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2025/09/17

「続 失踪願望。 -さらば友よ編- /椎名誠」を読みました。

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『続 失踪願望。 -さらば友よ編-/椎名誠著(集英社)』を古本で見つけ、読みました。
この9月頭に「失踪願望。 -コロナふらふら格闘編」を読んでおりましたので、その続編です。

この本の中で椎名さんは80歳を迎えています。
前回のブログにも書きましたが、椎名さんがそんな歳になっている、時は流れた・・と感慨深く、若い頃に夢中になって椎名さんの本や、「本の雑誌」の草創期の頃を思い出しました。

そしてその「本の雑誌」を共に作り上げた「目黒考二」さんが亡くなられたときのことも書かれていました。
椎名さんにストレートに鋭い指摘、意見もする人でした。
文芸評論家として舌鋒鋭い方でもありました。

椎名さんの全著作を「椎名の仕事」として、順番に読み、批評していくということもされて、私も読みましたが、たいへんな調査・分析・読解力に舌を巻きました。

さらにその目黒さんからは、椎名さんに対し「私小説の怒涛の奔流はセスクアリスだぜ。お前はのらりくらりとして書いてこなかった。ずるいぜ。逃げるなよ。」という指摘も受けた椎名さん・・ついにこの本でかなり強烈で驚くべき文を書き、その指摘に応えています。私も読んで驚きました。
今までの椎名さんとはまったく異なる人格、世界が描かれていました。

目黒さんの具合がかなり悪くなり、連絡が取れなかったときに本人から電話が有り、励ましの言葉はいらないから楽しい思い出を話そうと言われ、お二人がしたお話しについても書かれていました。
そして「じゃあな」「じゃあな」のやり取りが最後となり、そのあとに椎名さんは長い手紙を書き送っています。
その手紙はお棺に入れられたそうです。

そんな話も聞き、今の椎名さんはどのような心境なのか・・学生時代から椎名さんの本を読んできた自分もちょっと寂しいような気持ちになりました。

椎名さんは、これからの自分ことを、この本で書かれています。
若い頃から色々あった奥さんとのことについても、今まで読むことのなかったことが書かれていました。
そんなときに世界中に出かけて行った頃とはまた異なる今の椎名さん、そして奥さんとの今の生活、生き方を感じることができました。
私にとっても、これからの自分を色々と考えるきっかけになりました。

 

 

2025/09/10

「十年不倫の男たち/衿野未矢」を読みました。

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『十年不倫の男たち/衿野未矢著(新潮文庫)』を古本で見つけて読みました。
2009年の文庫書き下ろしとなっていました。

読んでみると、この本の前段には「十年不倫」というノンフィクション作品があり、それはかなり話題となり、売れていたようです。
この「十年不倫の男たち」は、好評につき、その続編として書かれていました。

著者には前作の影響もあり、自ら「話を聞いてくれ」と“不倫の状況”について語ろうとする人も現れ、逆に“よくもあんなこと書いてくれたな”みたいな怒っている人もいたりして、ネタに事欠かない状況であったことがわかりました。

不倫というのは、人に語りたくなる人の割合の方が多いようです。この本を読んでの感想ですが。

また、タイトルには“男たち”となっていますが、不倫を語る女の人も登場していて、全体的な感想を言うと、とても意外な感じでした。

もっと、やむにやまれぬ“愛”について語られるのかと思っていたのです。
さらにいうと、“純愛”的な展開でこのノンフィクションは書かれているのではないかと思い、「よし、その「思いのたけ」、聞いてやろうじゃないの」と思っていたのです(^_^;)が・・。

現実は、もっともっと打算的であったり、惰性的であったり、投げやりな様子であったりで、妻(夫)に対しても不倫相手に対しても、どっちつかずの放置されたような“荒れた”状態というのが不倫を続ける人たちの正体だったように感じました。

・・ベストセラーになっていたようなので、私の感じ方が極端で、もっと不倫している人の愛情についてセンサーを効かせて感情移入するくらいの読み方をする必要があったのかもしれませんが。

私は300頁を超えるこの本の半ばあたりで、もう降参状態になり、あとは流し読みになってしまいました。
この本に求めているものが“そぐわなかった”のだと思います。

ちょっと期待していたものではなかったのですが、読めばそれは“読み応え”のあるドキュメンタリーが書かれていました。
また、人間の“サガ”が痛いほどわかる本でもありました。
不倫をしている人も、これからする人も、興味のある人も、不倫に対して正義感を振りかざす人も一度は読んでみた方がいい本かもしれません。

 

2025/08/29

俳句を詠んでみる_0540【 秋の蝶 互いに誤解して 夫婦 】

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人は誤解して、でも信じて生きていくのだという句を詠みました。

【 秋の蝶 互いに誤解して 夫婦 】

《背景》季語:秋の蝶[秋]
武田鉄矢さんがラジオで話していたが、最初は相手が自分に好意を持っているんじゃないか、そんな誤解が“エネルギー”になって相手を想ったりする。
そして誤解が自分だけでなく、相手にも有り、夫婦なんて誤解と誤解の“産物”じゃないか・・・なんて話でした。
でもその誤解が何十年もの月日を共にし、人生となって川のように流れます。
そんなことなんだろうな、と少し思いました。

 

2025/08/24

俳句を詠んでみる_0535【 秋麗 男も弱い 危険なひと 】

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だいたいが男も女も“あぶないひと”にだまされるってのを句にしました。

【 秋麗 男も弱い 危険なひと 】

《背景》季語:秀麗[秋]
よく言われることだが、女は危険な男に弱いと。
だけど男だって似たようなものだ。
わかっているのに“危ない香り”を漂わせている女にふらふらと近づくのです。
そして・・とても痛い目に遭う。
私もそうだと言ったら意外でしょ。

 

2025/08/10

俳句を詠んでみる_0521【 恋愛はつらいものだと 処暑に知る 】

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ラジオを聞いていると、色々人生の勉強になる発言が飛び出す。

【 恋愛はつらいものだと 処暑に知る 】

《背景》季語:処暑[秋]
ラジオを聞いていたら、シティボーイズの「きたろう」さんが「恋愛ってのは若い頃もそれから後も、ずっとつらいものなんだよ、わかるか」と、ヒコロヒーさん相手に話されていた。
なんだかとてもわかる気がした。
あの頃の彼女の顔を思い出しただけで、胸が苦しくなるような気持ち・・今の自分にも少しはそんな恋愛への気持ちが残っているのか・・無くなったら、私というものの終わりの始まりかもしれない。

 

2025/07/25

「肉体の学校/三島由紀夫」を読みました。

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『肉体の学校/三島由紀夫著(ちくま文庫)』を読みました。
1964年に刊行された作品の文庫化(1992年)版です。

この本に書かれている時代は古く、いまだ戦後の「華族制度」にしがみついている人々が登場します。
主人公の女性も華族出身で、社会的にはファッション界で一流の位置にいる。
そして同様の華族出身の女性二人と三人の会を月一で開いている。

女性は三人とも離婚後に不自由なく“離婚成金”的に過ごしている。
さらにやはりある地位にいる男などとの自由な恋愛を楽しみ、“月一”の会で互いに内緒の約束で生活状況と男の話を情報交換するのでした。

社会的な地位と安定した裕福な生活を手に入れようとする主人公妙子の年下の恋人はゲイ・バーで働く美青年。
その美青年の美しい体を金で買おうとする男や女もいて、時代背景は昔のことなのに、全く古さを感じさせない設定と、物語の進行。
現在の小説だと言ってもそのまま通用するような世界が描かれていました。

むしろこの三島由紀夫が描いた世界は、ある一定の世界の頂点にいるような人々の、精神性を感じさせ、優雅な雰囲気さえも感じる不思議と品位のある作品になっていました。
男女の営みは読んでみれば直接の描写は無いのに、非常にエロティックである。

そんな世界観の小説は今でもあるにはあるだろうが、でもこの「肉体の学校」に描かれているような不思議と典雅な雰囲気にはならないだろうと思う。
簡単に言ってしまうと、下卑たものになってしまうのではないかと思うのです。

そして作品そのものが“立っている”というか、文学作品として屹立しているのに驚きました。
三島由紀夫、やはり凄い。怖ろしいまでの作品感でした。
読み終えて・・ずっと恐れ入っておりました・・。

 

2025/07/09

「夫婦脳/黒川伊保子」を読みました。

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『夫婦脳/黒川伊保子著(新潮文庫)』を古本で読みました。

2008~2010年「電気協会報に《男と女の脳科学》として連載」と、2009~2010年「ひろぎん経済研究所機関誌に《感じることば》として連載」されたものを改題加筆・修正し収録したものでした。

黒川さんのご著書は、この本以外にもベストセラーがたくさんあり、私も何冊か読みましたし、ラジオなどへの出演時にご本人のお話しを聞いたこともあります。
その度に、「ああ、ここで例示されている“困った夫”はまさに俺の姿ではないか・・と、いつもガックリと膝を落とすように倒れ込むのでした。

そして例示されている妻の様子は、まさに私の配偶者そのものの様子 ^_^;どうして人んちのことがこんなに手に取るようにわかっちゃうんだろう・・と思い、今後改めようと思うには思うのですが、修正するところが多すぎて覚えきれないよ・・(T_T)となってしまうのでした。

誰もが、どの夫婦が読んでも、夫も妻も思い当たる節ばかりのハズです。

今回の本でもひとつウチの夫婦と合致した例を挙げてみると・・

私が帰宅すると、妻から何か相談というか、聞いてほしいことがあると話が始まり、それは朝起きてから起こった出来事の詳細、会った人すべてについて、こんなところにも出くわした、などなど延々と話が続き、私はどのエピソードのどの部分、どの言葉などがキーワードとなるのか、必死で聞き続けるわけですが、それらは全て相談にのってほしいと言ったこととは何の関係も無いのです。
こんな状態が最低でも30分以上続いて、本題が出てくるのは一時間以内であれば、それはラッキーなことです。いつ終わるかわからず、本題は何なのか、いつまで経ってもわからない、そういうことなのです。

で、「本題は何なの?!」などと聞こうものなら、そこから「あなたは何にもわかっていない、人の話が聞けない、共感も出来ない、最低の男だ」ということになり、私は地獄の底に突き落とされ、そのあと口もきいてもらえなくなるのです。

黒川さんに言わせれば、女性はあったこと、見たこと、起こったこと全てを時系列になめる様に伝えていくのであり、本題そのものよりも、それらを全て聞いてもらって「そうなんだ、たいへんだったね」などと相槌を打ってもらいたいわけです。
そんなことがわからぬ男は問題にならぬほどダメ夫であるというわけです。

今じゃあ、何冊も黒川さんの本を読んできたので、その辺は“なんとか、かんとか”死に物狂いでクリアできるのですが、こんなことは夫婦の間では氷山の一角のエピソードです。
男も女も、このくらいのことは、心して読み始めないと、途中で泣きたくなると思いますよ。

あんまりネタばれ的なことを長文で書いても何なので、夫婦の話以外で面白かったものをひとつ挙げておきましょう。

素晴らしいリーダーというものは、登場しただけで、部下もその他の人たちも笑顔にしてしまう人だ、という部分でした。
最近、どこかの大統領が妙なキャップを被り、テレビの画面に登場しただけで気分が悪くなり、体調も崩し気味です。聞かせてやりたいっ!

自分を待ってくれている人たちの存在を微塵の憂いも不安もなく、邪気なく、嬉しがれる能力こそがリーダーの資質なのだろう、とおっしゃっています。そのとおりだ。

そしてそのためには、日頃から「被害者」にけっしてならない覚悟が必要だと。

誰かに裏切られても、裏切らせてしまったことを憂い、他者に迷惑が及ばないように慮る。
自分を被害者にして可哀想がったり、他人を恨んだりしない覚悟があってこそ、邪気なく人を嬉しがれる。
その「被害者にならない」覚悟こそが、リーダーの資質なのだと思う。とのことでございました。
聞かせてやりたいヤツばかりのお話しで締めて、本日の読後感を終えたいと存じます。

 

2025/07/05

「どうせ、あちらへは手ぶらで行く/城山三郎」を読みました。

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『どうせ、あちらへは手ぶらで行く/城山三郎著(新潮社)』を古本で見つけ、読んでみました。
1927年生まれで、2007年に亡くなられた城山三郎氏の最晩年まで綴られた手帳を次女の井上紀子さん(※長女弓子さんは生後数ヶ月で早逝されている)が、父の心の内を垣間見るのを娘とはいえできぬことと思い、ためらいながら最終的にこの本として成立させたものです。

発行は2009年となっておりました。

最愛の奥さんが倒れる前年から、著者の最晩年まで、手帳には自らを励ますような言葉も多々見受けられ、でもあの著書「そうか、もう君はいないのか」でも読み取られた抑えがたい悲しみも、何度も何度も綴られていました。

そして城山三郎さんご自身の老いとの葛藤も。
城山さんの手帳に書かれたメモからこの本は出来上がっているのですが、鍵や、招待状、帽子にコート、待ち合わせの場所など、物忘れのひどさの様子もわかりました。

また、体重についても書かれていましたが、奥さんが亡くなられてからは体重の減少があり、読んでいるこちらも気になりました。

お好きだったゴルフのスコアも、悪くなっていく様子がわかり、最後の方はスコアも書かれていませんでした。

日々、自分を励ますだけでなく、「これでいいんだ“鈍鈍楽”で生きよう」という晩年をなんとか気持ち安らかに過ごそうという自分へ言い聞かせるような部分もありました。
あと何年かしたら私も同様の境地になるのかもしれない・・と思いました。

城山さんの作品は何冊も読み、このブログでも読後感を何度かご紹介していますが、晩年の執筆する様子もわかりました。

緻密で事前の調査作業は大変なものだろうと思ってはおりましたが、執筆の“裏側”も垣間見ることができて、うれしくもありました。

ますます城山三郎という作家を好きになりました。

 

2025/07/03

「受け月/伊集院静」を読みました。

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『受け月/伊集院静著(文春文庫)』を古本で読みました。
1992年単行本で出版され、1995年文庫化されたものです。

七つの短編からなっている短編集でした。

どの話も伊集院さんも若い頃野球選手だったのですが、野球の選手、監督などに因んだ話になっていて、夫婦の問題、親子の問題、男女の問題などに絡んで味わいのある人生模様が描かれていました。

野球というものは不思議なもので、何か“哀感”というか、“やるせない気持ち”や、心の中に存在する“支え”のようなものと馴染むスポーツだという気がします。

私も就職した頃から何年間かに渡って、中学時代の友達が作った草野球チームに入っていたことがあります。
私は学校の部活などで野球をやったことはありませんでしたが、チームメートは皆高校では野球部、そして大学に進学した者も大学で野球をやっていた強者ばかりでした。

レベルが違うのですが、それでも何とかチームの中で頑張り、その中で友情や、それぞれが抱えている悩み・問題なども感じたりしていたことを思い出します。
なぜか野球はそういう人生模様とうまく絡んで、ある一定の役割を果たしていたと思います。

この伊集院さんの短編集も、それぞれの話が野球というスポーツと絡み合い、夫婦や恋人の関係、人生の先輩との関りなどに深みを与えていました。

伊集院さんの小説は場面転換がまるでテレビや映画のカットがスパッと切り替わるように展開していて、過去と未来が素早く入れ替わったり、別の場所に入れ替わったりして、それがとても小気味よく、テンポのいいものでした。

さらに、極端に酷いことになったり、極悪人が現れるでもなく、かと言ってハッピーエンドでもなく、人が決意したり、諦めたりする中で人生にけじめを着けて行く様子が淡々と描かれていました。

絶妙な筆致で描かれたそれぞれの人生をしみじみと味わいながら読み終えました。
静かにこれからの自分のことを考えることにもなりました。

 

2025/06/29

映画「カーテンコールの灯(あかり) Ghost light」を見てきました。

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映画『カーテンコールの灯(Ghost light)/2024年 アメリカ 監督:ケリー・オサリヴァン、アレックス・トンプソン 脚本:ケリー・オサリヴァン 出演:キース・カプフェラー、キャサリン・マレン・カプフェラー、タラ・マレン、ドリー・デ・レオン』を見てきました。

割と小さな独立系の作品でありながら、なかなかの力作というか内容は濃く、家族や仲間との滲み出るような深く情愛あふれる映画でした。

それぞれに心に傷を負った家族三人の物語なのですが、夫・妻・娘の配役は三人とも実の家族という・・驚きの“そのまんま”キャストです。

この三人家族にはさらに長男がいたのですが、不幸な亡くなり方をしていて、その亡くなり方がシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」のロミオ的な亡くなり方をしていて、この事件が家族に重い影を落としています。

建設工事現場の作業員をしている主人公はもう年配なのですが、精神的にもつらい状況で、仕事も追われるような状態になりつつあり、悩みの淵に居るときに半ば強引に地域のアマチュア劇団に参加することになってしまい、そこからこの映画のストーリーは急展開を見せます。

 

 

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家族の状態が悪くなりつつある中で、素人ながら次第に劇団での活動に生きる意味を少しずつ見出していく主人公。

そこで演じる演目はなんと「ロミオとジュリエット」で、脇役から入っていったのに、突然の配役変更でロミオ役に。
超年配のロミオとジュリエットとなるのですが、最後の勘違いの死のシーンには現実と重ね合わせてしまうことになり、精神的に耐えられず、いったいどうなっていくのだろう・・と見ているこちらは気をもみます。

家族に劇団活動をしていることがバレてからの家族関係も繊細で見応えがあり、娘との関係回復なるか、と手に汗握ります。

そして、エンディングの「ロミオとジュリエット」本公演。
どうしても出来なかった「死のシーン」を主人公は演じられるのか、もう自分も家族になったような気持ちで見守りました。

そして劇団員の仲間達との関係も心動かされました。

もう涙なしには見られないエンディング。いい映画でした。
私が求めている映画、物語はこういうものだとあらためて感じました。

ストーリーと共にロミオとジュリエットが進行していく見事な展開、ぜひ映画館で見てほしい作品だと思いました。

 

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