてきた家の間取り図も再現して家族の様子なども振り返っているもので、幼少期にまで遡る思い出はなんだか昭和の懐かしい家族の風景が彷彿として、読んでいてこちらもしみじみとしてしまいました。

仲良しの阿川佐和子さんの父親もかなり強烈な人でしたが、この檀一雄さんもそれを何倍も上回る強烈さでした。

お金もないのに土地を買ったり、家を買ったり、増築につぐ増築を重ねたり、その金の工面を奥さんが(ようするに檀ふみさんのお母さんです)が、丹羽文雄氏の家にお願いに行ったりする様子も書かれていました。

ポルトガルに何年も家族をおいて行ってしまったり、日本にいても女のところに行ってしまって家にも帰らなかったりですが、・・でも檀ふみさんはそんなに悪口を書いていないんですよね。
割といい思い出を持っていて、それを大切にしています。
阿川さんといい、檀さんといい、作家の娘の気持ちはよくわからないのですが、でも基本的に父親が好きだったんでしょうね。

家の間取り図を示しながら思い出を綴っていると、すでに書きましたが、その表現が実に巧みで、家の中の光景と、家族の様子がよく伝わってきました。
そういうのって、書いている本人ばかりが思い出に浸っているような文章が多いのですが、檀さんのこの本での文章はそうではありません。

人間って、さまざまな思い出、記憶は、風景やそのときにいた部屋、家などの映像記憶と共によみがえって来ます。まさにこの本はそんな感じでした。

普通から考えたら、檀一雄さんはとんでもない父親なのだと思われますが、でも檀ふみさんにとってはかけがえのない“父親像”として記憶されているのだと思いました。

自分の家のことではないのに、懐かしい気持ちにさせてくれた本でした。

 

2022/07/13

伊集院静さんの「女と男の絶妙な話。-悩むが花-」を読みました。

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『女と男の絶妙な話 -悩むが花-/伊集院静著(文春文庫) 』を読みました。
これは、2017~2019年に週刊文春に連載されたものを抜粋した単行本をさらに文庫化したものです。
だからけっこう読んだことのあるものも多かったのですが、それでも面白く読みました。

相変わらずのことですが、文春に寄せられた読者からの相談に答える伊集院さんの回答には思わず笑ってしまうこともありました。

夫婦喧嘩で一度も勝ったことのない夫が、一度は勝利してギャフンと言わせたいと相談すると、「あんたはエラい、今まで負けっ放しで耐えてきた。もうそれでいい。勝とうなんて思うな。そんなことしたら大変なことになる。男はそれでいいのだ。」などと、今の私ならよくわかり、同感する名?回答でした。

妻が浮気をしているらしいと、携帯電話をのぞき見て気付き、それを問い詰めようと思う・・という夫からの相談にも、「携帯をのぞくヤツが悪い。奥さんだっていろいろあったんだ、黙って見逃せ。」というような回答があり、昔の私なら「そんなんでいいのかっ!」と思ったかもしれませんが、今の“枯淡の境地”…σ(^_^;)の私には、「夫婦にはそれぞれ夫にも妻にも様々な事情がある、問い詰める前によく考えろ」と思ってしまいそうです。

「どうしても“イケメン”じゃないと男はダメ。でも、そろそろ将来性のある男と結婚したいが、イケメンでない男性に恋心を抱けるだろうか」

という女性からの相談には、

問題はありません。
どんどんイケメン狩りに励みなさい。
イケメン=うぬぼれ、傲慢  うぬぼれ、傲慢=思慮浅く、迂闊(うかつ)ですから、その浅知恵と迂闊につけこめ!

魔がさすというケースは十分考えられるから、運良く合体できたら、シメたものです。
責任を取らせるのです。

・・( ̄O ̄;)・・と、奇想天外な回答をしますが、ここいらへんが伊集院さんの真骨頂でしょうか(^_^)

十分楽しませてもらいました。
相談が“エンターテインメント”になるなんて思いもしませんでした。

以上です。

 

2022/05/22

映画「シング・ア・ソング! -笑顔を咲かす歌声-」を見て来ました。

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映画『シング・ア・ソング! -笑顔を咲かす歌声-(Military Wives)/2019年 イギリス 監督:ピーター・カッタネオ 主演:クリスティン・スコット・トーマス、シャロン・ホーガン』という映画を見て来ました。

このあいだ半年ぶりに映画を見て、今回は休日なので妻も誘い千葉劇場へ。やはり映画館で見る映画はいいものです。

映画の舞台となるのはイギリス軍基地でした。
愛する人を戦地に送り出し、最悪の知らせが届くことを恐れながら、基地に暮らす軍人の妻たちが主人公です。

大佐の妻ケイト[クリスティン・スコット・トーマス]が、そんな女性たちを元気づけようと、困難を乗り越えるために何か努力しなくてはと、熱意を持ってはたらきかけるが、皆は割と冷たい視線・・。空回り状態でした。

 

 

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女性たちの本来のまとめ役リサ[シャロン・ホーガン]は、最初はやる気なさそうでしたが、何気なく始めた“合唱”に多くの女性たちが笑顔を見せ始め、ケイトとリサの中心的な二人が方針の違いなどから衝突を繰り返しながら、やがて皆が互いを認め合うことに。

夫たちが向かった戦地から最悪の知らせを受け取ってしまうメンバーがいたり、家庭内がうまくいかなかったり、かつて我が子を戦地で亡くし、不安定な精神状態の人もいる中、だんだんと美しい歌声を響かせるようになる合唱団。

 

 

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そして、毎年ロンドンのアルバートホールで開かれる大規模な戦没者追悼イベントへの招待状が届き・・みんなが心をひとつにして歌い切ることができるのか・・最後の歓喜のシーンまで、いろいろなことが起こり、涙が何度も頬を伝うことになりました。隣にいた妻も嗚咽するのを我慢するのが大変だったと鑑賞後にポツリともらしました。

2019年の映画ですが、今、世界はロシアとウクライナの戦争で、皆が心を曇らせています。
映画の中に出て来た悲しい出来事が、現実に両国で起こっているわけです。

一人の兵士の死が、家族だけでなく、多くの人の悲しみになり、それらは今、世界を埋め尽くすくらいの悲しみの渦となっているのです、目には見えないけれど。

早く兵士が自国に帰還し、家族と再会し、笑顔になれることを祈ります。
人間が人間を攻撃したり、殺そうとしたりすることのない日が訪れる日をいつまでも待ち続けます。

 

2022/04/30

「強父論/阿川佐和子」を読みました。

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『強父論/阿川佐和子著(文藝春秋)』を読みました。

著者、阿川佐和子さんのお父様はもちろん阿川弘之氏。
94歳で亡くなられ、その後、娘の佐和子さんに「お父さんのことを一冊書いてみないか」という話が来たとのこと。

こんな日がくるとは・・もちろん、阿川さんは予想しておられ(^_^;)、今までの阿川さんの著書の中でも散々出てくるお父さんの弘之氏。
傍若無人、人権無視、女性蔑視、我が儘、傲慢、独裁者、だだっ子、いじけ虫・・などという言葉が数々の阿川さんのご本を読んできた私にも思い浮かべられますd( ̄  ̄)

亡くなるときの様子なども書かれていましたが、けっこう最後の最後まであまり変わらなかったようです、お父さん。

お父さんの“あんまりだ”というエピソードをこの本でも“再録”状態で披露されて(^^;)いますが、それでもそんな話をしたときに、友人やお母さんから「あなたもそっくりじゃない」と言われて、けっこう“ギャフン”と言わされていました。
結局、父娘は根本的な部分で似かよった部分があったようで、「まあ、しゃあない」という結論に至ったような気がする本でした。

向田邦子さんのエッセイなどを読むと、阿川さんのお父さんと“いい勝負”の向田さんの父親が登場して、これまた「そんなこと言いなさんな!」と言いたくなるくらいの“強権ぶり”を発揮していました。
ときどき、どっちがどっちのエピソードか、わからなくなることもありました…σ(^_^;)

タイトルがいいです!「強父論」。
強い父、恐怖の父、という感じがよく出ていますd(^_^o)

最近は「いいお父さん」が増えて(フリをしているだけ?)、こんな“頑固親父”町内見渡してもほとんどいないでしょう。
私が小さい頃には、七割方がこんな親父だったような気もする(^_^;)

本の帯に「ビートたけし氏絶賛!阿川さんには言わなかったけど、はっきり言ってあなたのお父さんは私の理想です」と書かれていました。
・・そうだろうなぁ・・。

 

2022/04/19

サヘル・ローズさんの「言葉の花束」を読みました。

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『言葉の花束 -困難を乗り切るための“自分育て”-/サヘル・ローズ著(講談社)』を読みました。

きっかけは、ラジオ・文化放送「浜美枝のいつかあなたと」という番組にサヘルさんが出演され、この著書について浜さんからインタビューを受けていたのを聞いたからです。

もう浜さんの声の調子がほんとうにこの本を読んで、大きな衝撃を受け、感動したことがわかりました。
また、サヘルさんのあまりにも“まっすぐ”で真摯で、優しい受け答えに私自身も「ぜひ、この本を読んでみたい」と思ったのです。

イラン生まれのサヘル・ローズさんは、幼少時代を孤児院で生活し、養母となったフローラ・ジャスミンさんに7歳のときに引き取られます。

8歳でその養母と共に来日。
孤児、養子縁組、貧困、差別・・そのほかにもつらいことや、悲しいこと、さまざまな事実がたくさん綴られていました。

お義母さんとの暮しは貧困に加速がついたように、公園で生活するようになり、冬は図書館で閉館までの時間、暖を取り、その後はスーパーで安いものを見つけたり、試食品を食べたりして暮らしていて、着替えもなく、風呂もなく、公園から学校に行く生活、お義母さんは、きつい仕事をサヘルさんのためにして、もう考えられない環境の中、サヘルさんは“いじめ”にも遭ってしまう・・。

でも、親子二人で実の親子のようになんとか光を見出すように生きて行く姿に、私は何度も涙しました。

目の前にいる相手を、どう感じられるかがとても大切だというサヘルさん。
その感情を教えてくれたのが義母のフローラさんです。
自分を見つけてくれ、もう一度生きる感情をもらったとおっしゃっています。
お義母さんのフローラさんの瞳に映る私が本当のサヘル・ローズだと信じています、と静かな調子で書かれていました。

相手の目を見るなんて、今の時代にはなくなってしまいました。
携帯の画面ばかり見ている人たち・・が、ほとんど。
そこには人は存在していないのです。

サヘルさんは、イラン・イラク戦争で孤児となり、自分の名も知らず、縁者はひとりもいなくなり、孤児院で幼少期を過したのですが、お義母さんのフローラさんは、「絶対にイラクを憎んでは駄目。大人になったらイラクに行って、彼らの生活を見て来なさい」と言います。
「戦争によって孤児になってしまった人たちに会ってきなさい」と。

戦争は誰かを敵にして、見方を作ろうとする。
でも、戦争は全員が被害者。
敵も味方もない、みんなが犠牲になっているだけ。
いつも犠牲になっていくのは一般市民。
そして時代に翻弄されていくのも生き延びた子ども達。

「憎む感情を捨て、人を許すことを学びなさい」・・この言葉は重い。特に今のこの世界の状況下では、心引き裂かれるような思いで読みました。

サヘルさんは、ほんとうに2019年にイラクへ行きます。
イラン・イラク戦争の兵士とも奇跡的な出会いをしています。

相手を殺したくないのに、知らない相手に銃を向けている恐怖。

戦いたくて戦ったわけではないのに、でも、大事な家族のために、戦争へ行くしかなかったと涙を流すイラク兵だった人。

ほんとうに、今のウクライナとロシアのこのような状況下では、あまりにも重く、そして心身に響く言葉です。

泣きながら、そして希望を見出した部分では、泣き笑いしながら読みました。

つらいと思ったとき、泣きたくなったとき、死にたいと思ったときにまた読むことになる本だと思いました。

サヘルさんの生き方に大きな衝撃を受け、私も少しでも近づいて、強く、やさしい心を持とうと思いました。

 

2022/04/04

「食べごしらえ おままごと/石牟礼道子」を読みました。

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『食べごしらえ おままごと/石牟礼道子著(中公文庫)』という本を読みました。

今までこのブログでも、いろいろな食べ物について書かれた本の感想を書いてきました。
私の得意というか、好きなジャンルは“B級”的な食べ物について書かれたものですが…σ(^_^;)

でも、この石牟礼さんの著書は、「ぶえんずし」、「笛ふき鯛の煮付け」、「らっきょうの即席しそ漬」など、いろいろな食べ物が登場しますが、それぞれの背景に“暮し”や“故郷”、“土地柄”、“家族”、“四季”などが見えてきます。

だから、単に食べ物の話では終わらず、石牟礼さんの想い出なども加わって、とても映像的な文章になっていると感じました。
そして、とても感情というか情緒にうったえるものがありました。

料理の味を想像するだけでなく、しみじみと人や風景の様子を味わうことになりました。

深くしみじみと、心と体の芯に沁みてくる本でした。読後も心地よい感覚がただよっています。

 

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