「嬉しうて、そして・・・」城山三郎さん、を読んだ。
『嬉しうて、そして・・・/城山三郎著(文春文庫)』を読みました。
これもブックオフで見つけたものですが、ここ数年、城山さんの本を読むといつも意を強くするのです。
起業家や、政治家、作家、その他いろいろな人と城山さんは出会ったり、取材したりしていますが、城山さんご本人の“ブレない”姿勢と、良いと思ったところは取り入れ、また悪いようなところは自らにも問うてみたり、私も生きていくうえで城山さんを見習いたいといつも思うのです。
今回この本を読んで私も同感したり、気になった部分をいくつか取り上げてみます。
〇[政治家についての城山さんの考え方]
一昔前までは、政治家になることは財産を失うことであった。全身全霊を捧げて国事に尽くすという以上、命も財産も捧げて悔いないというのが、本来の政治家の姿勢であった。
・・私もずっとそう思っていましたが、今やそんな政治家ひとりでもいるのかな、と思います。
威張っている人、自分だけは損をしないようにする人、国事よりも自党のこと、自らのことに夢中の人、そんな人ばっかりだと思います。
〇[官僚についても書かれていました]
最高学府を出ていて、その程度の学力、いや常識さえない人間が採用される、という今の仕組みに、根本的な再検討を加えるべきであろう。
彼等は、地位が上がるにつれ、庁内の目も、国民の目も意識しなくなる。彼等の関心は、権力の意向、天下り先周辺の動向だけに向かって行く。こうして、官庁は彼等にとっては、“政治屋”になるための支度部屋でしかなくなり、勤務中も退官後も、一貫して地位利用の日々を送ることになる。
・・まったくもっての同感です。これまたそんな人ばかりが多く、しかもそんな人が地位を上げ、いい思いをしていると思いました。
〇[国民・市民についても書かれていました]
わたしたちは、ただの受け身の僕(しもべ)ではない。わたしたち自身がこの世では主役であり、主権者である。そのことを思い知らせてやるためにも、選択し審判する権利を思う存分、行使することである。
・・私たちには、選挙という権利の行使が用意されているというのに、このあいだの統一地方選第一弾でも投票率は低かった。
国民、市民はこんな気持ちでいるのだ、というのを示さねば、私たちは“なめられる”ばかりなのに。
〇[あとがきに城山さんの娘さん、井上紀子さんが《父から残された宿題》として書かれていた部分]
「書くこと」だけにこだわり、無所属で走り続けた父。その父の残した宿題、それは「当たり前のことが当たり前にできる世であり続けること」。
つまり、自分で考え、自分で判断し、自分で選択できる世の中であること。選択肢があるが故の「悩める」ことの幸せ。
言論・表現の自由があってこその平和。その為に、人間としての品格をもった、成熟した大人になること。
心は少年少女でも、人間は「大人」でなければならない。知らず識らずのうちに恐ろしい世の中になってしまわないように。
・・これは、まさしく“今現在”の日本のことを言っているのではないかと思いました。
『チャットGPT』で政府答弁を作ろうなどと言っていた大臣もつい最近いました。自分で考え、自分で判断して、そして“悩む”ことが人の喜びなのです。ほんとうに情けないと思いつつ報道を聞きました。
言論・表現の自由も現実の今の日本には無言の圧迫、統制が存在していると思いますし、国会の議論を尽くさず、“別立て”で予算を倍加し、兵器を調達していく今の様相は、タモリさんが言っていたように『新しい戦前』が静々と始まっているように思います。
この本を読んで、私も今まで心の中で強く思っていたことの基本的なことについて、絶対に“ブレない”ようにしようと意を強くしたところです。
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