「もう、きみには頼まない -石坂泰三の世界-/城山三郎」を読みました。
『もう、きみには頼まない -石坂泰三の世界-/城山三郎著(文春文庫)』を古本で読みました。
1995年に毎日新聞社から刊行された単行本で、1998年に文庫化されたものでした。
内容は実在の人物・石坂泰三の第一生命社長、東芝社長、高度経済成長期での経団連会長、そして1970年の大阪万博での日本万博協会会長という経歴をなぞり、時代背景や、時の人達の物の考え方などを睨みつつ、主人公の石坂泰三が歩んだ波乱万丈の人生を描いたものでした。
石坂氏、上記のどの時期も大変な苦労があったことは“一読瞭然”ですが、私が印象に残ったのは第一生命時代でした。
業界内でも下位の業績であった第一生命をトップの方にまで上昇させ、借金も無しに自社の金だけであの第一生命ビル(終戦直後にGHQが接収し、総合司令本部として使用したことで有名)を建て上げているのでした。
でも、せっかく建てた堅牢で、先鋭的な建物も戦時中は日本軍に利用され、戦後は進駐軍に利用されてしまいます。
石坂は、勉強家でもあり、海外からも情報を得て、この戦争は負けると早くから言い、広島に爆弾が落ちた時にも「アトミック・ボンブだ」と周囲に語っています。
総理大臣でもかまわず頼み事に行って、こいつはダメだと思えば「もうきみには頼まない」と面と向かって言うその“人物像”はたいしたものだと思いました。
東芝の立て直しや、あの土光敏夫さんを見出し、うまく使い、コンビとしても活躍していく様子にも、今までまったく知らなかった事実を知り、驚きました。
1970年の大阪万博についても、誰もが失敗する、赤字になると断った万博協会会長を引き受け、後に東京都知事になった鈴木俊一氏を女房役にして成功させ、おまけに赤字どころか大きな黒字を出しています。不祥事も事故もほとんど無かったのでした。
しかし、後に政府公式記録が出ると、全て政府当事者によって万博はなされ、万博協会は殆ど何もしなかったと記されていたのを見てたいそうな怒りを表した様子も書かれていました。
大蔵大臣就任依頼も蹴り、周囲の今となっては有名な人達とのやり取り、家族との生活、妻亡き後の悲しみと、それでも全力で困難に立ち向かう様子にただただ、感心し、唖然とし、尊敬の念も抱いたのでした。
城山三郎さんの気骨ある財界人の生涯の描き方、見事でした。
長編でしたが、流れるように読みました。
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