「管見妄語 知れば知るほど/藤原正彦」を読んだ。
『管見妄語 知れば知るほど/藤原正彦著(新潮文庫)』を読みました。
著者は数学者であるが、知性とユーモアをふりかけ、数学者らしからぬ情緒的な部分も感じさせつつ本書のようなエッセイを書いている。
また、それぞれのエッセイのテーマが多岐に渡っていて、ジャーナリスティックなものから、世俗的な話題、家族の話題、国外に出かけたときのエピソード、などなどが書かれていて、著者の知識と“懐”の深さに驚いたのでした。
さらに著者はあまり世間的には多数派のいない意見を言っても、これを言ったら各方面から非難されることは必至だ、というようなことについても、遠慮会釈なしで、しかもちっともビビっていない、かといって人間的に“あっちの世界”まで行ってしまったような奇人・変人でもない、そこがこの人のエッセイの魅力になっているのかもしれないと思いました。
小泉構造改革時の「郵政民営化」についても、アメリカが日本に蓄積されている個人の金融資産を日本のために使わせないようにするためのものだ、と説き、それこそ誰にでもわかるように噛んで砕いて「そうだったのか」と思わせる説得力と筆力があります。
何度読んでも難しくてわからないようなことを書いている人っていうのは、結局自分もわかっていないことを分かった風に書いているだけだと常日頃感じている私には、藤原氏の書きっぷりは見事だと思いました。
ドイツ、メルケル首相の難民大量受け入れや、英国のEC離脱についても、その分析は面白い。
どこからか他人の意見を拝借してきて、適当に自己の理論をふりかけて作ったものではなく、話の組み立ては平易なうえに思わず納得してしまうものでした。
かと思えば、1960年代の「流行歌」に関する思い出などは、とても情緒的で、心にじんと沁みるような話になっている。
話題の広さも、広範囲で、しかも自由な感じです。
この本は楽しめるぞ、と思いながら最後まで読んでしまいました。
過去の社会的・政治的な出来事についても、あらためて考えさせられることが多々あり、偏った、あるいは自らの保身のために“曲げて”記事を書いているようなメディアに一杯食わせられないようにしよう・・などとも思ったのでした。
« 内田百閒の「大貧帳」を読んだ。 | トップページ | 富里に「椎名豊 Special Trio 2019 & Big Band コンサート」を聞きに行ってきました。 »
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 俳句を詠んでみる_0480【 ダリアに訊いてみた 平和ってあるの 】(2025.06.28)
- 「役員室午後三時/城山三郎」を読みました。(2025.06.08)
- 「風塵抄二/司馬遼太郎」を読みました。(2025.05.15)
- 俳句を詠んでみる_0415【 春愁(はるうれい) 乱高下 空虚に伝ふ 】(2025.04.13)
- 俳句を詠んでみる_0410【頑愚なディールに 揺すられ 散る桜 】(2025.04.08)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 古本の頁を繰っていて見つけるもの(2022.01.23)
- 中学生時代から今に至るまで、「レコード盤を貸してくれ」「CDを貸してくれ」「本を貸してくれ」と言われる話。(2021.12.21)
- 「日本人も知らなかったニッポン/桐谷エリザベス」を読みました。(2021.10.03)
- 「小林信彦 萩本欽一 ふたりの笑タイム -名喜劇人たちの横顔・素顔・舞台裏-」を読みました。(2021.09.28)
- 坪内祐三の「最後の人声天語」を読んだ。(2021.09.25)
「社会の出来事」カテゴリの記事
- 俳句を詠んでみる_0480【 ダリアに訊いてみた 平和ってあるの 】(2025.06.28)
- 俳句を詠んでみる_0464【 世の不穏に 安居(あんご)し 句と対峙する 】(2025.06.11)
- 俳句を詠んでみる_0437【 春惜む 釣石段に津波跡 】(2025.05.12)
- 『「意識高い系」の研究/古谷経衡』を読みました。(2025.04.02)
- 俳句を詠んでみる_0388【 駅の時計 消えゆく 斑雪(はだれ)の如し 】(2025.03.15)
« 内田百閒の「大貧帳」を読んだ。 | トップページ | 富里に「椎名豊 Special Trio 2019 & Big Band コンサート」を聞きに行ってきました。 »
コメント