「ぼくは眠れない」を読んだ
『ぼくは眠れない/椎名誠著(新潮新書)』を読んだ。
帯には『35年間、不眠症。』と力強く?!書かれている・・。
あの椎名さんが不眠症だったのか、と驚きました。
世界中の過酷な地に行ったり、日本全国でも釣をしたり、キャンプをしたり、カヌーに乗ったり、浮き球ベースボール大会をやったり、ラーメンすすったり(^^;)、およそ「不眠症」という言葉が似合わないことこの上ないような人と思っていたのですが・・。
でも、本当だった。
ブックオフでこの本を見つけ、パラパラと頁をめくってみたときの衝撃はけっこう強かった。
会社員だった頃の椎名さんのガシガシ仕事をして、夜は人と酒を飲み、家に帰ってくると、“がお~っ”って寝てしまう椎名さんから、物書きとして独立し、フリーランスとなり、いかにも作家っぽい夜更かしの生活が当たり前になってしまった頃から不眠の悩みが始まっていました。
いっきに倒れ込むように寝てしまおうと、酒を飲んでから寝るという・・椎名さんも書いているが、実は午前二時頃に起きてしまう要因となるそれがますます問題を根深いものにしていくのでした。
そういえば、かつて読んだ椎名さんの本の中にわずかではあるが、ダイビング中の閉所恐怖症の話や、ひとつのことが気になると、トコトン考えてしまうような様子、一歩間違えば「鬱」一直線みたいな、“引き金”のようなものを感じたエピソードがありました。
この本を読んでみると、精神的に自分を追い詰めていく椎名さんが垣間見えてきます。
それが、特に外国での豪快な旅をする椎名さんとかけ離れたイメージのため、読者である私が受ける衝撃はかなりのものでした。
外国人と日本人の睡眠の比較や、どんな動物がどのくらいの時間眠っているのか、また睡眠について書かれた国内外の書籍から椎名さんが考えたことなど、これを書いている時点でもまだ「不眠症」に苦しむ椎名さんが、光明を見いだそうとしてもがく様子がうかがえます。
それから、医師から処方された睡眠薬についても書かれていて、でもそれが問題の根本的な解決にはならないということも書かれています。
問題は、現代に生きる人間にとって(文明社会に生きると言い換えてもよい)不眠症となる要因があちこちに、其処此処に、自分を取り巻くような状況になっているということでしょうか。
要するに「文明社会病」みたいなものなのかもしれません。
椎名さんの意外な一面を見ることになったこの本、不眠症について深く入り込んで探求していくと、現代の人間が抱える悩みが見えてくるというものでした。
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