『日日是口実(にちにちこれこうじつ) -「お茶が教えてくれた15のしあわせ-/森下典子著(新潮文庫)』を古本で見つけ、読んでみました。
ルポライター、エッセイストである森下典子さんの「お茶」・・茶道の教室に通って色々なことを感じていく・・に関するこの本、古本で時々見つけ、ずっと気になっていたので読んでみました。
“帯”に黒木華さん、樹木希林さん出演で映画化された、とありましたので、きっと内容も面白いものだろうと思い、背を押された感じです。
2002年に飛鳥新社から刊行され、この文庫本は2008年に文庫化されたもので、私が手にしたものは、2018年において“三十一刷”を重ねています。
著者は大学を卒業しても出版社でのアルバイトをしていて、友達は就職先が決まったり、その後結婚したりと、今後の方向性が見いだせず、本人にはちょっと“キツい”状況である中、母親に勧められて「お茶」の教室に通うようになります。
そこからの本人の気持ちや“気づき”がこの本に書かれていることです。
先生は一つひとつの作法は厳しく教えますが、雑談的なことや“人生の教え”みたいなことは一切しないのです。
著者の不満は時々爆発しそうになるのですが、でも・・実際には決まりごとを淡々としていく茶道の動きの中で四季の移ろいを感じ、集中する中で自らの心と対峙する瞬間を感じたりしていきます。
それが、その様子がとてもいいのです。
巻末の「解説」を落語家の柳家小三治さんが書かれていて、小三治さんが独演会の時に落語をやらずにこの本の朗読をしたことがあるとのことで、私はたいへん驚きました。
小三治さんが読んでいて泣いてしまう・・というのです。
今、この本を読み終えて、私はその気持ちがよくわかります。
人は人それぞれの小さくて弱い心を持っていて、でも日日の移ろいの中でその小さな心を少しずつだけど元気づけて生きて行きます。
そんな著者の気持ちに共感して思わず涙してしまうのです。
お茶は季節の移り変わりに沿って日本人の暮らしの美学と哲学を自分の体に経験させながら知ることだった、と書かれていました。たしかにその様子はこの本に丁寧に書かれていました。
本当に知るには時間がかかるけど、「あっ、そうか」とわかった瞬間、それは血となり肉となる・・これもその瞬間のことがわかりやすくこの本に書かれていました。
著者は力強く「会いたいと思ったら、会わなければいけない。好きな人がいたら、好きだと言わなければいけない。花が咲いたら、祝おう。恋をしたら、溺れよう。嬉しかったら、分かち合おう。幸せな時は、その幸せを抱きしめて、百パーセントかみしめる。それがたぶん、人間にできる、あらんかぎりのことなのだ。」ときっぱりと書いています。
私もそう思います。
だいじな人に会えたら、共に食べ、共に生き、だんらんをかみしめる。
一期一会とはそういうこと。
肝に銘じます。
『荒木経惟の写真術/荒木経惟著(河出書房新社)』を古本で見つけ、見て、読んでみました。
1998年初版発行となっており、荒木さんが電通にカメラマンとして入社し、そこでどんなことを経験して(主に光の当て方を色々と工夫し、実験的なことをしていた)、その後にどう結び付けたか、というところから始まって、この本の多くは荒木さんよりも若いカメラマンとの対談で構成されていました。
対談では、荒木さんの数ある写真集の内容にふれている部分が多々あったのですが、写真集からの抜粋された写真を見ることができて、あらためて荒木さんの多様な作品を知ることになりました。
また、私は写真の技術的なことや、機材、現像の方法などの知識が無く、カメラマン同士の対談の中に出てくる専門用語は“チンプンカンプン”でしたが、それでも「きっとこういうことを言っているのだろう」と想像しつつ読み進めば、なんとなくわかってくることもありました。
多くのカメラを持ち込み、同時進行でそれぞれのカメラを使い分けていくやり方や、あえて一つの機種でその特色を生かしてテーマ化して写真集にしていくやり方など、荒木さんの多様な写真との取り組みと、その実例写真を見ていて、ますます“普通のカメラマンじゃない”と思いましたし、荒木さんが世の中で話題急上昇していた頃の“ぐんぐん・どんどん”突き進んでいく姿も思い出しました。
アラーキーは、あの頃も先鋭的だったが、今見ても先鋭的だ、と再確認する読書となりました。
『まわれ映写機/椎名誠著(幻冬舎)』を古本で見つけ、読んでみました。
2000年~2002年にかけ、「星星峡」に連載された作品をまとめ、2003年に刊行されたものです。
実体験をベースにした小説、と、ご本人が書かれていますが、まさに体験中に感じたことがドキドキするような感じで書かれていました。
映像、特にフィルム・映画に幼い頃から興味を持った椎名さんが実際に大人になって自ら監督となり、映画を製作するまでのことが書かれていました。
驚くのは、300頁もあるその半分の部分が、子供の頃の幻灯機との出会いと、それを自ら工作して作り、なんらかのフィルム状のものに絵や文字を入れて、ひとりで見て興奮するだけでなく、友達にも見せ、やがては8ミリ撮影機を持つ友達と出会いどんどん映画というものに興味を持ち、近づいていくところを描いているのです。
ふつうは、こういう部分は手短に思い出として語り、さっさとこの本の後半部分、初めて四万十川にいつもの焚火キャンプ仲間を中心に集め、素人集団と言えるような状態で「ガクの冒険」という、あの有名な“カヌーイスト”野田知佑氏と、“カヌー犬”のガクの物語を映画として撮るというメインに突入するところですが、そうではなく、子供の頃の「撮影と映写」への憧れからやってみたことを事細かに書かれているのでした。
私も似たようなワクワク感を子供の時に感じたことが有り、雑誌付録の紙の幻灯機を作り、壁に映しているだけでは飽き足らず、夏休みの宿題として木工でそのレンズを利用して自作幻灯機を作ったことがあるのです。
さらに巻き取り式に透き通ったセロファンのようなものを細長く切ってフィルムを模したものを作り“映写機”みたいにして一人興奮した記憶があります。
椎名さんも書かれていましたが、昔は8ミリカメラを使うアマチュアのための「小型映画」という雑誌があり、熟読されていたようで、私も8ミリカメラなど持ってもいないのに、その雑誌を買って、読んでみたことがありました。
なんかワクワクする気分はきっと椎名さんと一緒だったのだと思います。
そんなことを椎名さんは、150頁以上使って書かれていたのですが、全然“ダレる”こともなく、ただただドキドキする気持ちで読むことができました。
なので、後半の映画製作の部分がより光り輝いて読むことが出来たのだと思います。
10年間の期間限定で、映画製作会社「ホネフィルム」を作った椎名さんは、「ガクの冒険」のあとも果敢に作品を作られていました。
まさに夢を実現した感じです。
最後までキュンキュンしながら読みました。
実録小説、とてもいい作品でした。
『前略、高座から-。/柳家三三著(三栄)』という本を読みました。
古本で手に入れたのですが、発行は2020年となっていました。
内容は、雑誌『男の隠れ家』に2015年から2020年まで掲載された柳家三三さんのエッセイをまとめたものです。
三三さんの少年時代の思い出や、小三治師匠のもとでの下積みの頃の話題、噺家同士の間でのエピソード、全国に旅したときの出来事など、話題は多種多彩でした。
最近、落語からちょっと離れていて、三三さんの落語はまだ聞いておらず、ラジオなどでお話ししているのは聞いたことがあるのですが、そんな状態でこの本を読んでの三三さんの印象は、とても真面目で、しかもそれぞれの話題の提供の仕方が丁寧でした。
わかりやすい言葉を使い、誰が読んでも読みやすい、しかもちょっと“くすっ”とするようなくすぐり方で笑いを起こす形でした。
他の噺家さんの本も何冊か読み、このブログでもご紹介していますが、それらに比べると、非常に上品(^^;
とんでもねえヤツを罵ったりすることもなく、自らの失敗も開き直ったりせずに、冷静に書いていて、静かに反省している感じ。
なので、私にはやや刺激が足らないというか、もっと“ワサビ”を効かせて欲しい、などとも思いました。
上野、池袋、浅草などの寄席の紹介や、楽屋内での噺家達の様子、正月などの忙しく働いていた若手の頃の話などは、落語初心者の方にも十分興味を持たせる内容でしたので、落語未経験の方にも読んでいただきたい本でした。
そして、私にも久しぶりに寄席に行ってみようかという気持ちを起こさせてくれました。
近いうちに上野か、浅草の寄席で落語を聞こうかと思います。
妻が貰ってきた冊子に中一の時に担任していただいた先生が・・。
【 春隣 先生の名を 発見す 】
《背景》季語:春隣[晩冬]
妻が通っている習字の先生からいただいた「千葉文化」という冊子を見ていたら・・。
私の中学一年の時の担任の先生の写真が目に入り、驚いた。
秋葉四郎先生は国語の教師で、当時は知らなかったが、有名な歌人で、多くの歌集を出し、佐藤佐太郎研究資料室の開設や、去年まで斎藤茂吉記念館の館長を務められ、今も千葉市短歌協会会長を務められていると書かれていました。
現在87歳。
私が中一のある日の放課後、私ともう二人の女生徒を呼び、それぞれに三冊の本を渡され、「君達にはこれを読んで欲しい」とおっしゃられた。
私には「次郎物語」「友情」「あしながおじさん」を手渡してくださった。
夢中で読み、今や年間150冊の読書をする本好きになった。
こうなることを思っていたのだろうか。
先生、ほんとうにありがとうございました。
あれから一年、365句詠みました・・という句です。
【 春近し あの日の よろこび 忘れず 】
《背景》季語:春近し[冬]
今日の俳句で、去年から詠み始めた句が365句になりました。
2024年2月24日、千葉県市原市・市民会館での「夏井いつき・句会ライブ」に妻と出掛け、まさかの観客も参加の句会、そして数百人の中から驚きの優勝。
夏井先生からの「これからも俳句を詠んでくださいね」との言葉を胸に、日々俳句を詠んでみました。
俳句は特殊な才能の有る人、教育を受けた人が詠むものだと思い込んでいた私が、生まれて初めて会場で突然与えられた5分間で作った俳句が優勝に選ばれた、あのうれしさ、よろこびは、今も心の中で息づいています。
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