星組「ベルリン、わが愛/ブーケド・タカラヅカ」を見てきた
宝塚歌劇・星組東京公演「ベルリン、わが愛(ミュージカル)/ブーケド・タカラヅカ(タカラヅカレビュー90周年)」を観劇してきました。
紅ゆずる(くれない・ゆずる)さん、綺咲愛里(きさき・あいり)さんの新トップコンビになってからの本公演は大作「スカーレット・ピンパーネル」以来の観劇となりました。
ミュージカルの「ベルリンわが愛」については、ストーリーがちょっと一本調子過ぎやしないか、という印象でした。
映画制作の過程にナチスが介入してきて波乱らしきものはあるのですが、もうひとつドラマチックな展開にならず、しかも主演二人が激しく愛し合うというのでもなく、中心となるストーリーに「芯」の太さが感じられませんでした。
脚本にそこまで書かれていないのだから仕方ないのですが、主役の紅さん演じる抜擢された新米映画監督が、どうしてそこまで映画に懸けているのかがよく見えませんでした。艱難辛苦に立ち向かうにしても、その辺がよく観客側に見えてこないと大きな共感を呼ぶことはなかなか難しいと思いました。
相手役の綺咲さん演じる、ひょんなことからその才能を見出される女優にしても、その生い立ちなどの過去や、自らの生き方がどういうものか、ユダヤ人として迫害されることに対する反骨心や、見栄を切るような態度表明もいまいち表現されておらず、中途半端な感じでした。
なので、ラストの主演二人がベルリンを離れるシーンについても、より大きな感動が得られなかったように感じました。
今後、二人が、そして星組がどうこの作品を作り上げていくか、けっこう大変なんじゃないか、と思いました。
これは、と目立ったのは、音波みのり(おとは・みのり)さんの、ちょっとずるく、悪賢い大人の女(女優)役です。
あの可愛い音波さんが・・と思うくらい、すっかり大人の女を演じられるようになっていて、感心しました。
もう一人は専科からの凪七瑠海(なぎな・るうみ)さん。
久しぶりにお目に掛かりましたが、相変わらずの浮き世離れしていると感じるくらいのきれいな男役ぶり、きりっとした立ち姿でした。
これも脚本にそこまで深く書かれていないから仕方ないと思いますが、もうひとつ人間像が表面的な部分しか見えてこない感じでした。もっと悪く、もっと人間の奥底に潜んでいる自己愛的な感情などが出てくると良かったのに、とも思いましたが・・。
ショーの方は、タカラヅカ・レビューの90周年を記念するもので、割とクラシカルな印象の衣裳、ダンス、曲などが多く、“おとなしめ”の舞台でした。
でも、こういうのって星組にはちょっと不向きかも。
柚希さん(柚希礼音/ゆずき・れおん)がいた頃のようなガンガンくるような、体育会系なショーの方が星組には似合うと思うのです。
どちらかというと、花組(宙組でもOKかな)向きのような気がしました。
ダンスなども細かいことをいうとなんですが、けっこうバラけていたように思いましたよ。
銀橋から捌けていく時に七海ひろき(ななみ・ひろき)さんまでもが、捌ける寸前のところで粗雑な動きをしていたのが目につきました。
全体にもっと締め直す必要がある、と感じました。他組に比べると明らかに今ひとつな印象であることは拭いきれない事実です。
まだ今作はこれから三週間も公演期間がありますから、きっと終盤にはかなり良くなっていると思います。
世間の評判は予備知識を入れるとこのブログの書き込みが引っ張られるといけいないので耳にしておりませんが、“絶賛”ということはないだろうな、というのが今回の感想でした。
【Now Playing】 雪景色 / 遠TONE音 ( InstrumentalMusic )
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