佐野洋子さんの「私はそうは思わない」を読みました。
『私はそうは思わない/佐野洋子著(ちくま文庫)』を読みました。
1987年に刊行されたものを1996年に文庫化したものです。
佐野さんの本を読むと、ちょっと“おっかない”くらいの突破力でずんずんと我が道を突き進む感じがするのですが、この割と古い本では、佐野さんの“か弱い”部分や、子供のような心が見え隠れする部分、ものすごく強気になったかと思うと、自分の子供から指摘されて、ちょっと引っ込んだりするところもあったりして、でもこれが人の姿なんじゃないかと思いました。
人には、いろいろな側面があって、私も含め、誰もがあるときは明るく突き進めたり、哀しくてやりきれなくなるときもあります。
だから、この本を読んで、まるごと佐野さんの姿が見えてきたような気がしました。
私がちょっと気になった部分を少し挙げてみます。
男は生きる根拠が自然にはわかっていなくて・・、共通な幻想というか、観念とかいうものを必死で作り上げるのだ、とおっしゃっています。
その枠組みの中で、その枠をくずさない様に、世界中の男が手を結んで戦っているという感じがする、というわけです。
男の私もそう思います。
男は、そんな幻想にすがりつき、特に仕事ではそれだけで一生を終えてしまうことになっていると思います。
幻想がつぶれるのを怖れ、そうならないように、又新しい観念・幻想を絶え間なく作り上げていきます。
科学、哲学、芸術、金儲け、すべてがそんなことになっています。
その究極は、戦争と政治ということでしょう。
佐野さん同様、私も「バカみたい」と思うことが時々あります。特に今、そう感じることが多いです。
もうひとつ、佐野さんはこんなことも書かれています。
男の仕事はすべて「ごっこ」であり、政治も芸術も商売も科学も知力と体力の限りを尽くした遊びである。
しかし女にとって生活は遊びではない。
・・これが男と女がいつの時代も相容れず、すれ違っていくことの要因ではないでしょうか。
というわけで、とても面白かったけど、男の私には、胸に突き刺さるような厳しいことが書かれた本でもありました。
読み応え、ありました。
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