『人情屋横丁/山本一力著(ハルキ文庫)』を読みました。
雑誌等に掲載された山本一力さんの2004~2008年の様々な文をまとめ、2008年に単行本、2011年に文庫化されたものです。
1948年生まれの山本さんの幼い頃から学生時代、さらに就職してからの懐かしい味や、場所、花見やお祭りなどの経験、同級生や家族との思い出、新聞配達をしながらの中3~高3までの苦労話など、時代的には私の先輩ですが、それでも私の記憶にも残っているような世間・社会の懐かしい様子や人々の人情までが“ジンジン”と伝わりました。
初めてのチキンラーメンは、母子家庭となり夜遅く帰ってきた母親に起こされて「珍しいものを貰って来たよ」と“眠気まなこ”で食べた幼い頃だった・・なんて、時代が時代なだけに、泣けてきました。
あの頃は何もかも珍しかった時代だったかも。
生活苦の中、中学生ながら住み込みで朝夕の新聞配達をしていた時に、配達先のお手伝いさんが声をかけてくれて、「今の苦労は大人になったらきっと役立つから」と菓子、飲物、果物などを早朝にくれたり、一番の思い出は「うめっからこれ食いな」と皿にのせられていたのは生まれて初めて食べた“きのう届いたアワビ”の煮アワビで、あの朝の美味さが忘れられず、大人になってからも寿司屋で好んで注文するのだという話。
でも、あの配達先で早朝食べた味には届かない・・って、もう読んでいてまた涙が出てしまいました。
こんないい話、懐かしい話が満載でした。
自分のことのように懐かしんで読み、ちょっと涙ぐみ、これからも人に、境遇に感謝しながら生きていこうと思いました。
このあいだ、妻が「刑事コロンボ」の再放送を見ていたので、途中から私も一緒に見てみました。
今回の悪役は、重厚な演技でなかなかの“ワル”ぶりが凄い人だと思い、番組を見終えてから調べてみると「ジャック・キャシディ」という名でした。
しかも、コロンボには三回も犯人役で出演したことがあるとのこと。
名優なんですね。
そして、“キャシディ”って珍しい感じの名字だけど、昔「デヴィッド・キャシディ」という男性のアイドル歌手がいたことを思い出し、デヴィッド・キャシディについても調べてみると、1970年代にアイドルとしてアメリカで活躍していて、「パートリッジ・ファミリー」という家族バンドが旅をしながらコンサートをしていくテレビ番組が人気で、私もよく見ていたことを思い出しました。
で、このデヴィッド・キャシディは、ジャック・キャシディの息子だということがわかりました。びっくり!!です。
そして悲しいことに、デヴィッド・キャシディは、2017年に67歳の若さで亡くなっていました。
もうひとつ驚いたことは、先に書いた「パートリッジ・ファミリー」という家族バンドのツアー・コンサート中に起こる出来事を楽しく描いた番組では、バンドを構成するファミリーは“疑似家族”で、実際の家族では無かったのですが、お母さん役のシャーリー・ジョーンズは、デヴィッド・キャシディの実の父親の後妻であり、デヴィッドにとっては、義母だったと書かれていました。
なんとも不思議な感じですが、デヴィッドは実の母親ではなく、義母と親子役で出演していたのです。
とても健康的で、明るく、“良きアメリカ”を表現していたような番組でしたが、そんな事情もあったのだと感慨深い思いをしました。
番組中では、必ずパートリッジ・ファミリーの演奏が行われましたが、素敵なアメリカン・サウンドの良い曲、良い演奏でした。
たまたま「刑事コロンボ」を見ていて知ることになったデヴィッド・キャシディのその後などですが、昔はアメリカの面白い番組(もうれつギリガン、じゃじゃ馬億万長者、名犬ラッシー、かわいい魔女ジニー、奥さまは魔女、バイオニック・ジェミー、チャーリーズエンジェルなどなど・・)がテレビでよく放送されていたな、と思い出しました。
『私があなたに惚れたのは/久世光彦著(主婦の友社)』を古本で見つけて読んでみました。
2002年第一刷発行となっていました。
著者の久世光彦さんは、「七人の孫」「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」「ムー一族」など、かつて一時代を築いたようなテレビドラマ作品をプロデュース・演出をされています。
そして作家活動もされているわけですが、この本は久世さんが今まで出会った作家や芸能人などに対し「私があなたに惚れたのは・・こんなことから」というふうに書かれていました。
ただ内容の多くは、亡くなられた向田邦子さんとの思い出が大半を占めていました。
向田さんについては、久世さん他、向田さんの妹の和子さんも生前のことを色々書かれていて、今までも色々な本を読む中で遠い昔のことだという印象がありましたが、向田さんが和子さんに出させた「ままや」というお店(※「ままや」の話はこの本で何度も出てくる)が、かつて私が東京勤務していた頃の職場から歩いて行けるような場所にあったこと、さらに向田さんが原稿を執筆したり、当時の彼に手紙を書いていた場所が私の勤務していた都市センターホテルであったことも知りました。
つまりよく知っている所で今まで本の中でのみ繰り広げられていた世界が動いていたのだとわかって、なぜか臨場感が急に迫ってきたような気がしました。
そして、久世さん、向田さんの思い出話の中に、私が日頃よく読んでいる作家、気になる作詞家、芸能人(女優)の人達も登場していました。
山口瞳さん、いしだあゆみさん、阿久悠さん、山本夏彦さん、伊集院静さん、浅田美代子さん、松居直美さん、夏目雅子さん、阿木燿子さん、田中好子さん、沢田研二さん、桃井かおりさん、田中裕子さん、堺正章さんなど多彩な方々でした。
昭和の人達の考え方、生活の過ごし方、何気ない行為や、食べ物、慣習、その他私も気になる「昭和の大事なもの」がうまく描かれていて、自分自身の過去に対する整理が少し出来たような気がしました。
力作かつ、内容の濃い、読み応えのある本でした。
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