「東京ジャズメモリー/シュート・アロー著」を読みました。
『東京ジャズメモリー/シュート・アロー著(文芸社文庫)』を読みました。
著者は東京出身で、現在は某楽器メーカーに勤務しているサラリーマンとのことです。
ご自身は大学時代にジャズ研に入り、ピアノを弾いていたと書かれていました。
ジャズ関連誌にも連載を持たれ、その他音楽誌、一般誌への寄稿も多数とのこと。
最初、この本を手に取ったときには、東京の有名ジャズ・スポットについて現在開業しているところから、閉店してしまったところなどについて調べ、マスターなどからお話を聞いて、その歴史などを綴ったものなのかと思いました。
でも、そうではなかったのです。
著者は、1962年生まれで、ジャズ喫茶などの環境については私同様“微妙”な時代を生きています。
電化される以前のマイルスや、コルトレーンなどがリアルタイムで活躍していた時代は、せいぜい小学生くらいの年頃だったと思いますので、高校、大学生くらいの時には、ジャズ喫茶その他のスポットについては、存在はしていたと思いますが、最盛期からは時を経ていて、ジャズは「クロスオーバー」とか「フュージョン」などという発展?の仕方をしていた時代だったんじゃないかと思います。
私も、同様で、ロックミュージックを聞いてきて、ジャズを聞きたいと思ったが、いわゆるモダンジャズが聞きたかったのに、16ビートとエレクトリック・ギターばかりが世の中で鳴っていて、「こういうんじゃなかったんだけど、聞きたかったのは・・」と思ったものでした。
著者は、東京に住み、“地の利”で、高校時代からジャズ喫茶に入り浸り、大学時代にはジャズ研に入り、ジャズスポットでアルバイトをしたりして、どんどんジャズの世界に“ハマっ”ていく様子が、さまざまな経験も伴って書かれています。
そこには、本物のトミー・フラナガンや、エルビン・ジョーンズなども登場し、ジャズ界の巨人の演奏を目の当たりにしたときのことが実に臨場感をもって語られています。ここがこの本のいちばんのクライマックスだと思いました。
著者本人に、いろいろな思い出がある店について書いているので、「ここは欠かせないだろう」という東京の有名店についてすべて書かれているわけではありません。
でも、それが若い頃の記憶を文書化しているので逆に「時代感」「そのときの空気」のようなものをより感じさせてくれました。
また貴重な時代の記録も書かれていました。
マイルスが交通事故による活動停止から、「ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン」をひっさげてカムバックし、都庁が建設される前の新宿西口広場で野外コンサートをしたのですが、そのコンサートの様子を“つぶさ”に書かれているのです。
これは事実そのもの、真実が書かれているので、ここも“読みどころ”でした。
1980年代にあった、不思議なジャズ・ブームや、タモリさんのジャズ絡みのテレビ番組のことにもふれています。
“ジャズ好き”にとっては、「教科書的」な他のジャズ本よりも、ずっと面白いものになっていると思います。
“おすすめ”です。ジャズ好きな人にはぜひ読んでもらいたい本でした。
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