「若山牧水随筆集」を読みました。
『若山牧水随筆集/若山牧水著(講談社文芸文庫)』を読みました。
牧水の短歌には、過去ふれているようでふれてこなかったのですが、この随筆集の中でも多くの作品が紹介され、私にはとても“ふれてくる”というか、心にひびくものがありました。
そしてこの随筆がまた絶妙な素朴さと、人間の“性”というか、“業”というか、牧水そのものがよく描かれていて、とてもいい本に出会ったと思いました。
また、牧水は草鞋を履いてかなりの遠距離を旅します。
山野をめぐり、さまざまな村たずね、宿坊のようなところにも滞在したり、いろいろな人との出会いや、事件も起こります。
それらが随筆の中で実に自然体な文章で書かれていて、そのうまさには舌を巻きました。
特に自然の表現は卓越したものがあり、明治・大正の頃の風景などが目に浮かぶようでした。
とても気になった部分もありました。
自然に生えたままのとりどりの樹の立ち並んだ姿がありがたい。
理屈ではない、森が断ゆれば自ずと水が涸るるであろう。
水の無い自然、想うだにも耐え難いことだ。
水はまったくの自然の間に流るる血管である。
これあって初めて自然が活きて来る。山に野に魂が動いて来る。
想え、水の無い自然の如何ばかり露骨にして荒涼たるものであるかを。
明治・大正期に自然破壊に対する警告を発しています。
このあいだ、私が今回のウイルス感染拡大の一因は自然を破壊しつつ開発していく人間のせいではないかと書きましたが、上記牧水の文にもそのようなことが一部書かれているのではないかと感じたのです。
それから話題はお酒にうつります。
牧水はうかがい知ってはいたのですが、ものすごい“お酒好き”で、旅の朝にもお酒を朝食と共に所望しています。
酒なくして牧水の人生はありえない、自分でも書いていますが、酒を飲む牧水の風情もなかなかに愉しく面白いものでした。
牧水は、「生」の歓びを感ずる時は、つまり自己を感ずる時だとおもう、と言い。
自己にぴったりと逢着するか、或はしみじみと自己を噛み味っている時かだろうとおもう。
とも言っています。
歌の出来る時がそれに当たる様である。それもうまく出来て呉れる時である。
と・・。
私もこのブログで自己を感じ、書いているときがもっとも「生」を感じているときかもしれない、と思いました。
これからも丁寧に書いていきます。
【Now Playing】 DJ壇密のSM / 壇密、大江裕 ( NHK-AMラジオ )
« 連休中日になって。 | トップページ | 心にゆとりを »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 古本の頁を繰っていて見つけるもの(2022.01.23)
- 中学生時代から今に至るまで、「レコード盤を貸してくれ」「CDを貸してくれ」「本を貸してくれ」と言われる話。(2021.12.21)
- 「日本人も知らなかったニッポン/桐谷エリザベス」を読みました。(2021.10.03)
- 「小林信彦 萩本欽一 ふたりの笑タイム -名喜劇人たちの横顔・素顔・舞台裏-」を読みました。(2021.09.28)
- 坪内祐三の「最後の人声天語」を読んだ。(2021.09.25)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 俳句を詠んでみる_0473【 白南風(しろはえ)が 寶来(ほうらい)揺らし 幸来たる 】(2025.06.21)
- 俳句を詠んでみる_0454【 夏始 社に銅葺く 槌音 】(2025.05.31)
- コーヒー店で開かれている絵画展示を見に行きました。(2025.05.25)
- 俳句を詠んでみる_0442【 前梅雨(まえづゆ)の 黄金山 涌谷に訪ね 】(2025.05.17)
- 「日本語の美/ドナルド・キーン」を読みました。(2025.05.17)
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 「日本列島なぞふしぎ旅 中国・四国編/山本鉱太郎」を読みました。(2025.07.14)
- 俳句を詠んでみる_0495【 緑蔭の 石段登り 二宮へ 】(2025.07.13)
- 俳句を詠んでみる_0487【 始まりは 赤坂茶寮 春の宵 】(2025.07.05)
- 「あやしい探検隊 焚火発見伝/椎名誠・林政明」を読みました。(2025.06.24)
- 俳句を詠んでみる_0470【 夏の空見て 木の葉パン食べる午後 】(2025.06.17)
「お酒」カテゴリの記事
- 俳句を詠んでみる_0494【 夏の夕 冷えた麦酒に キーマカレー 】(2025.07.12)
- 俳句を詠んでみる_0424【 蒲公英の絮(たんぽぽのわた)のよう 軽き燗酒 】(2025.04.26)
- 俳句を詠んでみる0407【 珈琲牛乳に 溶けてく 泡盛 】(2025.04.05)
- 「思えばたくさん呑んできた/椎名誠」を読みました。(2024.12.09)
- 「午後三時にビールを -酒場作品集-中央公論社編」(2024.10.20)
コメント