田中兆子さんの「私のことならほっといて」を読みました。
『私のことならほっといて/田中兆子著(新潮文庫)』を古本で見つけ、読みました。
著者、田中兆子さんの本を読んだのは初めてですが、けっこう刺激的でした。
短編集なのですが、夫が亡くなり、火葬場から帰宅するとベッドの上に夫の丸太のような片脚が置かれていた・・なんて話もありました。
とっさに川端康成の「片腕」を思い出したのですが、巻末に「作中にて引用・参考としました」と記されていました。川端の「片腕」も奇想天外な話ですが、この田中兆子さんの「片脚」も凄い話でした。
脚に意思があるが如く、夫の死後もその脚と近づいたり、物入に入れっ放しにしたり、捨てに行こうとしたり・・それぞれの脚との行動と主人公の女性の心の動きに、もともと現実的には成立しない話なのに、「どうなってしまうのだろう」と夢中で最後まで読んでしまいました。
その他にもふつうの生活をしていた女性が宇宙人に捉えられ、宇宙人の動物園で飼育される話(その間に米中戦争が起こり、地球は消滅してしまう)・・だとか、けっこう性的な描写が入っているのに登場する女性は男性に対して非常に割り切った、いかにも現代的な考え方をしている話などもありました。
読んでいると、今生きている人たちの心の中って、こういうことになっている人が多いんじゃないか、などと私は感じました。
ドライっていえばドライだし、特定の事象に対しては異常なくらい執着したりもする。
夢で見た男との行為が忘れられなくなり、だんだん夢の世界が現実の自己の世界を浸食し、読んでいるとどこまでが日々の生活で、どこまでが夢なのか私もわからなくなる話もありました。
どの話も、不思議で、しかも感情移入しようとすると“突き返される”という・・面白いが不愉快 ^^; みたいな世界で、“ついつい読んじゃった”感じで読了いたしました。
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