映画『チャック・ベリー ブラウン・アイド・ハンサム・マン(Chuck Berry BROWN EYED HANDSOME MAN)/2020年 アメリカ 監督・製作:ロン・ワイズナー、チャック・サイモン、リチャード・フース ナレーション:ダニー・グローヴァー 出演:チャックベリー、キース・リチャーズ、ローリング・ストーンズ、ビートルズ、ポール・マッカートニー、エリック・クラプトン、トム・ペティ、ブルース・スプリングスティーン、ジミ・ヘンドリックス、エレクトリック・ライト・オーケストラ、リンダ・ロンシュタット他』を千葉劇場で見て来ました。
もともとは、アメリカの公共放送のために制作されたドキュメンタリーだそうです。
御大チャック・ベリーの、あの独特なフォームでギターを弾きながらの演奏シーンも、もちろんふんだんに出てきて圧倒的かつ“カッコよく”、観客のよろこばせ方もよく知っているエンターテイナーとしての抜群な様子もつぶさに収録されていました。
映画館内のオジサン(おじいさん?!)たちの体も“揺れて”いるのがよくわかりました。
冒頭からR・ストーンズのキース・リチャーズが演奏に加わっているシーンで、私も興奮しました。
他の豪華な顔ぶれの演奏も“全力”なものばかりで、何の文句の付けようもありません(#^.^#)ロックンロールと言えばチャック・ベリーそのものなんですから。
わずか55分のフィルムでしたが、全編がクライマックス・シーンのようで、特にブルース・スプリングスティーンとのスタジアムでの演奏は涙が出るくらいの感動もので、チャック・ベリーが観客を煽動し、圧倒的な演奏シーンになっていました。
キースのチャック・ベリーに対する尊敬ぶりもよくわかり、リンダ・ロンシュタットの豪快なボーカルも、その興奮状態が手に取るようでした。
お馴染みの曲ばかりでとても良かったし、ベートーベンの楽曲オーケストラ付きのELOの演奏「ベートーベンをぶっとばせ」も荘厳だけど笑ってしまうような展開で、楽しめました。
上映時間は一時間程度でしたが、“中身ぎっしり”で楽しい映画でした。
映画『キッズ・アー・オールライト(The Kids Are Alright)/1979年 イギリス 監督:ジェフ・スタイン 音楽監督:ジョン・エントウィッスル 出演:ザ・フー(ロジャー・ダルトリー、ジョン・エントウィッスル、キース・ムーン、ピート・タウンゼント)、リンゴ・スター』を千葉劇場で上映していると知り見て来ました。
レコード・デビュー60周年記念、日本初劇場公開 HDレストア版・・ということでした。
この映画があるということは知っていましたが、見たことがありませんでした。
一部映像は何かのきっかけで見たことがあったり、インタビュー音声や演奏についても音源は何かしらのレコードなどで聞いたことのある記憶が蘇ってきました。
とにかくインタビュー以外はほぼ「ザ・フー」の演奏シーンばかりです。
スッゴイです!これがロックの姿だというのをひしひしと感じました。
驚いたのは、ジョン・エントウィッスルのベースでした。
今まであまり強い印象を持ってはいなかったのですが、この映画の中の音は劇場の大きなスピーカーを通しているからということもありますが、彼が素晴らしいプレイをしていたことがよくわかりました。
フレーズも素晴らしいし、こんなにバンドを引っ張っていたのかと驚きました。
ピート・タウンゼントがタンバリンだけ叩いているシーンのベースなど、ジョン・エントウィッスルのベースそれだけで音楽になっていて、ハーモニーまで感じました。
キース・ムーンのドラムはズドドコ・ズドドコと、ずうっと雷が鳴っているようだし、しかも“おっそろしく”正確で淀みのないものでした。
さらにビートルズのリンゴ・スターとインタビュー形式で会話しているときの“ぶっ飛び”具合もさすがでした。
ロジャー・ダルトリーは、風貌もカッコよく、しかもシャウトするのに安定していて、歌詞もよくわかり、パワフルで、ロックの手本だといいたいくらいの良さ。
そしてピート・タウンゼント。
こんなギター・スタイルの人は後にも先にもこの人だけだし、あの腕を振り回す奏法も随所に飛び出し、ギターを破壊し、でも時には美しい音色のメロディーも奏でる。
ピート・タウンゼントがステージ上で飛び跳ね、ものすごいアクションでギターを弾く姿も今まであまり見る機会が無かった私には、こたえられない爽快さでした。
滅茶滅茶激しいのに、芸術性もあり、狂気もあり、人間らしさもあり、荒々しいロックバンドなのに交響曲のように聞こえる時もある。
見てよかった鮮烈のロック映画でした。
このあいだ、妻が「刑事コロンボ」の再放送を見ていたので、途中から私も一緒に見てみました。
今回の悪役は、重厚な演技でなかなかの“ワル”ぶりが凄い人だと思い、番組を見終えてから調べてみると「ジャック・キャシディ」という名でした。
しかも、コロンボには三回も犯人役で出演したことがあるとのこと。
名優なんですね。
そして、“キャシディ”って珍しい感じの名字だけど、昔「デヴィッド・キャシディ」という男性のアイドル歌手がいたことを思い出し、デヴィッド・キャシディについても調べてみると、1970年代にアイドルとしてアメリカで活躍していて、「パートリッジ・ファミリー」という家族バンドが旅をしながらコンサートをしていくテレビ番組が人気で、私もよく見ていたことを思い出しました。
で、このデヴィッド・キャシディは、ジャック・キャシディの息子だということがわかりました。びっくり!!です。
そして悲しいことに、デヴィッド・キャシディは、2017年に67歳の若さで亡くなっていました。
もうひとつ驚いたことは、先に書いた「パートリッジ・ファミリー」という家族バンドのツアー・コンサート中に起こる出来事を楽しく描いた番組では、バンドを構成するファミリーは“疑似家族”で、実際の家族では無かったのですが、お母さん役のシャーリー・ジョーンズは、デヴィッド・キャシディの実の父親の後妻であり、デヴィッドにとっては、義母だったと書かれていました。
なんとも不思議な感じですが、デヴィッドは実の母親ではなく、義母と親子役で出演していたのです。
とても健康的で、明るく、“良きアメリカ”を表現していたような番組でしたが、そんな事情もあったのだと感慨深い思いをしました。
番組中では、必ずパートリッジ・ファミリーの演奏が行われましたが、素敵なアメリカン・サウンドの良い曲、良い演奏でした。
たまたま「刑事コロンボ」を見ていて知ることになったデヴィッド・キャシディのその後などですが、昔はアメリカの面白い番組(もうれつギリガン、じゃじゃ馬億万長者、名犬ラッシー、かわいい魔女ジニー、奥さまは魔女、バイオニック・ジェミー、チャーリーズエンジェルなどなど・・)がテレビでよく放送されていたな、と思い出しました。
『心を癒す音楽/北山修 編・著(講談社)』を古本で見つけ、読みました。
2005年発行の本で、「九州大学人間環境学研究院北山研究室」で行われたミュージック・デザイン・プロジェクトが、《こころの専門家》たちに、これまでの人生で癒された曲を選んでもらい、ヒーリング・ミュージックの傾向を探ったものです。
この本では北山修さんが編集し、35人の方がそれぞれの曲にまつわる思い出を書いてもらう形になっています。
そんな中で、音楽がこころに与える影響を解き明かそうとしています。
曲のジャンルは多岐に渡り、ジャズ、ロック、ポップス、クラッシック、歌謡曲、フォーク・ソングなどなどでした。
読んでみると、それぞれの方が特に若い多感な時期に聞いた音楽が多かったようです。
私が気になったのは、ビートルズの「ヘイ・ジュード」との関りを挙げた須賀節代(外苑神経科臨床心理士)さんの文でした。
ヘイ・ジュードは、ジョン・レノンとシンシアの離婚に不安を感じていた息子のジュリアンを励まそうとしてポール・マッカートニーが書いたものですが、私にとっても後に歌詞を知る前から、なぜか励まされる感覚のある曲でした。
須賀さんは、さらに深く考え、人は胎内にあっては母子一体だけど、出産と同時にその居心地のよかった場所から追い出される。
そこで人は初めて「傷つき」を体験するのだとおっしゃっています。
その傷つきを埋めようとして、あるいは胎内で得られていた母子一体感を得ようとして、様々な行動をするのだというのです。
それは恋愛行動であったり、飲酒だったり、喫煙、音楽に酔いしれる、映画や演劇の世界で遊んだりすることなどだ・・とおっしゃっていて、私はかなり納得いたしました。
文化活動や芸術、問題行動などをして、いつかは現実に引き戻される。
そこに「切なさ」を感じる。・・・とてもよくわかる ^_^;
現実を感じながらも一時的な幻想世界に酔うことで、人はエネルギーを得て行く。
それは「遊び」の世界。
逆に現実世界を否定し、幻想の世界に生き続けようとするとき、依存症や摂食障害といった問題行動を呈することになる、という理論はよく理解できました。
ヘイ・ジュードには、「一体感」と「切なさ」とを同時に感じながら、この歌にまつわるような「優しさ」に包まれることで癒されて、現実に向かう力がでる、そんなことが内包されているというわけです。
なんだか、私がこの曲に感じていて、言葉に出来なかったことをすべてまとめて教えてもらったような気がします。
こんな話題をそれぞれの心の専門家が語るこの本、とても内容の深い、良い本でした。
映画『ブルースの魂(THE BLUES UNDER THE SKIN:Le Blues entre les dents)/1973年(※2022デジタル修復版) フランス 監督:ロバート・マンスーリス 出演:BBキング、バディ・ガイ他』を見ました。
元々は1973年の映画で、今回上映されているのはそれをデジタル修復したものでした。
ドラマとドキュメンタリーが融合しているもので、ドラマはちょっと稚拙な感じの演技もありましたが、それでも実にブルースで歌われている社会的、人間的な世界はこういうものだというものがうまく表現されていました。
また、黒人の奴隷制度から始まり、その後の貧困、ドラッグ、ギャンブル、女、犯罪につながる様子もドキュメンタリー的にまとめられていて、そういうこととブルースという音楽がどういう関係性を持っているのか、というところもうまく描かれていました。
そして、何と言っても、BBキングをはじめとする演奏シーンが素晴らしかった。
実際のブルース全盛期には、私はまだ生まれておらず、その後にジャズやロックに影響を与え、Rストーンズやビートルズなど私の大好きなグループが影響を受けていることからずっと興味を持ってきた音楽がブルースです。
演奏シーンのギターの弾き方を見ていると、ガシガシと弦を押さえ、フレットにバチバチ当たる感じでの運指が実にワイルドでカッコいい!
ボーカルのフレーズを追いかけていくようなギターもたまらなく良くて、演奏に合わせて身体が動いてしまいました。
ブルースってどんな音楽だ。どんな境遇のどんな人が始めたのか。
独特の哀しさを湛えるメロディー、コード、スケール、色々なものを目の当たりにできる映画でした。
それに、1970年代のフィルム独特の映像の色も時代を感じさせてくれてとても良かった。
映画『ミスター・ジミー(Mr.Jimmy)/2023年 アメリカ・日本 製作・監督・編集:ピーター・マイケル・ダウド 出演:ジミー・桜井他』を見て、そして聞いて来ました。
私、存じ上げませんでしたが、主役のジミー・桜井氏は実在の人物で、サラリーマンの傍ら30年に渡り、あのロック・バンド「レッド・ツェッペリン」のジミー・ペイジ(※よく三大ロックギタリストと言われる人達のひとり)をギタープレイ、アクション、衣装、機材他全てを完璧に再現しているの人なのです。
それも度を超すというか、なんというか、例えば197〇年〇月〇日のどこそこの会場でのコンサートのジミー・ペイジのプレイ、というふうに、私も当時、海賊盤が山と出ていたツェッペリンのライブ音源があることを知っていますが、その時々のペイジのプレイを再現しているのです。
それはボーカルやベース、キーボード、ドラムも含め全てジミー・桜井の記憶にセットされている・・恐るべし。
映画の中では、ジミー・桜井がプレイするライブハウスに噂を聞き、来日していた本物のジミー・ペイジが訪れ、握手するというシーンがありました。
そして、全楽曲の使用許諾も得るのです。
その後アメリカでツェッペリンのコピーバンドに参加し、ライブを何百本もこなすのですが、桜井氏の目指す完全再現は、楽しく“ノリ”で過ごす観客のニーズとは異なり、バンドのメンバーとも方向性が異なることで別れてしまいます。
この悩みが映画の最大のテーマだと思います。
完全再現が果たしてビジネスに繋がるのか・・日本ではまだしも、アメリカやその他ヨーロッパなどでは無理があるのです。
ギターソロ30分以上なんて、ワアワア騒ぎに来ている年配の観客には付き合えないし、細かく何月何日のプレイはああだった、なんて人も外国にはほぼいないのです。
最後はツェッペリンのドラマーだったジョン・ボーナム(故人)の息子がドラムを叩いているバンドから声が掛かり、そのツアーに参加し、ジミー・桜井氏自身のバンドでも再現活動を続けて行くところまで描かれていました。
逆に私にはジミー・ペイジの、そしてツェッペリンの音楽の聞き方が初めて実感してわかったという感覚がありました。
つまり、今まで私は、アルバムを中心に聞き、ライブでのプレイはソロやインプロビゼーションが回りくどく聞こえ、煩わしかったのですが、いやいやそれは逆でライブでのその時々のジミー・ペイジのプレイ、ツェッペリンというペイジが描く音楽世界に漂うように、身を任せるように聞いていくと、広大で深淵なギタリストというよりもプロデューサー的なジミー・ペイジの音楽ワールドが広がっていくのでした。
いやあ、何で今まで毛嫌いしてきたんだろうと思いましたよ。
あわててツェッペリンのライブを聞き直しているところです。なんだ、いいじゃねぇか!!(^_^;)
というわけで、映画としても見ごたえがあり、私個人にとってもツェッペリンを見直す機会になりました。
力作でした。
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