『仏教人生読本/岡本かの子著(中公文庫)』を古本で見つけ、読んでみました。
昭和9年に刊行された『佛教讀本(のちに「人生読本」として改題再刊)を、「仏教人生読本」と改題し、平成13年、中公文庫として刊行したものです。
岡本かの子氏といえば、あの岡本太郎の母であり、私の知っていることと言えば歌人として活躍した人、そして結婚後に夫の放蕩に悩み、精神を病んだのちには夫がかの子に他の男との恋愛を認め、しかもその男を夫婦二人と同居させ、さらにその男が去ったのちにも他の男二人と欧米への旅に出掛け(これには子の岡本太郎も同行させている)、ヨーロッパの芸術と文化を吸収させるに寄与したという事実がある・・簡単に言うとこんなことでした。
常人には考えられない世界ですが、こんなことのあった後にかの子を支えたのは、この本に書かれている仏教でした。
この本は、難しくて初めて聞くような仏教用語が多用されているのですが、人が生きていくうえでの実例をわかりやすく挙げながら説明しているので、なんだか“腑に落ちる”のです。
ただ、例示される人生の様子があまりにも多岐に渡り、しかも自分にとって刺激になり、そうかそういう考え方をすると納得できるのか・・などということになり、その都度自分の中に落とし込んでいたら約300頁のこの本、一週間ほどかかって読むことになってしまいました。
かの子が再三にわたって言っていることは、「これはこうだ」と決めつけず、自分の感情や、従来の考え方を押さえつけるようなことなく、“ほど良い立ち位置”を見つけて、人間というものの行い、考え方をするのがよいということだと、私は読みました。
いちばん私が興味深く、“面白い”と感じた部分を長いのですが引用いたします。
結婚当初、恋愛生活を夫婦愛と間違えていたものは、結婚後二年、三年、五年と経つうちに、余りに身近く打ち融けてお互いに異性としての魅力もなくなり、兄妹のごとく、師弟のごとく、母子のごとく、友達のごとく、感じて来るのに唖然として新婚の快い夢が覚めるのであります。
この時が結婚倦怠期であって、最も戒心をする時であります。
相互の矛盾欠点が眼に立ち、赤裸々の男女が鼻突き合わせて、遠慮会釈もなく、ザックバランに、二人が本当にこれから先きの長い生涯を一緒に暮らし得らるるや否やを吟味するのであります。
その刹那こそ真剣にして悲壮な場面であります。
この際、男の社会的地位も事業も風采も何の“たし”にもなりませんし、女の器量も表情も勘定のうちに入りません。
ただただ赤裸々な一男性と一女性とがお互いの愛と、ともに担い合う意力とを吟味するのであります。
かくしてお互いが信頼し得るものと決定したとき、その決定は仏教の真締に相当するものであって、物の真実性を認めたものであります。
決して誤算がありません。この時の結合はもはや人智や意志の結合ではなくて、因縁の理による自然力の結合であります。
私はこの結合を機として、本当の夫婦愛、本当の夫婦生活が始まるのだと思います。
・・・引用が長くてすみませんでしたが、この文は深いと思い、何度も読み返してしまいました。
一冊読むのにもたいへんな「読本」でしたが、この歳になった私にも色々と考えることがありました。
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