『解』を読んだ
『解(かい)/堂場駿一著(集英社文庫)』を読みました。
この物語はバブル絶頂期に大学生だった男二人が主人公で、二人は「政治家」と「小説家」を目指しています。
読み進んで行くと、1995年の Windows95 の登場に乗って政治家を目指す学生は卒業後にIT企業を立ち上げ、プロバイダーからその他IT関連事業に手を拡げ、やがて政治家になるための資金を蓄えます。
その過程で殺人事件を引き起こし、長編社会派ミステリーとしてのこの物語が川が流れるように動き出します。
もう一人の主人公は、小説家を目指すのですが、最初は新聞社に入り、なかなか小説も書けず、書けても独り立ちがなかなか出来ない状況。
やがて編集者のアイデアを渋々受けて作った時代モノが受けて作家として一本立ちしたのですが、自分が新聞記者成り立てだった頃の赴任先での殺人事件が迷宮入りしてしまったことがいつまでも心に残っている・・、そしてそれについて調べ出すと・・IT長者から政治家に転身した大学の同期生の名が浮上してきます。
この物語の時代は、まさに私が経験してきた時空で、様々な当時の出来事がまるで自分の体験のように直に伝わってきて、楽しい思い出や、併せて苦い思い出なども蘇りました。
でもね、この二人の主人公にはどちらも共感するところが何もないのです。
政治家になった方は独善的だし、小説家の方はなんだか煮え切らない・・。
途中からちょっとイライラしつつ読んだのですが、この物語の最大のテーマ(事件)である殺人事件が“肝心要”のラストシーンでどうでもよいような扱いにコロッと変ってしまって・・。その理由が東日本大震災の発生なのですが、いくら政治家にとって震災後の政治家としての活動が大切なこととはいえ、だから殺人事件はもううやむやにしよう、みたいな結末がどうにもこうにも納得がいかないまま読了となりました。
あの震災事態に作者も混乱してしまったのか、460ページも読んだのに“尻切れトンボ”な結末を突きつけられたのでした(T_T)
読むのはテンポ良くいったのですが、なんともやりきれない思いです、今。
お勧めしたい気持ちもあるが、やっぱりやめておこう・・そんな感想です。
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