「全身翻訳家/鴻巣友季子」を読みました。
『全身翻訳家/鴻巣友季子著(ちくま文庫)』を古本で読みました。
著者、鴻巣さんは翻訳家で文芸評論家、この本はその鴻巣さんのエッセイ集です。
2007年に「やみくも」というタイトルで刊行されたものを組み替え、加筆・修正し、さらに新聞、雑誌等に掲載されたエッセイも追加して発行されたものです。
鴻巣さんは小さい頃から色々な“習い事”を親に言われてやったようですが、文科系も運動系も苦手なものばかりで身につかず、でもあるきっかけから英語に興味をもって、「将来は翻訳家しかない」という思いを持つようになり、それを現実化したということが、読んでいてわかりました。
翻訳家って、ただ小説などを翻訳していればいいというわけではなく、その作品自体の“読み解き”が出来るかどうかだとご本人も書かれていましたが、このエッセイを読んでいるだけで、鴻巣さんの独特の視線というか、作品からその“匂い”を感じ取り、心憎い翻訳をされているのが例示されている翻訳を読んでいてもわかりました。
実際に外国に出掛けて行った鴻巣さんの旅の様子も書かれていましたが、街並みやホテルの様子、出会った人、それにこれも驚いたのですが、外国のお酒には滅法詳しい!しかもマニアックかつ、外国小説に出てきたお酒はこれだろう・・という推察も玄人です。
また、細かい言葉遣いなどにも気を配られていることもわかりました。
「ドタキャン」や「まゆつば」「かもねぎ」「早弁」などは略して言うことでしか表現できない気分が漂っているが、「半端ではなく」を「半端なく」と言ったり(※若者言葉の“ハンパない”とは違う元来の意味で)、「正直言って」を「正直」、「基本的に」を「基本」と言ったりすると、一字二字を惜しんで忙しがっている感じがして、野暮ったい、ともおっしゃっています。
これについては、私も同感です。
仕事をしていた時にはそういうタイプの人には警戒しました。油断ならない人が多かったので。
色々書きましたが、翻訳家の“生態”のようなものもわかり(*^^*)面白い本でした。
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