映画『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式/2025年 日本 監督:中西健二 脚本:まなべゆきこ 出演:豆原一成、市毛良枝、長塚京三、酒井美紀、八木莉可子』を見て来ました。
タイトル上の“コーヒー”と“しあわせの数式”という言葉が気になり、出かけてみたのです。
主人公の若者(豆原一成)はコーヒーが好きで、その魅力に惹かれている大学生。
その祖父(長塚京三)が亡くなり、書斎には謎の数式が書き残されている。
残された祖母(市毛良枝)は夫が内緒で申し込んであった大学の聴講講座に行ってみる決心をした、そんな状況から始まりました。
主人公の彼女(八木莉可子)もやさしい心をもって主人公にも、その祖母にも接していく。
コーヒーが取り持つ人と人の“あたたか”な繋がり、主人公の実母(酒井美紀)と祖母の過去の行き違いからの齟齬など人間模様を絡めた、しみじみとするやさしく、温かみを感じる映画でした。
祖父の残した数式の謎が解けて、皆で富士山五合目まで行ってみると、そこには素敵な回答が残されていて、いい話だなあと涙してしまいました。
こんな日々の営み、毎日の生活の中に少しキラッと光るうれしいこと、小さな発見が描かれた映画でした。
何度もこのブログに書いてきましたが、私は映画に暴力、破壊、恨みつらみ、復讐
、過剰なエンターテインメントなどを求めておりませんので、この映画は私の心に強く訴えかけてくるものがあり、素晴らしい映画でした。
昨今の殺伐としたSNSを含めた状況を思い、こういう映画が無くならないことを祈る気持ちでいっぱいです。
突然、偶然の再会に我を忘れてしまい・・一句。
【 秋さびし 再会の声 叱られて 】
《背景》季語:秋さびし[秋]
銚子の円福寺という所で「寺宝展」が開催され、江戸の出版物が大学の先生の詳しい解説も加えられて見学出来た。
解説も終わり、あとはご自由に見学をというところで、思わぬ懐かしい人に声を掛けられ、久しぶりの再会に声を上げ、積もる話が泉のように湧き出て、夢中になって話してしまった。
こんなところでやらず、あっちでやれと叱られ、我を忘れてしまった自分に“しゅん”となってしまった。
妻との帰宅の車の中は葬式状態の静かさに。
・・・ただ、久しい人に会ったうれしさに我を忘れることが出来る感情が自分にまだあったことは大切だと思うようにして、反省しているのでした。
『私 何だか死なないような気がするんですよ -心とからだについての282の知恵-/宇野千代著・北林紀子構成(集英社文庫)』を古本で見つけて読んでみました。
1995年に海竜社から刊行されたもので、1999年に文庫化されました。
この本が単行本として刊行されたのは1995年12月。
著者・宇野千代さんはその半年後、98歳で生涯を閉じられています。
タイトル「私 何だか死なないような気がするんですよ」の、この本、読んでいると・・ほんとに死なないんじゃないの・・と思えるほどお元気な宇野さんがいらっしゃいます。
常に前向きだし、健康のためというか、長生きのためにやってみることは全て“いいこと”なんだと思ってやってみて、しかも明るくやっていて、ご機嫌もすこぶるいいっ!(^^;)
90代の年齢になって、思うように体が動かなかったり、遠くにも行けなくなり、家にいることが多くなっても、楽しいことを見つけ、常に前に前に進んで行く宇野さんがいました。
できないことが増えても、今自分が出来ることによろこびを見つけています。
私もこれから出来なくなることが増えていくのかと思いますが、でも宇野さんのこの本に示されている考え方は参考になります。
まだまだやること、やれることはあるのだと心強くなりました。
病気のことも心配ばかりしていると、かえって悪くなってしまうのだ、ということも書かれていましたが、実際のところそうなんじゃないかと最近思っているところです。
もう明日から私の今やれることを楽しくやり、さらにまだやったことのないものにもチャレンジしたいと決意したのでした。
『私訳 歎異抄/五木寛之著(東京書籍)』を古本で見つけ、読んでみました。
2007年に第一刷発行されたもので、作家・五木寛之氏による“私訳”、つまり意訳をさらに超えて、著者・五木氏が自分はこう感じた、こう理解した、こう考えたという主観的な視線から書かれた現代語訳版『歎異抄』と言えると思います。
歎異抄については、その存在は学校でも習ったし、よくラジオなどで「歎異抄」について簡単に読めるようにした本などの紹介もされていて、一度は読んでみたいと思いつつ、手が出なかったものでした。
ひとつには歎異抄は、弱者を押しのけるような生き方をしてきた人、人としてどうかというような生きのび方をしてきた人、そんな人の記憶の闇に一条の光が射されるような、そんな存在なのか、と思っていて、そのくらいしか自分には情報がありませんでした。
でも、この平易に書かれた(言葉面は誰にでもわかるような、やさしい文)私訳は、結局うまく理解することが出来ませんでした。
事前の知識・理解が不足し過ぎていたこともあるかもしれませんが、読んでいくと、一生懸命に何かしらを極めようとして生きている人と、酷いこと、悪辣なことをする人も結局“往生”するのだ・・ということになって、「そんなんでいいのか」と言うような人は何もわかっていない・・という結論になり、なんだか真面目に生きても損しちゃうんじゃないの、って思ってしまう超凡人な私がいるのです。
親鸞その人の筆ではなく、第三者をとおして描かれた回想録ということもあり、その著者の嘆きの書であることから、ますます理解することが困難なことになってしまうのでした。
あらゆる煩悩にとり囲まれている身はどんな修行によっても生死(しょうじ)の迷いからはなれることはできない・・そのことを憐れに思って立てられた誓いこそ、すべての悩める衆生(しゅうじょう)を救うという阿弥陀仏の約束なのだ、というわけですが、まだ何だかわからないのです・・。
この世に生きている者はことごとく深い業を背負っている・・これはわかった。
私たちは、すべて悪人であり、そう思えば、わが身の悪を自覚し、嘆き、他力の光に帰依する人々こそ、仏に真っ先に救われなければならない対象なのだ・・という・・何となくわかったような気になった。
おのれの悪に気づかぬ“傲慢な善人”・・世の中、こんな人だらけなような気もする・・でさえも往生できるのだから、まして悪人は往生できるのだ、って、ここでまた最初のわからない自分が現れる(^_^;)・・最後までぐるぐる頭の中が回ってしまう本でした。
インスタグラム、Facebook等で何度かご紹介している、現在、千葉市中央区汐見丘16-13「街角ギャラリーどち」で開催されている『マレビトアソビ展』。
流木や、シーグラスなどを利用した造形、絵画などが面白く展示され、ワークショップとして、それら流木、シーグラスに訪れた人たちが絵を描くこともできるという楽しい企画です。
そこには私の中学時代の美術の先生で担任だった南先生の作品も多数展示されています。
私も出かけてその様子はインスタグラムに載せたり、先生の姿を見て俳句を詠んだりもしました。
昨日までの4日間、先生は旭市から千葉市までギャラリーに通われ、ギャラリーのインスタを見ていると連日の大盛況、とてもうれしい半面、先生は喜寿を越え、一般的には高齢者です。
昨日、夜に心配になって先生に電話してみました。
疲れていませんか、という私の心配は“取り越し苦労”でした。
先生は、元気!
「心配はありがたいが、俺は人がたくさん集まれば集まるほどその人達からエネルギーをもらってどんどん元気になるんだ」・・という力強い言葉にうれしくなり、そして涙が出そうになりました。
すごい人だなあ、自分はこの人に中学生の頃色々教わっていたんだなと、あらためて感謝しました。
『死にたくなったら電話して/李龍徳(イ・ヨンドク)(河出文庫)』を古本で見つけ、読みました。
著者は1976年生まれの在日韓国人三世の方で、この「死にたくなったら・・」で第51回文藝賞を受賞してデビューされています。「あなたが竹槍で突き刺す前に」で第42回野間文芸新人賞も受賞されています。
2014年に刊行されたものの文庫化で2021年に発行されたものを読みました。
事前に知識を入れずに読みましたが、登場人物は主人公と、主人公の恋人となるキャバクラ嬢も含め、どの人物もどの人物も悪意ある人、あるいは人のことなんかどうでもいい人、世の中に流されている人、あるいは世の流れの中で淀んでいる人、善意ある人もひとりは出てきたかに見えるが、それも何か歪んでいるように見える人だったりする。
話の展開は読み物としてはスリリングだったり、そんな風にうまくいくんだ、ということだったりで、作者はそう思ってはいないと思いますが、あまりにも“作られた”感じがしました。
主人公はじめ、どの登場人物にも共感できないし、吐き気のするような言葉のやり取りがあって、本当に吐きそうになりながら読みました。
人や人がつくっている世の中が大嫌いで、破滅してしまえばいい、自分なんか死んでしまった方がいいのだ、友達などいなくていいと言いながら友達を呼んだり、呼ばれたりしてさらに破滅的、破壊的な展開が続き、これを乗り越えたというか、読了してやり過ごした後に何かが見えてくるのだ・・ということなのかもしれませんが、私の精神力、体力では持ちこたえることが出来ませんでした。
かなり心も体も具合が悪くなりました。
そこから何か見えるかなあ・・見えていないな・・。
私には何かが見えませんでしたが、実際、この小説の世界は現在の若者の多くが共感するような世界なのだということはわかります。
でも、すべて破壊・破滅してからでは、廃墟の中では何も見えてこないんじゃないかと私は思ってしまうのです。
吐きそうで倒れそうになりながら感想を書いてみました。
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