「運を天に任すなんて 人間・中山素平/城山三郎」を読みました。
『運を天に任すなんて 人間・中山素平/城山三郎著(新潮文庫)』を読みました。
2001年に光文社文庫におさめられた「運を天に任すなんて 素描・中山素平」を改題して2003年に新潮文庫として発行されたものです。
「財界の鞍馬天狗」「日本の羅針盤」などという異名をもった中山素平の日本経済復興を語る上で欠かせない銀行マンとしての生き方を描いたものとなっていました。
時代としては戦時下も含まれ、主人公の中山素平は、シンガポールという当時日本軍の最前線に近い占領地への海外派遣も経験し、そのときのことも書かれていました。
海運業界の再編などをした中山ですが、戦地でも自らの考え方、物事の進め方は曲げることなく、その大変な様子も書かれていて、今のこの時代にこんな人は一人もいないと思いました。
戦後もGHQの興銀無用論を突っぱね、興銀中興の祖となり、山一証券への日銀特融、八幡・富士製鉄の合併、などの難事解決にあたって名を馳せたのですが、著者城山さんの緻密な取材がものを言ってスリリングな展開でした。
辛辣な発言、粘り強い交渉と根回しが印象に残り、さらに中山自身の“人物としての魅力”を強く感じました。
読んでいるうちに、近年、この“人物”を感じる人がいなくなったとつくづく実感しました。
先ごろの選挙などでも、実に底の浅い、自分だけ良ければ、当選できればよいのだという印象しか感じない人達、どんな手段を使ってでも人の上に立とうとする人達、・・これは日本国内だけではなく、世界的に自分さえよければ、自国さえよければという人達ばかりという気がします。
城山さんが取材して描いてこられた様々な人物の評伝を読むにつけ、上記のようなことをいつも思うのです。
城山さんの著書、まだまだ何冊もストックがあるので、また読みましたら感想をアップいたします。
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