
『奇縁まんだら/瀬戸内寂聴 著・横尾忠則 画(日本経済新聞出版社)』という本を古本で見つけ、読んでみました。
また、この本では寂聴さんが様々な文豪などと接したときの“奇縁”を書いているのですが、その相手の絵を描いているのは、あの横尾忠則さんです。
瀬戸内さんの臨場感溢れる文も見事ですが、横尾さんの絵は、それぞれの人物ごとに独特の異なる表現をされていて、それもまた見どころになっているという、とても充実した内容の本でした。
とにかく登場する人物が凄い。ほとんどが文豪と言われるような人ですが、岡本太郎さんという今も光り輝く芸術家も登場していて、一人たりとも、一頁たりとも見逃すことのできないものでした。もう話題がぎっしりでした。
川端康成、三島由紀夫、谷崎潤一郎なども登場していますが、あの瀬戸内さんがまだ若手作家だったり、三島さんとの出会いなどは、瀬戸内さんが女学生でファンレターを三島さんに出していた頃に呼ばれて会ったという、「そうなんだ」と驚く事実も書かれていて、最初のペンネームも三島さんから瀬戸内さんはいただいています。
とにかく今や歴史上の人物ともなっている当事者に直接瀬戸内さんは会っているので、あの谷崎潤一郎と佐藤春夫の「妻譲渡」という ^_^; 新聞にも載った事件についても、さらにそこには別の男性が絡んでいたという驚愕の事実まで書かれていました。
ここには書けないけど、あまりの驚きに身体中の力が抜けていくのを感じました。
岡本太郎さんの全盛期(1970年の万博前に模型を使って打合せしているときの様子も書かれていた)から、晩年、亡くなるところまでの関りも深く、まるでそばで見ているような気になる書きぶりに、どんどん引き込まれました。
終盤で出てくる遠藤周作さんの皆を笑わせて、場の空気をやわらげる様子から、瀬戸内さんと二人きりになると「死ぬのが怖い」としみじみと語り出す様子。
自らの宗教的な立場に置かれている状況を静かに語る部分にも心惹かれました。
そして遠藤さんの体調がいよいよ悪くなったときに、対談相手を寂聴さんに選び、対談の場に人に支えながらやって来て、最後の会話をするときの様子、さらにその部屋を出て、人に支えられながら遠ざかっていく姿を見て泣きだす寂聴さん・・私も読んでいて泣いてしまいました。
中学生の頃から大学時代まで、遠藤周作先生の本は、愉快な「ぐうたらシリーズ」から「海と毒薬」などの宗教的な純文学までたくさんの本を読んだ私には、ぐっとくるものがありました。
300頁を超える内容がパンパンに充実したこの本でしたが、続編も有り、実はそれも古本で既に手に入れております。
少し身体を休めてからその続編にも突入できたらと思っています。
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