『一杯飲んで帰ります -女と男の居酒屋十二章-/太田和彦著(だいわ文庫)』を読みました。
2012年に KADOKAWA から刊行された「男と女の居酒屋作法」を改題し再編集の上、文庫化されたもので、2022年に文庫として刊行されています。
太田さんと言えば居酒屋ですが、この本では女として、そして男としてそれぞれに居酒屋に行くときに知っておくと良いこと、また、異性を誘って居酒屋に行くときの心得のようなことが書かれていて、紹介される居酒屋はなかなかの処ですが、アドバイスは居酒屋初心者向けとなっておりました。
居酒屋でもおしゃれな町がいい、なんていう女性向けには麻布十番の「たき下」というお店が紹介されていました。
まこかれいのお造りを頼み、ガラス皿に盛った白い半透明の美しいことによろこび、厚切りなのに半透明で、薬味のはじかみ・山葵も二人用に二盛りしているのがニクイ、などと居酒屋に実際に行ったかのような紹介の仕方も楽しい本でした。
この麻布十番の居酒屋の章では、「夏の麻布十番納涼まつり」の“にぎやかさ”も紹介されていました。
私が東京勤務の時にはこのお祭りに参加し、実際にテントを出して飲み物を売ったりしたこともあったので、とても懐かしかった。
見栄を張らなくてもよい、ちょうどいいお店が次から次へと紹介されていましたが、でも実際は一度は行ってみたいと思わせる老舗も入っていて、心憎いチョイスに、さすが太田さんだと思ったのでした。
私の住んでいるところは田舎で、ちょっと歩けばそこいらへんに居酒屋があるというわけではなく、“行きつけ”の居酒屋なんて見つけずらいのですが、それでも電車で一駅・二駅くらいのところに一人呑む居酒屋なんてものを見つけたいものだと思ったのでした。
『飲んだら、酔うたら/椎名誠著(だいわ文庫)』を読みました。
4章立てで、
1章は2013年に書かれた酒の探訪記をベースに、椎名さんが生まれてはじめて飲んだサケの話からその後のことを再編成し、追加原稿も含めたもの。
2章はシングルモルトウイスキーを集中して取材したウイスキー特集。
スコットランドへの取材記は圧巻でした。
3章はビール話。
ここは「まずはビール」の私にも、めっちゃ面白い文が集まっていて、最高でした。
4章はサケがらみのよもやま話で、ワインや日本酒などの面白話が楽しいものでした。
全体を通して、もう話題は“酒尽くし”でした。
ロシアのまずい酒の話も面白いし、スコットランドでは実際にいくつかの蒸留所に出向き、椎名さんは仕事まで手伝います。
さらに書かれていたのは、そこで出た見たことも聞いたこともない現地の料理。想像するだけでこってりと美味しそうなものでした。
それから酒にまつわる“バカ話”的なものも面白かった。
学生時代に忍び込んでビールを二本いただいてきた酒屋に、作家となった椎名さんと、そのとき一緒に忍び込んだ友人の今は弁護士の木村氏と共に当時の謝罪に出掛けた話もありました。
大人げなくも、愉快な話でした。昔はよかったってことです。
酒屋の女将さんも、「学生さんならビールの一本や二本あげたのに」なんて“粋”なことをおっしゃっていました。
ここからは私の経験上の話ですが、お酒を本当に教えてくれたのは、今までの人生で、皆女性でした。
男は、上司、先輩も何人かいろいろ連れて行ってくれたこともありましたが、酔っぱらっちゃうんですね ^_^;
だから、このお酒はこういうものだとか、このお店はこういう特徴があるとか、それぞれの酒にこういう飲み方がある・・などということを教えてくれる前に大抵は“つぶれて”しまうのです。
でも、私にお酒を教えてくれた女性は(特別な人は人生で二人いた)ビールでも日本酒でも、ワインでも、焼酎でも、ウイスキーでも、カクテルでも、美味しい飲み方、選び方、お店の選び方、入り方、注文の仕方、つまみ、肴の選択、高級な店から大衆酒場、立ち飲みまで、ほとんど教わってきたといっていいかもしれません。
一部、男性の上司、先輩からも教わりましたが、それでも途中で酔われてしまって、お話しが深くなって“うんちく”などが出てくる前にろれつが回らない(^^;)状態になっていました。
連れてきて飲ませた・・ということで安心してあとは自分が酔うだけだという感じだったのだと思います。
ということで、この椎名さんの本を読んで、上司、先輩に代わって色々教えてもらったような気になることが出来ました。
お酒づくし、お酒ざんまいの楽しい本でした。
静岡の銘酒「臥龍梅」の由来を調べてみたら・・という句を読みました。
【 臥龍梅(がりゅうばい) 地を這い 生きることと知る 】
《背景》季語:臥龍梅[春]
東京勤務をした時に、静岡市の方から「臥龍梅」というたいへんおいしいお酒を飲ませていただいた。
そも「臥龍梅」とはと調べてみると、「臥龍」は寝ている龍。
まだ雲雨を得ず、天に昇れなく、地に潜み、隠れている様子だという。
そして「臥龍梅」という“梅の木”の話になると、老木が地面に接したところから枝を四方に倒れ伏して、再び根を出して新しい株となる・・地を這う龍のように見える、ということで、いい酒の名には、いい謂れがあるなとうれしい知識を得た。
さっそく、それを詠んでみた。
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