映画「あいあい傘」を見てきました。
映画『あいあい傘/2018年・日本 監督:詫間孝行 出演:倉科カナ、市原隼人、原田知世、立川談春、高橋メアリージュン、やべきょうすけ、入山杏奈、トミーズ雅、他』を見てきました。
監督がラジオ出演して、「いい話だから見てください」とおっしゃっていましたが、ほんとうに“いい話”でした。
主演の倉科カナさんは、25年間自分と母親を放っていた父を探しに父(立川談春さん)の住む町を訪ねて来ます。
父の談春さんは、25年前に、幸せな家庭を妻と娘の倉科カナさんと築いていたが、ある日会社の不祥事で、社長秘書をしていたため、全てを自分の責任として背負って遺書を書いて死んでくれと社長にひざまずいて頼まれ、「家族の面倒は会社がみるから」と、死なねばならない状況に追い込まれたのでした。
雨のそぼ降る神社わきの山林で死のうとしたところに傘をさしかけたのが原田知世さんでした。神社の近くで食堂を営んでいる女性でした。
命を助けられ、それから25年間、知世さんの娘を実の娘同様に可愛がり、育て、籍も入れぬまま談春さんは別れたきりになった妻と娘のことも思い、毎日神社でかつて住んでいた横浜の方向に祈って過してきたのでした。
倉科さんは、父の周囲の人間から様子を探り始め、想像と異なり、静かに、そして平凡に、見た目は幸せに暮らしている父にやがて怒りを爆発させます。
そのときには、父以外の周囲の人達にも素性がバレてしまっているのですが、その際の演技は倉科さん、一世一代の迫真の演技を見せてくれました。素晴らしかった。
でも、どうみても内縁の妻である原田知世さんも、周囲の人達も皆いい人ばかり、逆に倉科さんのことをみんなで心配するという・・こういう物語としては意外な展開でした。
皆がみな、人生をつらくても精一杯生きて、そして家族や、周りの人達のことを考え、思い、やさしく生きて行く、その姿にもうこの時点で涙腺やばい状況です。
最後、25年ぶりの再会をお祭りの夜の幻想的な映像の中で果たす父と娘のあまりにもいい演技に、ついに私は嗚咽してしまいました。
はばかるところなく、もう泣きまくり、ハンカチは“ぐしょぐしょ”です。
今の世の中、殺伐としたテーマの映画、殴る蹴るの暴力、そして破壊、恨み辛み、怨念、邪悪な者を礼賛するかのような妙な話など、私の大嫌いなものが多いのですが、久しぶりに心が浄化されたようでした。
“いい人ばかり”が出てくるなんて・・という人もいるんじゃないかと思いますが、主人公の倉科さんの哀しみや、怒りがあふれてくる中、談春さんの住む町の人たちが、倉科さんをあたたかく迎え、心配する様子に胸がじんとなり、自分もささやかだが、静かに、そして力強く生きて行きたい、とあらためて思ったのでした。
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