映画「母と暮らせば」を見ました
『母と暮らせば/山田洋次監督 主演:吉永小百合、二宮和也、黒木華』を見ました。
テレビなどでもCMが流れているのでご存知の方も多いかと思いますが、長崎に原爆が落とされてその時の唯一の家族である次男を失った母(吉永小百合)と命を落とした次男(二宮和也)、そして次男(二宮和也)の婚約者であった女性(黒木華)を中心とした物語でした。
次男を演じた二宮さんは、原爆で亡くなったあと、三年後に母親である吉永さんの目の前にひょっこり現われて、二人の会話というか、吉永さんがもう幸せなんて無いと生活している中で幽霊である次男・二宮さんと想い出を語りつつ、現在の状況を互いに受け止め、あきらめにも似た感情に包まれつつも生きて行く姿が描かれていました。
そして、二宮さんと婚約していた黒木華さんは、吉永さんを義母同様に大切に、吉永さんを励まし、家のことなども手伝い、その姿はあまりにも健気で可憐でした。
吉永さん、二宮さんの二人がこの世とあの世の別世界に居る身でありながら黒木さんにいい人を見つけてもらい幸せになってもらおうという結論を苦悩の末に導き出すのですが、いやだと言っていた黒木さんもひとりの女性、やがて誠実でやさしい教員の同僚と婚約・・今までそれを願っていた吉永さんが突如、うちの子だけなぜ不幸になってあの娘だけ幸せになるのか、というあまりにも人間的な部分を見せ、それまでと逆に二宮さんが諭す場面などは涙なくして見られませんでした。
また教員である黒木さんが生徒の女の子(本田望結・ほんだみゆ)さんを連れて復員局に出向き、母が亡くなり、妹二人のめんどうを見、その子の父の最後の状況を聞きに行くシーンにはもう涙がいくらあってもたらないくらいに泣きました。
父の最後の地とその状況をお爺ちゃんに言われたからと、必死に泣かずに聞き、こらえる幼い本田さん、そしてそれを見て思わず抱きしめ、大泣きする先生の黒木さん、・・もういけません、声をあげて泣いてしまいました。
本田さん迫真の演技、山田監督も「すごい子を見つけた」と驚いていたようですが、素晴らしいのひと言でした。
その他のキャストも見事というに尽きますが、この物語は、原爆投下の一瞬のその時まで家族があり、それぞれの生活をしていた無辜の民(死者7万4千人と言われている)を溶かし、焼き殺したその事実がさらに亡くなられた方の家族、恋人など何十万何百万という人々の未来を破壊し、それがどんなにひどいことなのかを吉永、二宮親子の何でもない親子の会話から感じさせる静かで悲しいものとなっていました。
親子の会話にはユーモアもあり、まるで二人が恋人でもあるかのような錯覚を覚えるシーンもあるのですが、それがさらに哀しさを増すのです。
吉永さんは、現在も原爆について語り継ぐ活動をされていますが、人が人に対してあのような核兵器を使ってはならない、どんな理由があってもそれはいけない、と私はずっと思ってきました。そしてそういうことにふれる機会があったときには、そう発言してきました。
でも、今まで仕事を一緒にしていた者とそんな話になったとき、例えば部下から「そんなこと言ってちゃ駄目ですよ。原爆が落とされなかったら私達はこんな生活できていませんよ。むしろアメリカが落としてくれてよかったのかもしれないですよ。」と言われたり、「原爆投下が悪いというのか、日本人だって戦争で人を殺したじゃないのっ」と、年下の上司から食ってかかるられたこともありました。
悪いけど、どちらも一人の人間としてどうかと思いました。
いかなる理由があっても、人が人に原爆を落とす決断は間違っています。
自分の今の状況でもし同様のことがあったら、という想像力が欠如しているのだと思います。ただの歴史上の教科書に書いてあった覚えなければならいない項目としてだけとらえているんじゃないのかと思いました。情けない。
この映画を見て感じることは微妙に人によって異なるかもしれません。
でも、戦争を二度としてはいけない。
二度とあの兵器が人に対して使われることがあってはいけないと感じなければ・・この映画を見た意味はないのです。
【Now Playing】 オールナイトニッポンMUSIC10 / 森山良子 ( ニッポン放送 )
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