角田光代さんの「月と雷」を読んだ
『月と雷/角田光代著(中公文庫)』を読みました。
もうねぇ、疲れたし、イヤになったし、あきれたし、気分は悪くなったしで体力と気力を失う小説でした。
途中で何度か投げだそうとしたのですが、先が気になってさぁ・・(^_^;)
主人公の男は、小さい頃から母親に連れられ、男から男の家を渡り歩く(男を求めるのでなく、ねぐらを求め)母の子としてくっついていく生活。
母親は男に世話になっても家事も何もせず、ただグタグタしているだけ、主人公の子供時代には学校に行こうが行くまいが関係なく、飯はつくらず、そこいらへんに転がっている菓子でも食べて暮らす・・。
家の中はゴミだらけ、散らかり放題。
男とくっついて相手の妻が家を出て行ったところに主人公である子供と共に上がり込み、残された先方の女の子と共同生活していた時代もあった。
その女の子を大人になってから思い出し、訪ねていく主人公。
そこで婚約者がいるのにその女の子とその日に関係を持ち、子供ができてしまう。
主人公は大人になってモテモテだが、「あんたには人間の生活ができない」と次から次へと女は逃げていく。
何かに夢中になったり、情熱を傾けたり、真面目に仕事をするなんてこと考えたこともなく、そういう考えがあることも知らない。やる気になったこともないし、「やる気」という言葉の意味なんて考えたこともない。
そんな登場人物しか出て来ない・・。
「きょう、なんとか乗り切れば、明日になる」それが主人公の母親の唯一の思考。
主人公の男が子供の時以来に訪ねて来て困惑したかつて一緒に暮らしていた女の子はもう大人になっていたが、主人公の男を見たそのとき「ああ、不幸に追いつかれてしまった」と脅えます。・・で、そのとおりになった。
ほとんどまったく救いようのない物語と、登場人物全て。
どこに行っても光は見当たらず、かつて主人公の母に追い出された女も読み進んで行くと、まともな生活をしているのかと思わせておいて、これまた数奇な運命をたどっている。
主要登場人物の心の中から語っている場面がそれぞれにあるが、その心の中は荒廃し、枯れ果て、バサバサに渇いている。
実は以前の職場で毎日、上記のような人達と数十人単位で会うことがあった。
その人達の感覚が皮膚感覚的にわかった。
収穫というか、この小説を読んで感じたことはそれだけだった。
でも、何か・・奥の深いところまで入って行って、何かを見つけたような気がした。
【Now Playing】 スピリタスのご紹介 / うめやぶろぐ ( YouTube )
« 最近のクルマ、特にデザインを見ていて | トップページ | 宙組「神々の土地/クラシカル ビジュー」再度の観劇 »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 古本の頁を繰っていて見つけるもの(2022.01.23)
- 中学生時代から今に至るまで、「レコード盤を貸してくれ」「CDを貸してくれ」「本を貸してくれ」と言われる話。(2021.12.21)
- 「日本人も知らなかったニッポン/桐谷エリザベス」を読みました。(2021.10.03)
- 「小林信彦 萩本欽一 ふたりの笑タイム -名喜劇人たちの横顔・素顔・舞台裏-」を読みました。(2021.09.28)
- 坪内祐三の「最後の人声天語」を読んだ。(2021.09.25)
コメント