「井上ひさし ベスト・エッセイ」を読みました。
『井上ひさし ベスト・エッセイ/井上ひさし著・井上ユリ編(ちくま文庫)』を読みました。
井上さんの数あるエッセイ作品の中から奥さんの井上ユリさんが厳選したエッセイ集です。
内容は多岐にわたり、文学のことから人、ことば、演劇、笑い、家族その他いろいろで、さまざまなジャンルが盛り込まれているので飽きることがないというか、読んでいるこちらもチャンネルを切り替えていかないとついて行けないのです。
アットランダムに気になったものをあげてみると・・。
シェイクスピアのハムレットを五群・十一の筋書きでまとめられたものだと分析し、一本で十一の物語を堪能できるのだから面白いのは当たり前だと書かれていて、日本のシェイクスピア、言葉の魔術師といわれる井上さん、そのシェイクスピアの筋書きの束ね方に敬服していました。
私もシェイクスピア大好きですが、なるほどなるほどと、その分析に感心してしまいました。
若い頃に下宿先のアパートが改修工事をすることになり、一ヶ月ほど部屋を空けてくれと言われ、行くあてもないのにそこを出て、結局、NHKに入り込み、職員の宿直室やその他の部屋を勝手に使い、仕事は執務室の部長のデスクで夜に行ったり、洗濯物を執務室で干したり、それを取り込み忘れて眠りこけ、朝NHKの部長に起こされたりと(^_^;)、豪快な話題もありました。
それにしても一ヶ月もよくNHKの建物の中にいて過ごせたものだと思います。
浅草のストリップ小屋で働いていたときの話も興味深かった。
井上さんは、芝居とストリップの二本立てで出来ていた当時の小屋で働いていて、そこで芝居をしていたのは、渥美清、谷幹一、長門勇、関敬六、和田平助ら、錚々たるメンツで、台本作家が逃げてしまった時には役者自ら筋書きを膝つき合わせてつくり、しかも舞台は“生もの”、客の反応によってアドリブの応酬となり、自分の得意な展開に持って行こうとしながら客を爆笑させる渥美さん他の技に驚きます。
井上さんの話はどれも面白かったが、もし自分の身近にこんな人がいたら絶対に近づかないだろうと思いました。
きっと面倒くさい人だよぉ…(^_^;)
辞書を買ってきただけでも、この本に書かれているが、ものすごく面倒な儀式(作業)を経ないと使うところまでいかない。
ふつうの書籍を買ってきたときにも箱を捨てたりいろいろと大変です、それに調べ物をするときの“突っ込み方”も鋭く深く、それを情報整理する方法についてもこだわりが異常なくらいのものがあり、その辺は読んでいてこちらも疲れました。
もっと楽に生きればいいのに、と思いましたが、この時代の人は何と言われても自分のやり方、考えを曲げないのが持ち味です。いやもう疲れましたよ(^^;)
バラエティに富んだ内容のエッセイ、読み応えがありました。
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