あきらめない心 -心臓外科医は命をつなぐ- を読んだ
『あきらめない心 -心臓外科医は命をつなぐ-/天野篤著(新潮文庫)』を読みました。
天野先生は、記憶にある方もいらっしゃるでしょう、2012年に天皇陛下の心臓バイパス手術を執刀された方です。
この本が出版された時点で、執刀例は7,200件にも及び、98%という高い成功率を保持しています。
その先生が書いた本というだけで読んでみたくなったのです。
この本によれば、天野先生は意外とエリート街道まっしぐらではありまんせでした。
大学には二浪しているし、卒業後は多くの人が選ぶ大学病院に残る道を選ばず、民間の病院でそれこそ武者修行的に心臓外科という先生にとっては命懸けの天職に就きます。
先生の性格上、“あつれき”も多々あったことが書かれていましたし、その際には去って行った人も多かったようです。ようするにただの成功物語ではなく、人間的な部分も自らクローズアップしていると感じました。
そして、天皇陛下の手術の担当医となり、実際の手術の時の様子が、“開いて”バイパス用の血管を見つけて「あった、あった」と思わず心の中で言ってしまうような場面まで書かれていて驚きました。
こういうことまで書いていいのか、というか、先生にはむしろ、そういうことを読者始め多くの人に知ってほしいという気持ちがあって書かれているのだと思いました。
そして、いかにきつい仕事になっても、患者さんにとって一番よい状況になるようにスタッフにも求めている姿に感銘を受けました。今、私自身が仕事に対する考え方をかなり変えているのですが、この本を読んで少し逆戻りしようかとも思ったのです。
私も10年くらい前に心臓の手術を受けましたが、担当の先生は当時県内でも有名な先生でした。
そしてその先生もやはり、自分のことなんかよりも患者のことを第一に考え、手術の数日前に診察室ではなく、あかるい部屋でモニターを使いながら、具体的な手術の内容を説明してくれ、自分がその時点で執刀した3,000例について失敗した例も正直にどんな失敗だったかも伝えてくれ、先生自身の今の技量であれば十分安心してもらえる手術だと力強く語ってくれました。
そのときはうれしさを感じ、手術への最終的な決断をすることができたのでした。
そのときから、特に心臓外科というものについて、ある種強い興味を抱いていたのですが、この本を読んで氷解するようなことがたくさんありました。
これから大きな手術を受けるかもしれない方や、自ら踏ん切りのつかない方、最後の一押しをしてほしい方などには勇気を与えられるような本だと思いました。
筆致も力強く、スピード感もあり、わかりやすく、正直な内容で、読んでみて何かを得ることがてぎるものだと思いました。
【Now Playing】 深層深入り 虎ノ門ニュース / 武田邦彦、須田慎一郎 ( YouTube )
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