海部さんの回顧録
『政治とカネ 海部俊樹回顧録/海部俊樹著(新潮新書)』を読みました。
私の海部さんの印象は、若かりし頃に国労の富塚三夫氏と、朝のテレビで生放送で渡り合っていた、バリバリに活躍していた頃のものが一番強いのです。スト権ストの真っ最中だったのではないかと思います。
まだ小中学生だったと思いますので、記憶はちょっと曖昧なところがあるのですが。
それでも、相手を論破していく姿には、「へえ~、こんな颯爽とした政治家もいるんだ」と思ったものでした。
この本を読むと、三木首相の下で政治の世界を見ている様子が、よくわかるのですが、あの三木さんでさえ、自民党の中で派閥の領袖としてやっていく中ではずいぶんとお金を使っていたようです。
海部さんにしても、そうせざるを得ない状況が幾度もあったようで、特に田中角栄さんのことにふれている部分では、その金の使い方について具体的に触れていて、政治の世界での「お金」がどういう風にモノを言うのかということの一端を垣間見ることができました。
また、首相になるときの、やっかみや妨害、逆にならせておいて利益を得ようとする人などについても書かれていますが、首相になるということは、ほんとうに大変なことなのだと感じました。
度々出てくる現民主党の小沢さんは、この本の中でも、現在と似たような感じで、人を寄せたかと思うと、あっという間に“見切り”をつけてしまったり、危なくなる前にさっと“逃げ”てしまう姿も書かれていて、著者もほとほといやになったようです。要するに信頼できない人に感じていたようです。
解散、総選挙などに打って出るような緊迫した場面での、私達が知っている政治家がどういう風に立ち回ったか、あるいは寝返ったか、ということも書かれていて(これがこの本の一番おもしろいところかもしれません)、興味深く読むことができました。
首相になられた時の海部さんについては、竹下派に操られていたという印象が世間的には通っていて、私もそんな感じがしていましたが、その中でいろいろともがきながら、法案などを通そうとしていた姿も描かれていました。
いったんは政治生命が終わったかのように見えましたが、自民党を離れ、新進党で多くの議席を獲得したりもしています。そのときにも小沢さんに色々とやられてしまったようですが・・・。
自民党に戻って来られて、前回の総選挙前にそのお姿を自民党本部に仕事で出かける機会があったときに拝見しました。
そのときは、足を悪くされていたようで、引きずるようにやっと歩かれていました。
お歳を召されたな、と思いました。昭和6年生まれなんですね。私の親と同世代です。
これからも、政治の世界に関わりをもって行くと、この本にも書かれていますが、政治家には心の中に引退というものはないのかもしれないですね。
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