荒木陽子さんの「愛情生活」を読んだ
『愛情生活/荒木陽子著(角川文庫)』という本を読みました。
この本は1977年に刊行されたものに写真を一部増補してこの2017年に文庫化したものです。20年ぶりに再度日の目を見た“傑作エッセイ”と言ってもよいものだと思いました。
荒木陽子さんは、1971年にあの写真家のアラーキーこと荒木経惟さんと結婚し、1990年1月に子宮肉腫のため死去。
もちろん荒木さんの写真集には登場するし、荒木さんの写真と共にコラボして陽子さんの文も載せられている作品も出ています。
私はアラーキーの写真には、いろいろなところで出会い、目にし、様々な衝撃を受けてきましたが、その奥さん、陽子さんがどういう方だったのかは、時代的にもちょっとずれているためよく存じ上げませんでした。
しかし、この陽子さんのエッセイを読んで、単にアラーキーと夫婦生活を送ってきた配偶者というだけではなくて、この人自体が芸術的な生き方をした人だったのだな、と思いました。
映画に音楽に、そしてお洒落して出掛けることに、出掛けた先の料理に、旅行先で見たもの、出会ったもの、肌に感じたもの・・それらが陽子さんの目に、文に掛かれば、キラキラとリアルに動き出し、エッセイという文章からこれほど生き生きと、しかも情報量多く感じ取れたことはかつてなかったように思います。
だから、こうしてブログを書き続ける自分にも、とても勉強になりました。
特に過去の旅行先でのお店の様子や登場してきた人、細部に渡ることが子細に渡って書き記されていて、その記憶力にも驚きました。
私もそういうことを書くことがありますが、いつも曖昧な部分が多く、これについては特に心に残りました。子細な記憶と、記述がよりいっそう文章をリアルに、生き生きとさせるものだと痛切に感じました。
また、陽子さんが、例えば映画を見たときに、ストーリーそのものよりも、着ているものや、表情、登場人物に対する自分の考え方などについてストレートに書かれているのにも、俯瞰的でなく、自分の感性にピンポイントで見ていて、これもまた心に残りました。だから、その文章自体も読者の心に残るのだと、つくづく感じたのです。
最後に、陽子さんはエロいっ!!
時に、女が持つエロティックな部分が、ねっとりと、ヌメッと現われる文があるのですが、それがまたたまらん!
アラーキーが惚れたんだからそういうことでしょう。アラーキーも時にはタジタジとなっておりました(^_^;)
中身の濃い、しかも女性の感性の素晴らしさにあらためて驚きを感じた名エッセイでした。
【Now Playing】 Almost Hear You Sigh / The Rolling Stones ( Rock )
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