幸田真音の「あなたの余命教えます」を読みました
『あなたの余命教えます/幸田真音著(講談社文庫)』を読みました。
タイトルにインパクトがあるため、本屋ですぐに目に付き、買ったものです。
あと数年で退職を迎える年代の男性が主人公。
それまでに冒険し、チャレンジすれば大きな人生の転換点になるようなことがあったが、結局は安定した今までと変わらぬ生活を求めて、踏み込めぬまま、会社では“置いてきぼり”な状態。
そんな50代の男が、とあることから何の冒険もできなかった自分の人生を振り返り、今後の自分の人生で何ができるか、そして・・自分の余命はどのくらいあるのか、と調べ始めて、余命診断をする機関にたどり着くのです。
ゲノム解析を含む診断には多額の費用がかかるため、説明会が開かれ、そこで知り合った人たちとは仮名でやり取りをすることとなり、それぞれの人たちの人生に関わることとなり・・思わぬ事態に大展開します。
こういう急展開は幸田さん小説のひとつの読みどころです。
もう、ドキドキしながら読み進みました。
余命を知りたい(自分のものでも、自分と重要な関係にある人のものでも)理由は様々で、それぞれの登場人物に劇的な理由が存在していて、それも面白かったのですが、さあ実際に「余命」が発表される段階(カウンセラーが付く)に至り、自分の余命を知ってしまった主人公は、自分でもなぜ知ろうとしたのか悔やむほどうろたえ、自暴自棄状態になります。
今まで見えていた家や家族の様子、会社のことなどがまるで別のものに見え始め、大胆な行動に出たかと思うと、今までのように「小心」が心の中に出てしまったり・・右往左往、一歩前進・二歩後退みたいな進行の描写がすごくて、あっと言う間に最後まで読み切りました。
これは面白かった。それに、自分にこの主人公を置き換えてみると、非常に示唆深い話です。
なので、しみじみとしたりもしました。
読み進むうちに、加速していくストーリー展開がすばらしい快作でした。またまたおすすめの本です。
【Now Playing】 ニュース / NHK ( AMラジオ )
« Facebook・・よく感じること | トップページ | 『玉ねぎフライパン作戦/椎名誠』を読んだ »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 古本の頁を繰っていて見つけるもの(2022.01.23)
- 中学生時代から今に至るまで、「レコード盤を貸してくれ」「CDを貸してくれ」「本を貸してくれ」と言われる話。(2021.12.21)
- 「日本人も知らなかったニッポン/桐谷エリザベス」を読みました。(2021.10.03)
- 「小林信彦 萩本欽一 ふたりの笑タイム -名喜劇人たちの横顔・素顔・舞台裏-」を読みました。(2021.09.28)
- 坪内祐三の「最後の人声天語」を読んだ。(2021.09.25)
コメント