「歌集 街樹」を読みました。
『歌集 街樹/秋葉四郎著(短歌新聞社)』を読みました。
今年に入り、古書店で見つけた「房総のうたびと」という本に「秋葉四郎」という歌人の名を見つけ、それが私の中学一年のときの担任の先生であったことに気付きました。
中二・三年の担任であった美術の先生とは今だ付き合いがあるので、その先生に秋葉四郎先生のご住所をご存じないかと問い合わせ、秋葉先生にお手紙を差し上げたところから話は始まりました。
私が“本好き”になったきっかけは、中一のときに秋葉先生から放課後「これを読んでごらん」と渡された三冊の本でした。
それからは“本の虫”となりました。
話は戻って、私がお手紙を差し上げた先生は、ご健在なら八十五歳。
既に書きましたが、先生からお便りが届き、先生の歌集と、先生著作の短歌入門まで同封されていました。
さっそく歌集を読んでみました。
この歌集に入っている「歌」は、ちょうど私が先生に教わっていた頃と、その前後数年です。
あの、三十代だった頃の先生の姿を思い浮かべながら、先生の歌に接しました。
秋葉先生の師である、佐藤佐太郎氏に従ってオーストラリア、ニュージーランドや、その後のアラスカ、シンガポール、マレーシア、インド、マニラ、ロスアンゼルス、サンフランシスコの風景様子を描いた歌も印象的でしたが、私には、中学教師時代に書かれたものが衝撃的なくらいの印象を受けました。
奥さまと共働きで教師を勤め、喘息持ちの幼い子供さんを保育園にあずけながらの日々の厳しい現実と対峙するように、真っ正直に書かれた歌に心うたれました。
美しい歌も数ありましたが、でも
〇吾に拠り生きつつ幸ひの薄き妻この玄関の灯のうちにゐる
〇室内に衣類干しつつ頽廃の日々のごとくに妻と勤むる
〇預けつつ育て二歳になりし子が朝はみづから衣服をまとふ
など、あの頃、きちっとスーツを身に着け、颯爽として厳しかった先生からは想像できないものでした。
後記で先生が書かれていたのですが、「あらゆる芸術に功利性はない筈だが、芸術に関係なく人は生きられない。何らかの形で芸術はその人の糧となり生を支えているようである。真詩としての純粋短歌は単なる小文芸にとどまらず、本物の芸術としての力を発揮している。」とあり、まったくの同感を覚えました。
〇折ふしの怒りに自浄作用ありわがからだ軽くなりて歩みつ
先生の「怒り」は、雷鳴のごとくでした。ものすごく恐かった。
あの怒りが自浄作用のひとつだった・・(^^;)のかと思うと、私も先生に何度か自浄作用を起こさせていたのかもしれない…σ(^_^;)
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