「最後の花時計/遠藤周作」を読みました。
『最後の花時計/遠藤周作著(文藝春秋)』を古本で手に入れ、読みました。
初出は「産経新聞」の1993年12月~1995年4月に連載されたもので、この「最後の花時計」が刊行されたのは、1997年1月となっておりました。
読んでみて、三十年以上前のものですが政治的なことにかなり踏み込み、他国との国際的な関りについて政府、政治家にもモノを言い、しかもそれはかなり強い語調です。
医師からの深刻な病名の告知のやり方や、治療方法について、看護師(当時は看護婦と書かれています)の立派な仕事ぶりに病院側は環境を整備してあげなさいとの提言も繰り返しありました。
老いることの辛さや、自らどう感じているのか、作家仲間の死についても書かれていました。
正直言って、私には自分が中学時代に読んだ「ぐうたらシリーズ」の印象が強かったため、こんなにシリアスな文章ばかりの内容に驚きました。
また、当時はここまで書いても大丈夫だったのだな、とあらためて感じました。
“炎上”なんてものは、インターネット以前だし、そんなものはありません。
また、これほど自由な発言が出来たことに、当時の寛容な感覚がわかりました。
今や、とにかく重箱の隅を楊枝でほじくるような“いいがかり”“逆ぎれ”が横行していて、かえって“不自由”で、言いたいことも言えない空気が漂っているような感じがします。
遠藤氏の文を読んで、けっこう現在露呈し始めた社会の歪みがこの頃に芽生え始めていたのだとも感じました。
薄っすらとその当時の世間で感じられていたことが今現実化し、あらゆる分野で“ぐずぐず”となり、あと数年も経つと修復不能な世界になっているんじゃないかと不安にもなりました。
人間の愚かさを、今にしてその結果が見えてきたこの段階で、あらためて再確認するような読書となりました。
« 俳句を詠んでみる_0384【 余寒 街が暗くなった日々 想う 】 | トップページ | 俳句を詠んでみる_0385【 春の風 子ども110番 揺らす 】 »
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 俳句を詠んでみる_0480【 ダリアに訊いてみた 平和ってあるの 】(2025.06.28)
- 「役員室午後三時/城山三郎」を読みました。(2025.06.08)
- 「風塵抄二/司馬遼太郎」を読みました。(2025.05.15)
- 俳句を詠んでみる_0415【 春愁(はるうれい) 乱高下 空虚に伝ふ 】(2025.04.13)
- 俳句を詠んでみる_0410【頑愚なディールに 揺すられ 散る桜 】(2025.04.08)
「社会の出来事」カテゴリの記事
- 俳句を詠んでみる_0480【 ダリアに訊いてみた 平和ってあるの 】(2025.06.28)
- 俳句を詠んでみる_0464【 世の不穏に 安居(あんご)し 句と対峙する 】(2025.06.11)
- 俳句を詠んでみる_0437【 春惜む 釣石段に津波跡 】(2025.05.12)
- 『「意識高い系」の研究/古谷経衡』を読みました。(2025.04.02)
- 俳句を詠んでみる_0388【 駅の時計 消えゆく 斑雪(はだれ)の如し 】(2025.03.15)
「書籍・雑誌その2」カテゴリの記事
- 「荒木経惟の写真術」を読みました。(2025.07.10)
- 「夫婦脳/黒川伊保子」を読みました。(2025.07.09)
- 「どうせ、あちらへは手ぶらで行く/城山三郎」を読みました。(2025.07.05)
- 「玉子 ふわふわ/早川茉莉・編」を読みました。(2025.07.01)
- 「NHK俳句 今日から俳句/片山由美子」を読みました。(2025.06.28)
« 俳句を詠んでみる_0384【 余寒 街が暗くなった日々 想う 】 | トップページ | 俳句を詠んでみる_0385【 春の風 子ども110番 揺らす 】 »
コメント