「とにかくうちに帰ります/津村記久子」を読みました。
『とにかくうちに帰ります/津村記久子著(新潮文庫)』を古本で見つけて読みました。
2012年に刊行され、2015年に文庫化されたものです。
著者・津村記久子さんは、太宰治賞、野間文芸新人賞、川端康成文学賞、芸術選奨新人賞、紫式部文学賞などを受賞されている方で、私は今までにこのブログで読後感を紹介した「この世にたやすい仕事はない」と何人かの作品がまとめられた「考えるマナー」の中に津村さんの文があり、それらを読んだことがありました。
今回の「とにかくうちに帰ります」は、なんというかまるで誰もが日常に生活し、職場に行って仕事をする中で毎日感じていること、毎日起きているようなことが実にリアルに“まんま”の状態で書かれていると思いました。
何か“事”が起こると、実際はよくある小説のような展開にはならず、あっちに行ったりこっちに来たりと“迷走”し、ドラマチック過ぎず、でもありきたりな事にもならず、“ぐたぐだ”と三歩進んで二歩下がるようなことになるわけですが、そんな感じで書かれているのです。
こういう感じの小説って、読んだことがないように思います。
登場人物も、“いい人”“悪い人”っていう区別もなく、そもそも人って“いいところ”もあれば“悪いところ”もあり、そのグラデーションで生きているんじゃないかと思うので、この小説でも人は人らしくそのグラデーションを見せています。
そして、「えっ、あの人が」と思うような人が意外や大胆なことをしているっていうのも、この小説で描かれていました。
つまり、この小説は誰もが感じている日常の我々を見事に著し、生きていくことの理不尽さと、不条理と、それでも生きていく普通の人が描かれていると感じました。
時々、自分が完全にストーリーの中に入り込んでしまい、じりじりとしたり、ヤキモキしたりしてしまったのでした。
精神的にはけっこう迫ってくるような印象の小説でした。
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