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2025/01/19

「人生にムダなことはひとつもない/佐藤優・ナイツ(塙宣之、土屋伸之)」を読みました。

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『人生にムダなことはひとつもない/佐藤優・ナイツ(塙宣之、土屋伸之)(潮出版社)』という本をブックオフで見つけ、読んでみました。

タレント本の棚にあったのですが、今までこの本を見たこともなく、存在も知りませんでした。
ナイツの塙さんが出した本などはCM、PRもよくされているので知っているはずだし、佐藤優さんの著書についてもその多くは見かけたことがあったのに、今で気づかなかったのか、と思っていましたが、読んでみてなんとなくわかりました。

ナイツのお二人は創価大学出身で、たぶん学会の人だとは思っていましたが、学会関係の人に対して主に向けた本なのではないかというものでした。
創価学会の専門用語が幾度も飛び出し、佐藤さんは学会への理解もかなり深く、外務省にいた時にも丁寧な扱いを受けていたらしく、関係は良さそうに読んでいて感じました。

内容としては、ナイツの主にお笑いという仕事に対する向き合い方と、佐藤優さんのあの逮捕劇を含む今までの人生について対談形式で書かれていて、読みごたえはたしかにありました。

学会の話に割と強引に持っていくようなところを除けば、読み物として、そして生き方の指標というか、参考になることが多く語られていたのです。

佐藤さんは作家として「国家の罠」などで様々な賞を受け、ナイツはラジオ番組のレギュラーがほとんど毎日に近いくらいある売れっ子であり、佐藤さんの著書も何冊も読みましたし、ナイツのラジオはよく聞きます。

そんな二組の対談なので、面白くないはずがありません。楽しむことが出来ました。

 

2024/11/03

「おじさんはどう生きるか/松任谷正隆」を読みました。

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『おじさんはどう生きるか/松任谷正隆著(中公文庫)』を読みました。
2021年に中央公論社から刊行されたもので、2024年文庫化にあたり二編の書き下ろしエッセイとジェーン・スーさんとの対談も追加収録されています。

以前にも(今年の4月)松任谷さんの著書(クルマに関する本)をこのブログでご紹介しました。
そのときにも感じましたが、松任谷さんのエッセイは読む人を“ググっと”惹き付けます。

松任谷さんはジェーン・スーさんとの対談でも言われていましたが、1951年生まれの人とは思えないような若い感覚が目立つのですが、でも時々親の教えから来たのか、とても古風な考え方が見え隠れするときもあります。

実際に読んでみると、松任谷さんのエッセイはその両面がうまくミックスされていて、面白さがより濃くなっていく感じでした。

女性に対して過敏なまでに神経を使うかと思うと、けっこう奥さんのユーミンには横暴な時もある。
友達や周囲の人についても、同様に神経質な部分と大胆なところもあるのです。
それに育ちの良さも手伝ってか、ご本人が意識せずとも“オシャレ”なセンスが随所でキラリと光るのでした。

数十年ぶりにバンドを組んでアルバムを作る話題もありましたが、まさにかつてバンドマンだった人の感覚が見事に書かれていて、その文章力にも驚き、私自身もこのブログなど色々書いているので勉強になりました。

舞台の演出や、脚本を書いたり、プロデュースをしたり、音楽を作り、自らも演奏する中で若い人達との出逢いの機会も多く、そこで時代とのギャップをうまく調整しているのではないかと思いました。

自分の古いことに固執するクセ反省する機会にもなりました。
面白く“目から鱗が落ちる”ような感覚になった本でした。

 

2024/01/11

「私のテレビ日記/清水ミチコ」を読みました。

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『私のテレビ日記/清水ミチコ著(幻冬舎文庫)』という本を古本で見つけ、読んでみました。
これは、『TV Bros.』という雑誌に清水さんが連載していたエッセイをまとめて一冊の本にしたものです(2013年から2020年の始めまでのエッセイをまとめています)。

テレビ雑誌の本なので、清水さんが出たテレビ番組や共演者について、そして公演で日本国中に出掛けた際のエピソード、その時々に世の中で話題になった人物などにもふれています。

読んでいるだけで、清水さんの歯に衣着せぬというか、衣着せる前にもう書いちゃった・・(^_^;)みたいな姿勢と文体で、そこが一番の魅力かと思いました。

また、現在も続いている日本武道館での清水さんのライブのそもそものきっかけは、たまたま空きが出来てしまった武道館のスケジュール、清水さんに「やってもらえませんか」というオファーがあり、事情が事情なので、気負うこともも無く、“コケて”もともとの気分で気楽にやれたことが功を奏し、見事に成功したのだそうです。
それが今でもまだ続いているわけで、偶然から生まれた清水さんの武道館公演、今ではすっかり一年の風物詩的な存在となっています。

大好きな矢野顕子さんとツアーしたり、これまた大好きなユーミンのオールナイトニッポンゴールドに出演したり、次々と念願かなう清水さんは、実力も運もすごいものを持っています。
そして人から嫌がられたりするような芸風でもなく、ご本人も常に自然体で気負うこともなく“いい感じ”で、素晴らしい(#^.^#)と思いました。

物真似しているうちに、本来の自分がどれだったかわからなくなりかけたり(^^;)、自分ではあまりやらない人の物真似が意外と期待されていたりする話も書かれていましたが、清水さんのような芸はどこで何が“ウケる”かわからないので、そういう意味では大変なお仕事だとも感じました。

尊敬する永六輔さんのエピソードも語られているし、毎年夏に日本に帰ってくる野沢直子さんとのひと夏の過ごし方も面白く、また平野レミさんや阿川佐和子さん、森山良子さんなどとの楽しい食事会の話題もとても愉快でした。

さすがの清水さんの軽快な文章を波に乗るように読みました。
楽しかった(*^^*)

 

2023/05/31

「ジャパニーズ・スマイル/中島みゆき」を読みました。

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『ジャパニーズ・スマイル/中島みゆき著(新潮文庫)』という本をブックオフで見つけて読んでみました。
1987年から1993年にかけて「月刊カドカワ」や、「月刊Asahi」中島さんのファンクラブの会報、その他雑誌や、書き下ろしも含めた中島さんのエッセイが詰まったものでした。

けっこう古い文もあるのですが、中島さんの文はそういう時代感など問題なく実におもしろいっ!(#^.^#)

中島さんの音楽に関しては、シリアスだったり、哀しかったり、慟哭したり、恨んでみたり、希望を感じさせたり、懐かしい気持ちになったり、力強かったりと、いろいろな要素がありますが、文に関しては(深夜放送などのおしゃべりについても)、実に“ありのまま”で、ちょっと傲慢だったかと思えば、小心でオロオロしたり、褒めれば図に乗り、けなされればショボンとしたり、ケチだったり、食いしん坊だったり、乙女だったり、おばちゃんだったり・・(^^;)と、その語り口はどこにもないと感じさせるものでした。

ラジオでおしゃべりしている時など、これがあの歌をつくったあの人なのか?!と驚くことがあるほど“ぽわんぽわん”としていて、“油断と隙だらけ”な感じがしますが、エッセイはそれをそのまま文章にした感じでした。

これもふつうの人には出来ないことだと思いました。
こんな文章は見たことがありません。
独特の“風合い”を示す文章は、まさに名人芸と言えると思いました。

のんびりと足湯にでもつかっている気分になりながら楽しみました。
ほっこりとしていい本でした。

 

2023/03/05

壇蜜さんの「結婚してみることにした。」を読んだ。

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『結婚してみることにした。 -壇蜜ダイアリー2-/壇蜜著(文藝春秋)』を読みました。
これもブックオフで見つけたものです。
なんといってもタイトルがいいと思いました。こんなタイトル見たら手に取るよね。

当然ながら結婚に至る相手との付き合いの過程などが日々“したため”られているのかと思って読んだのですが・・。
おどろくべきことに、この二年間に渡る日記の中には、結婚に至る過程についてはたった二日間しか書かれていなかった・・。
びっくりした。

びっくりしたには、しましたが、でも壇蜜さんらしいと思いました。
日記の内容は、カッコつけた嘘っぽいものではなく、ほんとうに毎日起こっていること、感じたこと、体調のこと、仕事で出会った事などが飾らない文章で書かれていました。

壇蜜さんは日記の中で自分をかなり卑下しているのですが(この日記シリーズでは他の巻でもそんな感じ)、でも“あきらめ”というか立ち直りが早いというか、自分はそうなんだからしかたないでしょ、みたいなところもあり、それが壇蜜さんの持ち味となってこの日記の面白さを増しているのだと思いました。

全体には、よく自転車に乗っている(雨の日に出て転倒したことまで書かれていた)、よくサウナに行く、猫などの動物のみでなく、爬虫類にまで愛情を注ぎ、それらが生活に密着している、よく寝ている&居眠りしている、・・そんなシーンが多かった。

で、仕事で付き合う人などにはかなり気をつかっているのも感じました。
気を使っているものの、それが裏目に出てもとことん落ち込んだりはしていないようで、それが芸能界で生きていくコツなのかもしれません。

結局、結婚に至る過程だとか、そのときの心情などについても細々とは書かれていなかったわけですが、結婚という人生上の大きなイベントについても、日常のひとつの出来事として淡々と書かれていて(実はそこだけちょっといつもと違う感じだったけど)、壇蜜さんの日々は流れて、続いていくのでしょう。

また次のこのシリーズ見つけたら買っちゃいそうです、そこにいろいろ結婚生活について書かれているような気がして・・。
きっと書いていないと思うけど。

 

2023/01/17

高橋幸宏さんが亡くなって

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高橋幸宏さんが亡くなったと報道で知りました。
私が学生時代にドラムを手に入れ、叩き始めて一・二年くらいの頃でしょうか、サディスティック・ミカ・バンドのレコードを買いました。

それは写真を掲載している「黒船」というアルバムでした。
アルバムジャケット裏側に高橋幸宏さんが空中を飛ぶように写っています。
これが高橋幸宏さんのドラム・プレイを聞いた最初の音源でした。

 

 

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アルバム二曲目の「何かが海をやってくる」のドラムは実に“キレ”のいいもので、リズム感が今まで聞いてきたものとは異なるとすぐに感じました。
確実でキレがあるハイハットは、アクセントを入れるときにハーフオープンを使い、それがまたカッコよかった(*^-^*)
スネアもキレキレで、さらにタムの音はズドンと深い音で震えがくるような迫力でした。
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そして「黒船(嘉永6年6月2日)」が始まると、当時としては珍しいというか、最先端な感じに私には聞こえたタイトなリズムが素晴らしかった。

自己流で叩いていた私には大いに参考になるドラムでした。こういう風にちゃんと叩かねば、と心に刻みました。

その後 YMO のドラマーとなったわけですが、私はテクノ・ポップに反応しなかったのでアルバムも持っていなく、有名曲しか知りませんでしたが、高橋幸宏さんのドラムの叩き方には注目していました。
叩くドラム・セットの構成は変わっていましたが、でも基本的にキレがいいことと、あまり大きなストロークで叩かないこと、派手なアクションもしないこと、フィル・インは短いが非常に効果的であることは変わっていないと感じました。

何年か前に木村カエラさんをボーカルにサディスティック・ミカ・バンドを再結成したときの高橋さんのプレイを見聞きしましたが、基本的にその姿勢は変わっていなくて、とてもうれしい気持ちになりました。

私が存じ上げないところで、様々な活動をされていた高橋さん、原田知世さんの映画に出たときにインタビューを受け、「ぼくは知世ちゃんのお父さん役で出ていた」と言ったあとに、「回想シーンなのでスクリーン上では共演していないんです、でも“遺影”として同じ画面には映っていました」とやって笑いを取ったりして、人柄も素敵な方なんだと感じたことを思い出しました。

残された作品は、これからも特にドラマーには大変参考になるものだと思います。
70歳と、まだまだお若かったのにとても残念です。
今、「黒船」を取り出して、また聞いているところです。

 

2022/10/10

「芸人/永六輔」を読みました。

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『芸人/永六輔著(岩波新書)』を読みました。
1997年発行のものです。25年前の本。で、またブックオフ。

今どきは「芸人」というと、なぜか“お笑い芸人”のことを指すようで、芸人は芸をする人だから別にお笑いに限らないはずでした。
ずっと以前は役者でも誰でも芸能にたずさわる人を「芸人」と呼んでいたものですが・・。

この本では芸人というものが昔はどういう境遇にあったか、どんな立場にあったのか、厳しいことが書かれていました。
それを読むと、小沢昭一さんの書かれた「芸人」についての著作も思い出し、現在とはまったく異なる芸人像が浮かび上がりました。
要するに、昔はけっこう蔑まれるような存在だったのだと。

うってかわって、今の若い人たちの芸人志向は、「楽して稼げる」という点に集中しているようだと永さん書かれています。
とりあえず有名になれば喰える、だったらテレビで顔を売ろうという単純な構図が出来ているというのです。

それでもって、有名になりたいという夢がかなって有名になっても支える芸は何もないという現実・・と、永さんおっしゃっていますが・・私もそう思う・・。
「何もできない芸人」という芸人が生まれつつあるというわけです。

さらに「とりあえずおもしろければいい」「とりあえず明るくて、何げなくそれを見ていられればいい」という人たちの時代になりました。

永さんは、歌、演技、コメディ、笑いなどの世界は大きな変質を遂げようとしているとおっしゃっています。25年前の話です、この本は古いんだから。

今後、ひとつの歌が、ひとつの笑いが、人生の味わいを深くしたり、感動したり、刺激されたりというかたちで、芸と芸能の世界が展開していくかどうか。
そうして、芸人がどう生きるべきなのか。

・・と、後編で三波春夫さんとの対談の中で結論を見つけようとするのですが、三波さんも今は亡くなり、対談した永さんも亡くなり、結論はどこかに行ってしまったような気がします。

 

2022/02/08

「笑伝 林家三平/神津友好」を読みました。

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『笑伝 林家三平/神津友好著(新潮文庫)』という本を読みました。
これもまた、ブックオフで購入したのですが、もともとは昭和60年に文藝春秋社から刊行されたものを平成17年に文庫化したものです。

林家三平(もちろん初代)といえば、「昭和の爆笑王」と言われることが多いわけですが、この本によると、亡くなられたのが昭和55年ですから、もう三平さんの全盛期を覚えている人も少なくなっていると思います。

私にしても、たぶんテレビに出まくりの全盛期は小学生だったと思いますので、「時は流れた」と実感します。

私が覚えている三平さんは、高座というか舞台では立っていて、うしろに絶対に笑わないアコーディオン奏者の方(この方がどういう人かということも、この本には書かれていた)がいて、歌いまくり、上手から下手まで走ったり、転んだり、そしてギャグの連発、おもしろいんだか、おもしろくないんだか考える間もなくしゃべりまくり、“ウケない”と「これはなぜ面白いかというとぉ~」ってお客さんに説明したりしていました(^^;)

昼から夜まで、テレビにも出ずっぱりで、昼の帯でワイドショー的なものにも出ていたような記憶があります。
東京タワーのサテライトスタジオから「タワーバライエティ」という番組だったような記憶が・・。たしか司会のアナウンサーは豊原ミツ子さんという方だったんじゃないかと思います。

この本は、終戦を迎え、兵士だった三平さんは復員となり、東京の瓦礫の中に自宅を探す姿から始まります。
その後の父・林家正蔵の死から、落語家としての下積みの様子、結婚、さまざまな苦労や失敗の話、噺家としての苦悩する様子、売れ出して調子にのって女に溺れたり、散財するところなど、事細かに書かれていました。

著者の神津友好さんは、以前よくお笑い番組や寄席番組などで解説している姿をお見かけした方でした。
三平さんが病に倒れた晩年に三平さんと互いに涙を流しながら復活への台本を書かれたりしていて、私も涙ながらに読みました。

この本を書くにあたっても、三平さんの奥さんの香葉子さんのもとに足繁く通い、いろいろなエピソードや事実確認もされていて、私も「こんな詳細な伝記が書けるというのはすごい仕事だ」と驚きながら読みました。

三平さんが日々新聞を何紙も取り、そして電車の中吊り広告を見たりして、一番あたらしい話題を取り上げようとしていた姿が書かれていましたが、今、こうして新しい話題を次々とギャグにして、人々をなんとか笑わせようとするお笑い芸人って、いるでしょうか。

人を笑わすのが商売なのに、コメンテーターみたいなことをやっている人、やりたがっている人が多くて、「笑わしてくれないんかい?!」と突っ込みを入れたくなるのですが、笑いのためならどんなことでもやっちゃう、そんな芸人さんはもう出ないだろうと思いつつ読了いたしました。

 

2021/10/19

「小沢昭一的 流行歌・昭和のこころ」を読みました。

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『小沢昭一的 流行歌・昭和のこころ/小沢昭一・大倉徹也(新潮文庫)』という本を読みました。
ブックオフでわずか110円で売っていたのでした。小沢さんの本も数々読んでおりましたが、初めて出会ったものでした。

あのTBSラジオの有名番組「小沢昭一的こころ」の“昭和歌謡版”的展開の本でした。
小沢さんと共に著者に名を連ねているのは、番組の台本作家をつとめていた大倉徹也氏です。

小沢さんは昭和4年生まれで、その小沢さんが少年時代に聞いていた流行歌とその歌手について書かれたもので、だから私には知らない人が多かった。
でも、あの“語り口”、あの“調子”で書かれているので面白く読めてしまうのでした。

知っていた人 藤山一郎、灰田勝彦、ディック・ミネ、美空ひばり

知らなかった人 美ち奴、楠木繁夫、松平晃、杉狂児、二村定一、小唄勝太郎、霧島昇・松原操夫妻

知っていた人も、知らなかった人も、それぞれがそれぞれの全盛期を持ち、当時の国民が皆知っていた代表曲があり、そして様々で“悲喜こもごも”な晩年がありました。

驚いたのは、「狭いながらも楽しい我が家~」で覚えていた「マイ・ブルー・ヘブン」は、エノケンが最初に歌ったのかと思っていたら、日本で昭和三・四年頃、最初に歌ったのは二村定一で、その当時かなり売れていたのだそうです。

エノケンは二村定一の全盛期に舞台を一緒にやっていて、息長く人気を保ったエノケンが後に再度歌って、またもヒットしたとのことでした。この本に書かれていなきゃ、もう誰も知らないことになってしまう、そんなことがこの本にはたくさん書かれていました。

東京音頭は小唄勝太郎、日比谷公園で「丸の内音頭」という曲を作って盆踊りをやったら人がたくさん集まり、じゃ東京全体にしたらどうだと作られた曲だという。

「有楽町で逢いましょう」やその他、“この人の歌だ”と思っていた曲が、みなこの本に登場している人達が本来飛ばしたヒット曲だったりしたのにも驚きました。

小沢さんが書く、この歌はその時代の自分にこんなふうに聞こえた、という感覚は私にも想い出の曲がありますが、なんだかわかるような気がしました。

それと、一世を風靡した歌手の人生に思いを馳せ、様々な文献をあたって書いている部分も多く、歌手という一時的には皆が知ることになるが、やがて「あの人はいまどうしているのか」みたいなことになる“特殊業務”の悲哀も“小沢節”で書かれていました。
この部分が一番私も気になるところでした。

あとは、美空ひばりの素晴らしさに強烈な肩入れをする小沢さんの姿も確認できました。
一時期、紅白からも“干され”る状況だったひばりさんをNHKのショー番組内で小沢さんの演出で復活させ、紅白にも復帰した話が書かれていました。これは「あとがき」の山川静夫さんが詳しく書いておられました。
なんというか、いろいろなものを抱え込んでいるのが歌手、それも含めてその人とその人の歌が好きになるのだという・・小沢さんらしい感覚ですが、私も共感します。

私の知っているその後の昭和の歌謡曲についてもいろいろ調べてみたくなりました。
「タブレット純」さんあたりから入っていくと、深いところに行けるかもしれない・・。
彼のラジオ番組はかなりマニアック、かつディープなので・・。

 

2021/10/17

高倉健さんの本「旅の途中で」を読みました。

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『旅の途中で/高倉健著(新潮文庫)』を読みました。
ブックオフで見つけました。

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読もうと思ったきっかけは、写真のとおり各ページの体裁というか文が次の行まで“跨がない”というちょっと変わった感じが気になったこと。
そして私が思ったのは、“健さん”のボソボソとつぶやくような話し方にこの体裁がぴったりだということ、そしてそのおかげで、とても読みやすいのです。

もともとこの本は、1996年から2000年までラジオで放送されていた番組をもとに書き下ろされたもので、“語られて”いたものだから、こういう“つくり”は“しっくり”ときたのだと思います。

この本で健さんが度々おっしゃっているのは、人間にとって寂しいことというのは、何を見ても、何を食べても、何の感動もしないことだということでした。
感動しなくなったら、それはいかんと。

人にとっての贅沢なことって、心がふるえるような感動だとおっしゃっていて、一週間に一回でもいいから「心が感じ」て「動ける」ことに出会いたいというのです。

付け加えて、今の世の中で、上記のような感動に出会えることは幸せなことだと。

高倉健さんのエピソードって、いろいろな人が様々語られていて、「鋼の意志を持つ人」「男の中の男」、「やさしくて、きびしくて、こころづかいのできる人」などなど私の耳にもテレビ、ラジオ、その他のメディアで伝わって来ていますが、この本で自ら語る「高倉健」さんは、面倒くさがり屋で、怖がりで、いい加減な部分があります。

でも、そんなことでいいのかと“生真面目”に自分と向き合っています。
そこから自分の行動を律していき、我々が見聞きしている「高倉健さん」が現われるのでした。

結局「健さん」は、やはり我々の思っている「健さん」なのです。

この本の最後に、「生き仏 大阿闍梨(あじゃり)様」と呼ばれている方を訪ね、比叡山横川離れ谷の飯室谷不動尊の庫裏に健さんが出かけるのですが、そのときの健さんの“自分は俗物で何か仕事を成し終えると“ご褒美”みたいなものが欲しいが、阿闍梨様はそんなことはないのか、などと健さんが“小さな一般人”と化して質問したりしていて、それもなんだか微笑ましく感じました。

健さんのように“自分に素直になれる本”だと思いつつ、読了いたしました。

 

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