「パリ3区の遺産相続人」を見た
『パリ3区の遺産相続人(My Old Lady)/2014年英・仏・米合作映画 監督・脚本:イスラエル・ホロヴィッツ』を見ました。
主人公マティアス(役:ケヴィン・クライン)はアメリカ人で疎遠だった父の遺したパリのマレ地区一等地にあるアパルトマンを相続。
それを売却してどこかで自由に暮らすつもりでパリに乗り込むのでしたが・・。
そこには、マティルド(役:マギー・スミス)という92歳の老女が住んでおり、ヴィアジェというフランス伝統の住居売買制度(売り手は死ぬまで自分の家に住んで買い手から毎月定額を年金のように受け取れる)がマティアスの“売っ払ってハイさよなら”という企ての障害となるのでした。
そこには老女マティルドの実の娘で独身のクロエ(役:クリスティン・スコット・トーマス)も住まっており、なんとかして“売り払おう”というマティアスと、居座り、年金を受け取ろうというマティルドとクロエの不思議な駆け引きのようなものが展開されます。
元々は My Old Lady という戯曲があり、舞台で三人が繰り広げる濃密なお芝居だったもののようですが、この映画では舞台がパリということもあって、実に愁いある風景の映像、街並み、アパルトマンとその庭の古く重厚感のある佇まいが、ストーリーをより深みのあるものにしています。
単にアパルトマンをめぐる三人のやり取りがメインの話かと思いきや、三人それぞれが今までの人生で抱えてきた苦悩が浮き彫りになってきます。
それというのも、老女マティルドは主人公マティアスの父親と生前愛人関係にあったことがわかってくるのです。
父親との関係、自分の人生への傷、そして母親がどんなに苦しんでいたのか、さまざまな思いをさせられた張本人がアパルトマンに居座る老女・・。
そして、そういうことであればマティルドの娘クロエは同じく母親の不倫を10歳のときに知ってしまい、こちらでも不倫された父と自分、母親との関係で苦しんで来たのです。
しかも、今やそのクロエ自身が英語を教えている妻子ある男性と不倫関係にある・・。
反目するマティアスとクロエの残された子供?同士。
でも、いつしか互いにその境遇からも惹かれ合うことになるのですが、ここでまた問題が・・、ひょっとして二人は“兄妹”かもしれない。
しかも、マティルドは「そんなことわからない」と知らぬふり。
でも、マティルドも自分の心に正直に生きてきた誇りと、それとは逆に子供達、不倫相手の配偶者の人生を大きく狂わせてしまったことに苦悩を持っていて・・。
あとは映画を見てください。
三人の人生、心の襞のようなもの、それらがパリの美しい景色と共に描かれていて、素晴らしい作品となっていました。
これも千葉劇場での上映作品、やるなぁ千葉劇場。
【Now Playing】 長野祐成の医療界キーパーソンに聞く / 北島明佳氏 ( ラジオ日本 )
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