向田邦子さんの妹、和子さんがまとめた「向田邦子の恋文」を読みました。
『向田邦子の恋文/向田和子(新潮社)』という本を古本で見つけ、読んでみました。
これは飛行機事故で亡くなった向田邦子さんの妹、和子さんがまとめた本なのですが、第一部と第二部に分かれていて、一部は亡くなられた邦子さんのマンションを整理していたときに見つけた茶封筒(和子さんの上のお姉さん「迪子」さんが発見した)が、何やら“わけあり”で、死後二十年間、封を開けられずにいたものを開け、それを活字化したものです。
茶封筒の中に入っていたのは、N氏というカメラマンに宛てた邦子さんの手紙五通、電報一通、N氏から邦子さんへの手紙三通、N氏の日記(大学ノート一冊)、N氏の手帳二冊でした。
そこには、向田邦子さんとN氏の日々日常のやり取りが書かれていました。
二人はある意味枯れたような大人の関係であるかのような文のやり取りをしていますが、向田さんが“ありのままの自分”をさらけ出している感があります。
甘えたり、ちょっと拗ねてみせたり、愚痴をこぼしたり、細やかな心遣いを見せたり、そしてユーモアもまじえてのやり取りが、まさにそのままの状態で書かれていました。
驚くことにN氏の日記、最後に書いた翌日にN氏は亡くなっています。
後半、妹の和子さんが書いている部分で、それはN氏自ら命を絶ったのだと知り、さらに驚きました。
また、今から思い起こせばと和子さんが書かれていた、“K氏が亡くなったことを知った直後”であろう向田さんが一度も見せたことのない茫然自失とした様子なども書かれていました。
この本からは、第一部の方では、向田さんのひとりの女性として生きている姿が描かれ、初めて知ったその姿に作家、脚本家としての姿以外のものを目の当たりにしました。
ある意味とっても衝撃的。
そして、第二部では和子さんはじめ、向田さんが亡くなられたあとのお母さんを含めた家族の様子、さらに家族が大好きだった向田さん、自分を粉にしてでも母を助け、父の面目を思い、兄弟・姉妹を身をもって支えていた姿が感じられました。
今まで読んだ向田邦子さん関係の本で、一番衝撃が走った本でした。
たいせつにして、またいつか頁をめくってみたいと思います。
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