城山三郎さんの「そうか、もう君はいないのか」を読みました。
『そうか、もう君はいないのか/城山三郎著(新潮文庫)』を読みました。
城山さんは、1957年に『輸出』で文学界新人賞、翌年に『総会屋錦城』で直木賞を受賞した経済小説の開拓者です。
そんな城山さんが先立たれた奥さんとの終戦間もない頃の出会いから、結婚し大学講師をしながら作家を志した頃、お二人の家庭を築いていく様子などを書かれ、没後に発見された未完の原稿を本にしたものです。
それまでの夫妻の仲の良い生活、微笑ましいエピソード、奥さんの天真爛漫な様子が楽しく読めただけに、奥さんに病の影が忍び寄り、病に倒れ、別れがやってくる終盤には、奥さんの子供達に対するあまりにも愉快な振る舞いが笑えるだけに、余計哀しく、私も涙なしには読めませんでした。
喧嘩もせずに様々な困難・苦労を苦労ともせずに過していくお二人の姿はうらやましいくらいの夫婦像です。
今では考えられないような時代的背景も描かれていますが、それもすんなり理解して読めました。
要するに時代の厳しさや困難も二人には“艱難辛苦”みたいにはならずに、支え合って夫婦の生活を築いているのです。だから希望を持って前に少しずつ進んでいく姿が、読んでいるこちらにも楽しく見えるのです。
最後にこの原稿を発見した娘さんの手記も載っているのですが、夫婦としても家族としても素敵な人達であったことがよくわかりました。
とてもいい本でした。
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