飛鳥井千紗さんの「はるがいったら」を読みました
『はるがいったら/飛鳥井千紗著(集英社文庫)』を読みました。
前回読んだこの著者の「タイニー・タイニー・ハッピー」は、複数の男女カップルが普通の生活と仕事と男女関係を日常の中で繰り広げて、そこに自然に漂う幸せ感のようなものが描かれていました。
この作品では、両親が離婚し、姉は母につき、弟は父につき、父の方は再婚し相手方は連れ子もいる・・そんな状況から始まります。
そして特徴的なのが、姉弟が飼っていた犬が老犬になり、介護が必要な状態となって弟の方が高校に通いながら介護しているということ。
さらに、弟は病弱で入院することになり、犬の介護は勤めだして一人暮らしになった姉がリレーしてすることになるという珍しい展開。
主人公は、姉・弟の二人なのですが、姉はスタイルも良く、人もうらやむ美人ながら、自分の思い通りにならないことは何一つ許さない、そしてファッションなどにもうるさいという珍しいキャラクター。弟は、様々な困難も、「ま、いいか」というあきらめにも似た感情を常に持っているふらふらとした感じの高校生。でも、意外としっかりしたようなところも見せる。
周囲にいる人達もそれぞれに独特な雰囲気を身にまとい、勝手な人もいれば、境遇に翻弄される人もいて、この著者が描く世界は、“ほんとうの世の中ってこういう風に「正」も「悪」もなく、曖昧で、うねりながら進行して行くのだ”っていう、そんな感じなのです。
最初はとまどいましたが、でも、「きっとそういうことなんだね」と私もしみじみと思ってしまいました。
姉の方が婚約者のある幼馴染みと関係を持って、いっこうに平気でその関係を続けて行こうとしたり、弟が恋人のような会話をしている同級生の女子と実は恋愛感情を持っていない、というのも今までにない物語の展開でした。
そこからどろどろになったりもしないし、恋愛感情が芽生えたりっていうのもないのです。
しかし、これが現実の今の男女関係かもしれません。
周囲を見ていると思い当たるようなところも感じます。
今の人々の生活、息づき、思いやり、などというものが部屋に要介護の犬がいる環境で描かれている不思議環境作品でした。
特に女性に共感を持つ人が多いのでは。私は“男おばさん”なので共感してしまうが(*´`*)
【NowPlaying】 Never Grow Up / Taylor Swift ( Pops )
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