「飲むぞ今夜も、旅の空/太田和彦」を読みました。
『飲むぞ今夜も、旅の空/太田和彦著(小学館文庫)』という本を読みました。
単行本「ひとりで、居酒屋の旅へ」の一部を加筆修正し、さらに雑誌に掲載してきた未収録コラムをまとめたものになっています。
で、この文庫版は2022年5月発行となっております。
割と近年に書かれたものが掲載されているので、太田さんの文は“角が取れて”とても“まろやか”で読みやすいものになっていると感じました。
それにお酒や肴の話ばかりに重点が置かれているのではなく、その土地やお店の風情や、行った先での人との関わりが太田さんの気持ちと共によく伝わってくるのです。
東日本大震災により、発酵中のもろみがタンクからから溢れてもろみの全廃を覚悟していたが、電気などが一部復旧し、生き残ったもろみが発見され、絞った酒は力強く生命力にあふれ、やがて「希望の光」と名付けられたという話を、当時それに関わった方たちのことと共に書かれているところでは、感動して体が震えました。
大分「こつこつ庵」の『琉球』という、関サバをゴマ醤油ダレに浸けておく、もともとは家庭料理だったものの紹介もありましたが、読んでいるだけで一度でいいから食べてみたいと思いました。
ちょび髭でジャズ・サックス奏者の坂田明さんに似たマスターの様子も親しみやすく描かれていました。
新潟「魚仙」のブリをつかった「ブリなめろう」の描写もうまく、ぜったいに行ってみたい、食べてみたいと思いました。
さらに旭川の「独酌三四郎」という日本でも屈指のいい居酒屋には、《日本三大白割烹着おかみ》(^^;)と太田さんが絶賛する美人女将がいて、大球キャベツ・鉈切り大根・人参・身欠きにしんを麹で漬け込んで発酵させたものについても書かれていました。
歯ごたえのある食感が伝わってくるようないい書きぶりでした。
こんな話が満載で、「小鍋立ての一人鍋」の良さについても書かれていて、それは居酒屋でもいいし、家で一人静かに飲むときにもいいなぁと思いました。
日本全国のお酒と肴と居酒屋とその土地の風情、さらにそこに住む人々の様子、マスターなどのとても心温まるエピソードなども添えられていて、日本の居酒屋世界を堪能しました。
今年はなんとか太田さんが行ったお店の何処かを訪ねてみたいと思いました。
横須賀『銀次』の「しこいわし」なんて食べてみたいですっ!(^-^)
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