「荷風随筆集(下)/野口冨士男編」を読みました。
『荷風随筆集(下) 妾宅他十八篇/野口冨士男編(岩波文庫)』を読みました。
古本で見つけたもので、この文庫版は1986年に第一刷発行されています。
ほとんど荷風の実生活を述べているような「妾宅」に書かれている文には、これは書いていいものだろうかとか、こんな心の内、本音も書き綴ってもよいのだろうか、と私が勝手に思ってしまうほどのことが、まったく淀みなく、むしろ堂々と書かれていて、驚くよりもただ茫然とするのみでした(^-^;
そしてどの文についても当時の世俗、風景、物の考え方などが巧い描写で書かれています。
それも“立て板に水”です。少しも滞るところが無い。
最近、横山利一や織田作之助、水野仙子、岡本かの子、室生犀星らの文にふれたのですが、昔の作家の文はたったの数行を読んでも次々とその光景や心情の描写が丁寧で精緻で、とても心地よいのです。
この荷風の文にしてもそうです。
江戸を賛美し、文人的な日常生活をして、浮薄な近代化に対する文明批評をする荷風。
今読んでも実に面白い。
最近の人は新しいものが出てくると、やたら褒めたり、そっち側に“乗っかって”しまい、プライドも何もなく“AI万歳”みたいな人も多い。
この荷風の文を読んで、目が覚めるようでした。
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