江本孟紀さんの「野球バカは死なず」を読みました
『野球バカは死なず/江本孟紀著(文春新書)』を読みました。
2017年に古稀を迎え、そんなときに「胃がん」を宣告された江本さん。
好き勝手に生きてきた自らの人生も潮時かもしれん、と、そんなことを考えたときに回顧録の話が来て、この本を人生の区切りとして書き留めることになったと書かれていました。
この本を読んでみて、江本さんの人生はまさに波瀾万丈というか、挫折の連続、そしてそんなときには必ず江本さんに声をかけ、助けてくれる人が現われる・・そして11年おきくらいに人生の転機がやってくるのでした。
高知商業のエースとして甲子園出場が決定していたにもかかわらず、部員の不祥事で出場辞退。スタンドで開会式を見ることになり、一生分の涙を流した話。
目標を失い、学校をさぼり、不良みたいな生活をしていた頃。
その後男気のある鬼のような監督がやってきて、また江本さんは野球をやることに。
立教大学にテストで入学が決定したにもかかわらず、またとある事件から“フイ”に、さらに偶然から法大野球部に。
でも、そこでの監督とのいさかいから、エース級だったのに試合に出してもらえない。
ドラフトにもかからない。
社会人野球の熊谷組でのエピソードや、プロの東映フライヤーズにドラフト外で入る話。
さらに南海、阪神と渡り歩き、あの「ベンチがアホやから・・」発言に。
でも、江本さんご本人が何度も言ってきていますが、そのような発言は実際には無かった。
その後は映画、ドラマに出たり、ミュージカルやオペラ、野球解説に、政治家、それぞれの時期に聞いて驚く事実が満載!・・びっくりしている間に読了( ̄O ̄;)
ものすごく読み応えのある本でした。
数々の恩人が江本さん最大のピンチになるとなぜか現われ、ギリギリのところから江本さんを助け、支え、再び輝かせる。まるで小説を読んでいるようでした。
中でも印象に残った言葉は、「一流の人は、たとえば野球選手なら、3割を打ち、30ホーマーなど立派な自分の記録を残すが、自分のためだけ、いい家を建てたりもするが、そこまで。自分のことだけこなすが、超一流は周囲にいる選手などにも目をかけ、その選手が浮かび上がれるように計らいながら、さらに自分も立派な記録を残す。」。
そんなことをおっしゃっていて、そんな一人が南海ホークス時代の監督だった野村克也さんだという。
うまく選手個々の特徴、特性を生かして、その選手が飛躍できるように引っ張って行く姿の描写が何度も出て来て、感心するばかり。
新人として東映に入ったときに、最初にやったのが、バッティング・ピッチャーで、ビビりまくり、まったくストライクが入らず、大杉さんや白さんという主軸打者にそれを“カンスケ”に怒られ、しょげ返っていると、張本さんがバッターボックスに入り、どんなくそボールも打ってくれ、やがてストライクが入るようになり、当時既に大打者だった張本さんの新人に対する心づかいに涙が出るほど感謝する話などもありました。
張本さんが、江本さんが入団したその日に自分の部屋に呼び、直情径行だという噂を聞いたらしい張本さん、プロとしての心構えを江本さんに伝えた後、お菓子をたくさん持たせてくれた話もありました。チームの人達は「あの張本さんが、お菓子を?・・考えられん」と驚いたという。
そんなエピソードが満載で、泣いたり、笑ったり、怒ったり、忙しい本でしたが、とてもいい本でした。野球関係の本としてだけでなく、人生の調味料みたいな味のある本でした。
【Now Playing】 Let It Be / The Beatles ( Rock )
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