「日本語の美/ドナルド・キーン」を読みました。
『日本語の美/ドナルド・キーン著(中央公論社)』を古本で見つけ、読んでみました。
日本人よりも日本を知り、日本の文学を知り、博識なキーンさんが「新潮」や「中央公論」「群像」「朝日新聞」などに寄せた日本語について書かれた文をまとめたもので、1993年に初版発行されたものでした。
キーンさんの本を読んでいていつも感じるのは、自分が日本の古典や文学などをいかに読んでいないか、知識が無いか、思い知らされるわけです。
また、今回の本で書かれていたかつての“漢字廃止論”“日本語廃止論”についての記述については、いくつかの本で見聞きしたことはあったのですが、漢字をやめてローマ字にしようだとか、そもそも日本語をやめてフランス語を公用語にしようなどということが実際にあったことに驚くのです。
そんなことになったら、源氏物語はじめ日本の古典文学を読める人自体がやがて居なくなってしまうわけで、そんなことにならずに良かったとあらためて感じました。
方言についての記述も面白かったし、日本での外来語の“さばき”方についての考察も面白かった。
結局“カタカナ”というものの存在が他国の状況と異なり、やがては不要になる外来語を“はじき出す”のに好都合だったということもわかりました。
また、キーンさんの三島由紀夫、阿部公房、司馬遼太郎、徳田秋声との出会い、繋がりも克明に書かれていて、読み応えがあるものでした。
ただし、私のように三島や阿部、司馬、徳田の本をそれこそ数冊しか読んだことのない者にとっては、その知識・教養不足が露呈し、読んでいて“チンプンカンプン”なところもたくさんありまして・・自分の勉強不足に恥ずかしくなりました。
ピアニストの中村紘子さんとのことについての記述も初めて聞くことも多く、著作も多かった中村さんの本を何冊も過去に読んだことを思い出させてくれました。
能・狂言はどういう芸術なのか、日本文学には何を期待するのか、など終盤の文も読み応えがありましたが、私の勉強不足も祟り、もう一度じっくり読み直す必要がありそうです。
キーンさんのやわらかく、わかりやすい文体だからこそ、難しい内容でもある程度食い下がることが出来ました。
何度も読み返して勉強になる本だと感じました。
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