落語家がなぜ『噺』を忘れないのかという本
『落語家はなぜ噺を忘れないのか/柳家花緑著(角川新書)』という本を読みました。
私も落語をよく聞きますが、たしかに「なぜ忘れないんだろう」と思うことがあります。
短くても10分、長ければ40分くらいにもなる様々なネタを落語家は高座でたった一人、誰の援護もなく語り切ります。
いつも思います、たいしたもんだ。
著者の柳家花緑師匠は、あの人間国宝・故柳家小さん師匠の孫にあたります。
その花緑さんがどうやってネタを自分のものにしていったかが書かれているのがこの本です。
この本に書かれている家禄さんの持ちネタは145本。
うち、いつでも高座にかけられるネタは24本、二~五回さらえば高座にかけられるネタは72本、高座にかけたことはあるが、作り直す必要があるネタは49本だそうです。
家禄さんはネタを覚えるときには一度全てノートに一語一句もらさず稽古してもらったとおり書き出しています。
そして、まずはそれを読み、何度もさらって身体に覚えさせていくのですが、文中には、そっくりそのままいくのか、それともギャグを交えたり、あるときはセリフを、またストーリーそのものに変化をもたらせたりしながら苦しんでいる様子が書かれています。
前座、ふたつ目までは師匠や先輩噺家から厳しいことも言われ、迷いに迷いながら自分の噺を作っていくのですが、祖父が師匠でしかも人間国宝となると、並みの噺家のようなわけにも行かず、突き当たる壁は大きなものであったろうと想像されます。
そんな家禄さんの特徴をこの本を読んだ段階で書くとすると、小三治師匠や、並み居る大師匠からの突き放されるような小言に対しても、落ち込むのはわずかな時間で、すぐに前向きにとらえ、自らの落語を作り上げるために色々な方法を考え出し、「家禄の落語」をより良くするために突き進んでいくところです。
高座から降りてすぐにガツンと言われても、「ではどうすればいいのでしょう」と食い下がる様子も書かれていて、先輩からは「大師匠にその口のきき方はまずいぞ」と言われるのですが、それでもいくのです。凄い人だとあらためて思いました。
まだ生で家禄師匠の噺を聞いたことがないのですが、ぜひ寄席に行って聞いてみたいと思いました。
巻末に「笠碁」という演目の全文収録が付いております。
我と思わん方は一席チャレンジしてみませんか!(#^.^#)
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