「ガス燈酒場によろしく/椎名誠」を読みました

『ガス燈酒場によろしく/椎名誠著(文春文庫)』を読みました。
椎名さんが週刊誌に連載している「風まかせ赤マント」というエッセイ?の文庫化されたものです。
連載は千回にも及び、その文庫化最新刊です。
小学生になるお孫さんも登場することになり、椎名さんも、もうお爺さんなのだなと、あらためてしみじみとしてしまいました。
でも、元気ですよ!(^o^)
今回も“雑魚(ざこ)釣り隊”を結成し、海に出たり、ファッションショーのモデルをやったり、若い店員の妙なマニュアル言葉に???となったり、海外の過酷な環境を旅したあとの日本、東京での全てが修理補修されている人の勤勉さや、交通の安全、至便に感謝したり、逆にそこまでする必要があるのか、と思ったり・・けっこう“揺れ幅”の大きな書き方もされていました。・・これもいつものことですけど(^_^;)
ただ、この本の中、途中で東日本大震災が起こります。
その後には、東京の今までの電力をふんだんに使った明るさや、その他電気が無尽蔵にあるような今までの考え方を日本人はもっと考え直さなければいけないんじゃないか、とトーンが変化し始めます。
宮沢賢治の文学の気配が風景の中に濃厚に充満している、岩手県の雫石に行ったときのことが書かれている部分で、ここちいい風や雲、山の緑や川、その音などの様子に、椎名さんは「この見渡す限りおだやかに太陽の光をうけて“しん”とした音のしない静かな町、田園、鎮守の森、農道、町のいろいろな人、これだけでいいんじゃないか。」と書いています。
町の中央通りでは、古めかしいむかしながらの商店が並び、道路といっしょになってやわらかい曲線を描いている・・さびれているというかもしれないが、日本中の田舎の町並みがみんな同じ風景になっていってしまうなかで、むしろ「生き生きしている」と感じるとおっしゃっています。
私も同感なのです。
新幹線もどんどん延伸し、リニアなどの超高速鉄道もやがて現われ、通信手段も考えられない進化を遂げ、人の持つ“時間”や“距離”を無きものにしようとすることが人にとって幸せなことかというと・・幸せとは全く関係がないようにも私には感じます。
新幹線も無く、コンピューターも無く、携帯電話も無い頃の人たちが不幸せだったのかというと、“幸せの尺度”は全く異なるもので、それとは関係なく幸せだった人は幸せだったし、不幸な人は不幸でした。
私にとっての幸せも、家族全員で笑顔で会話しているときが一番のもので、また今まで知り合った方々といろいろなお話をしたりして楽しいひとときを過しているときがまた幸せの瞬間です。
いくら便利になって労力が少なくなったといっても、その分人の働く機会が失われるどころか、労力が少なくなった分、ひとりの人間に考えられないような過重といえる仕事を強いているのがその結果のようにも思います。つまり、結果として幸せになっていない、ということ・・。
最近、そういうことをよく考えます。
この本を読んで、また、あらためて考えだしました。
千回に及ぶ連載をまとめているこの本ですが、そのうち76回分が椎名さんの判断で未掲載とのことで、勢いにまかせて書いたものの、文庫化の段階で読み返して没にしたとのことです。内容にトーンの違いがあったり、怒ったかと思うと反省の日々を送ったりする椎名さんですが、地元出身の大好きな作家のひとりです。
今回も楽しく読ませていただきました。
【Now Playing】 Azure / Akira Kosemura + Haruka Nakamura ( Instrumental Music )
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