かつて日本は成熟した性の大国であった?という本
『エロティック日本史/下川耿史著(幻冬舎新書)』を読みました。
いろんな人の話や、その他今までに読んできた本などからの情報によると、日本という国は昔からこんなに性に対して閉鎖的で、抑圧的で、秘密主義的だったのだろうか・・などと疑いを持つことがありました。
つまり、今の日本は上記に書いたように閉鎖的、抑圧的、秘密主義的(表向きは)に感じるということです。
この本にも冒頭書かれていますが、「古事記」や「日本書紀」の伝えるところでは、イザナギとイザナミという男女が性的な関係を結ぶことによって、すべての日本は始まったわけで、それがどんな“体位”だったか?なんて話から始まります。しかも、その元ネタは中国の性書にそっくりである、などという「えぇっ」という興味深い話を導入部として、どんどん著者が研究してきた内容が展開されて行きます。
入浴についても、それは禊ぎであり、当たり前のように混浴であり、しかも乱交であった・・という話が出ていて、それは湯女という遊女の発祥に結びついていき、後の世にも形を変え継承されて行きます。
天鈿女命(あまのうずめのみこと)は、ストリップの元祖であり、その爆笑ものの裸踊りがこの世を救ったなんて話も書かれていて、読物としても面白いものでした。
神道辞典に「鳥居は陰陽交感の表われ」と記されていて、鳥居は女性の脚でそれを広げている姿を表わし、神社は子宮である、という考えについても根拠を示しながら紹介されていました。
さらに大黒様は“夜這いの元祖”だとか、「竹取物語」にも登場する夜這い合戦、夜這いを待ち続けた女性歌人の話なども・・・。つまり夜這いっていうのは日本の伝統ある?由緒正しき?!行いである・・ということも書かれていて、そのゆるい感覚がむしろ新鮮に感じられました。
歌垣という和歌の源流と公開の性(乱交パーティー)についても書かれていましたが、今までまったくこういうことを知りませんでした。
そして、天皇や貴族、武士達の好色なふるまい。
女性が使う秘具は奈良時代からあった話。
宗教と性の結び付きも今までに聞いたことのないもので、アイドルに群がるように読経の声のセクシーさに僧の元に集う人々の様子も描かれていました。
春画、遊女、僧侶と美少年、性の奇祭、宮中のスキャンダル、有馬温泉の大湯女、天下人が遊郭を作ろうとする話、などなど・・かつての日本が今の表向きには性に対して厳格な様子とは大きく異なる、“ゆるい”ものであったことがわかりました。
“ゆるい”っていうよりも、もともと日本人の本当の姿は性に対して相当大らかだったんじゃないか、と思いました。
そういう日本人の考え方、生き方のエッセンスは今の時代にもあった方が世の中もっと楽観的になっていいんじゃないか、などとも考えましたよ。
別にフリーセックス万歳って言っているわけじゃないですよ。
何のために生きているか、ってことに妙に厳格過ぎるんじゃないかってことを言っているのです。
というわけで、非常におもしろく最後まで読みました。
ここに書いたことは、この本のほんの一部分です。興味を持たれた方はぜひ読んでみてください。まだまだ日本の性についての歴史上の面白い話が満載です。
【Now Playing】 ラジオ深夜便 / 後藤繁榮 ( NHK-AM )
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